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体重を測らない理由は、認知バイアス の「ダチョウ効果」

「認知バイアス大全」マガジン

人間の不合理な行動は、認知バイアスが原因である場合が多い。 認知バイアスとは、進化の過程で獲得した生き抜くための工夫……のバグ部分。認知バイアスを知れば、「なんでこんなことしちゃったんだろう?」と言うことを避け、かつ利用したりもできちゃうので便利です。そんな認知バイアスを集めたマガジンが「認知バイアス大全」です。


不都合な事実は見たくない…

持っている株式が株価が下がり続けているときには、その株価の動きをチェックする頻度が下がっていくことがありませんか? わたしはあります(笑)。太ってきたら体重計に乗りたくなくなってきます。このように人には、自分に都合の良くない情報を避けて、見ないふりをしようとする傾向があります。これを「ダチョウ効果」といいます。映画『マネー・ショート』にこんな言葉が引用されています。


ダチョウ効果

ダチョウ効果(Ostrich effect)とは

危機の存在が明白であるにも関わらず、そのような問題は存在しないように考える傾向

これがどうして「ダチョウ効果」というのかというと海外でのことわざ(しかし間違っています)に

ダチョウは危険を避けるために砂に頭を突っ込む

というものがあり、それが由来です。危険に対処するのではなく、危険をみないことでその危機から(気持ちだけ)逃れる人間の傾向をこのことわざで表現したのでしょう。この認知バイアスは、Galai博士とSade博士により2006年に名付けられ、世に広まりました。流動資金と資産の関係という論文のなかで名付けたものです(※2)。

ダチョウ効果への反論

Gherzi博士らによる2014年の論文で、ダチョウ効果への反証をしています。彼らは投資家たちは、ポジティブとネガティブな市場状況へ真っ向から退治し、まるでミーアキャットのように強く警戒していると述べています。これをGherziらは、ミーアキャット効果(Meerkat effect)と呼んでいます。
以下、彼らの論文。


ミーアキャット効果

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Gherziら(2014)による研究では、投資家たちに、ネガティブな情報を無視したり回避したりしようとする傾向は見られず、代わりに投資家には、「ポジティブな市場リターンと日々のネガティブな市場リターンの両方を受けてポートフォリオの監視を強め、頭でっかちのダチョウよりも警戒心の強いミーアキャットのように振る舞う」傾向が見られました。Gherziらは、これを「ミーアキャット効果(meerkat effect)」と名付けました。

対策

ゴールを思い出す癖をつける

ゴールを常に念頭に置いておくと、合理的な行動を取りやすくなります。たとえば、ダイエット。「痩せて何をしたいのか?」ということが明確だと(たとえば水着を着て海水浴に行く)、体重が増えているという事実を受け入れて対策を練る方がゴールに近づきます。このゴールを常に意識することを「出口戦略」と言い換えることもできます。

応用

結果にコミットしない、耳障りが良く、ハードルが低く、自己効力感が上がりそうなコピーやサービス

多くの人は「本当に痩せる」ことなどは、求めておらず、痩せるために頑張っていて、そして痩せ始めている……と思える行為を求めています。本当に痩せる……ということより、今すぐにリワード(報酬)を提供できるサービスのほうが売れることでしょう。


参照

※1:Ostrich effect

※2:"The Ostrich Effect" and the Relationship between the Liquidity and the Yields of Financial Assets"

※3:The meerkat effect: Personality and market returns affect investors’ portfolio monitoring behaviour

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