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仕事が遅くなる「情報バイアス」とその対策

「認知バイアス大全」マガジン

わたしたち人間が不合理な行動をする原因のひとつが認知バイアス。認知バイアスとは、人間が進化の過程で獲得した生き抜くための工夫……のバグ部分です。そんな認知バイアスを紹介するマガジンが「認知バイアス大全」です。


判断材料の情報をすべて集めようとしてしまう

わたしたちは、たとえば車を買うとか進学校を決めるなどの、何かの決断をするとき、できるだけ情報を集めてから判断しようとします。このとき、より良い判断をしたいために(というよりは、間違った判断をして損をしないで済むように)必要のない、または重要ではない情報まで収集してから判断しようとすることがあります。その結果、決断がながびき、好機を逃したり、状況が悪化したり、ただしくない判断をすることがあります。これを情報バイアス(Information bias)と呼びます。

情報バイアス

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情報バイアス(Information bias)とは

多くの情報を集めた方が正しい決定ができると考え、関係の無い情報を集めてしまう傾向

です。完璧主義の方が、ついついやってしまうのもこの情報バイアス。仕事や人生においてスピードが重要になる局面は、うんざりするほど多くあります。このスピードを決定的に損なうバイアスです。バイアスとは、歪んだ認識を意味したことばです。

ちなみに情報バイアスはいくつか種類があって、情報の収集する対象に偏りがあるために正しくない結論を出すことも情報バイアスの1種です。今回は、こちらではなく情報をむやみに集めてから判断しようとしてしてしまう情報バイアスのみ取り扱います。


論拠

Heuristics and Biases in Diagnostic Reasoning (Baron, Beattie & Hershey 1988) ペンシルバニア大学

この調査では、多くの対象者が、検査することで費用もかかるし、その検査結果が治療にまったく関係のないものにもかかわらずETスキャンを行うという判断をしていることがわかりました。情報が多いほうが、より良い判断ができると考える傾向は、必要のない情報の収集までしようとするバイアスを形成しています。

似た話として、選択が多すぎると購買意欲が減るというものがあります。これはコロンビア大学経営大学院のシーナ・アイエンガー教授(Sheena Iyengar)による「選択肢の数が多すぎると選べない」というスーパーマーケットでの観察研究結果を論拠にしたものです。

Sheena Iyengar
Source: Ashinaga

ちなみにこの選択の科学についてスタンフォード大学のジョナサン・レバーブ博士(Jonathan Levav)は異を唱えています。人は対象により選択の数が多いことを望むことがあると。

Jonathan Levav
Source: Stanford business

この選択の科学の知見をあわあせて考えるに、情報バイアスへの対策は、ざっくりいうとこうなります。

対策

(1)判断するに必要な最小限で有効そうな情報は何かを1回考える
(2)間違えることもプロセスに積極的に加える
(3)仮説思考を使う

まずは、何かを判断または研究するさいにどういう情報が有効か?という仮説を立てます。例でいえば、株式投資。PERなのかチャートなのか他人のブログなのか。社長がオーナーかサラリーマンか。どれであろうと完璧な情報源ではありません。完璧な判断根拠があるなら株式投資において必勝法が確立しているはずです。しかし「まあまあ有効な判断材料」という意味では判断がしやすくなります。

つぎにどのみち間違ええるというファクトも受け入れると先に進みやすくなります。世界的なデザイナー、佐藤オオキさんは、判断が間違えることは構わないが、判断をしないことや先延ばしすることを避けるようにしているそうです。

またGEを作ったトーマス・エジソンは、失敗についてこう語っています。

失敗は積極的にしていきたい。なぜなら、それは成功と同じくらい貴重だからだ。失敗がなければ、何が最適なのかわからないだろう。

仮説思考

仮説思考とは、仮説を立ててからプロジェクトを進めるというもの。そうするとすべての情報を収集するのではなく、その仮説の是非を確かめるための情報を収集することになります。



関連した認知バイアス

確証バイアス(Confirmation bias)

仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向


参照



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