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選択肢が増えるとちょっと不幸になる!?  「区別バイアス」

問題:どちらが嬉しい?

あなたが買い物をしていると「キャンペーン中につき、購入金額の一部がキャッシュバックされます」といわれます。つぎの2つの言われ方のどちらのほうが嬉しいですか?

(1) 購入金額の5%をキャッシュバック!(最大10,000円まで)
(2) 購入金額の10%をキャッシュバック!(最大10,000円まで)

ふたつの言い方を同時にみせられると(2)の「10%をキャッシュバック!」のほうに魅力を感じます。しかしこれらを別々に見せられると魅力度にあまり差が生じません(※2)。このように、複数の条件を同時に比較した場合と別々に評価した場合で、評価が変わることがあります。これを「区別バイアス」といいます。


区別バイアス

区別バイアス(Distinction bias)とは

二つ選択肢を別の機会に評価すると似ていると感じるが、同時に評価すると似ていないと感じる傾向

です。区別バイアスは、同時に評価することで、評価に偏りが生じる認知バイアスです。これは、人が、物事を精査するとき、その違いを過剰に調べ、過剰に評価してしまうために発生します(※4)。

1つしかないリンゴを食べたとき満足していたのに……

一個なら満足していたのに……

目の前にリンゴが置かれています。あなたは、それを食べ始めて満足します。「美味しかったな!」と。しかし、テーブルの上に2つのリンゴが置かれていたとしたらどうでしょう。1つは、さきほどのリンゴ、もう1つは、見た目がもう少し新鮮なリンゴです。あなたは、今度は、新鮮な方のリンゴを選んで食べ、幸せな気分になります。しかし「もう一つのリンゴを食べても良かったですか」と聞かれたら、おそらく「いいえ」と答えることでしょう。1つしかないときには満足していたのにもかかわらず。今度は、テーブルの上に5つのリンゴが置かれていたら、どうするでしょうか。さして差がなくとも、あなた(わたしも)は、一番良いリンゴを選ぶために5つのリンゴをよく吟味するかもしれません。これが区別バイアスです。

色違いの服、バージョン違いの商品などを選ぶとき、この区別バイアスは発生しがちです。

対策・応用

比較をしているとき、その差が重要かどうかちょっと考えてみる

むだに比較しないために、「その差は重要か」ということをちょっと考えるという一手間は、意外なほど幸福に役立つかもしれません。レストランでAコースかBコースか迷うことがありますが、もしかしたらどっちだって良いかもしれません。1000円のコースと1500円のコースがあったとして、500円の差です。どちらを選んでも経験値は獲得できます。もし選んだコースが美味しければ、次回選ばなかったコースを選んで比較するのも良いでしょうし、2人で訪れたなら、別々に頼んでもいい。またどっちでもいいやと思っても良い。選択するとき、常に比較しなければいけないという考えを捨ててしまうと楽になるかもです。


認知バイアス

認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、こちらの記事で一覧にしています。マガジンもあります。



参照

※1:Distinction bias

※2:錯思「区別バイアス

※3:Distinction Bias: Misprediction and Mischoice Due to Joint Evaluation. (2003)

※4:Real Decisions Or Reflexive Nitpicking: Distinction Bias

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