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百円コンサルティング3月号 もし新商品開発のコンサルが自民党の支持率を分析してみたら?

未来予測専門の経済評論家の鈴木貴博が好き勝手に書くWEB経済紙「百円コンサルティング」です。世論調査で自民党の支持率が下がった結果、立憲民主党の支持率とまったく同じ数字になりました。これは何を意味するのでしょうか?わたしは新商品開発の際にアンケートを深読みすることで隠れた市場ニーズを見抜く仕事をもう何十年もやってきました。その経験から、今月の記事では次期総選挙での政権交代があるのかないのか分析レポートにまとめてみました。

百円コンサルティングは3か月過ぎるとバックナンバーは販売停止になります。一度購入された雑誌はnoteがある限りは読み続けられます。

もし新商品開発のコンサルが自民党の支持率を分析してみたら?

毎日新聞が2月18日に発表した全国世論調査が話題になりました。それによれば岸田内閣の支持率は14%に低下。不支持率は82%と1947年に世論調査を始めて以降最悪の数字だったそうです。

話題になったのは「これだけ支持率が下がっても選挙をやれば自民党が勝てるのではないか?」という点です。

自民党の支持率も岸田内閣同様に下がって16%まで落ちているのですが、野党第一党である立憲民主党も16%と政党支持率は高くないのです。日本維新の会も13%で、結局のところ支持政党のない無党派層が28%と最大勢力になっています。

これだけ支持率が低い状況でも、なぜ解散総選挙になった場合に自民党が勝てるのでしょうか?わたしは経営コンサルタントであって政治の専門家ではありません。しかし新商品を開発したり、新しい事業を育てたりする専門家であることから、消費者調査結果の読み解き方については深い経験があります。

今回の世論調査を新商品開発が得意な経営コンサルの視点でみたらどう見えるのか、解説いたしましょう。

自民党の支持率が16%と低く、かつ立憲民主党の支持率も16%と低い状況は、一般的にはどういう状況なのかというと「消費者が欲しい商品がない」という状態です。どれもいらないと消費者の声なき声が言っているのです。

比較するために同じ毎日新聞が2009年6月に実施した世論調査を紹介します。当時は麻生内閣の支持率が19%と低下、不支持率は60%に達していました。ご存知のとおりこの直後、7月に麻生内閣は解散総選挙を行い大敗して民主党政権が誕生します。

当時の政党支持率は自民党が20%、民主党が34%で、支持政党のない無党派層は32%という状態でした。公明党の当時の支持率が4%でしたから、与党を合計しても24%です。当時も今も衆議院の選挙区は小選挙区制で、支持の高い候補者がひとりだけ当選する方式です。落選しても一部の候補は比例で復活できるのですが、選挙区で大敗した党は政権から陥落します。2009年の政権交代ではまさにそのことが起きました。

一方で2024年の状況は支持率が16%に低下した自民党に公明党の支持率3%を加えれば19%と立憲民主党の支持者を上回ります。昨年、自民党と公明党の間がぎくしゃくする事件がありましたが、現在では手打ちが行われ公明党は自民党と選挙協力をすることになっていますから、小選挙区では19:16で有利な状況にあるわけです。

「立憲民主党もいらない」という消費者が多ければ「自民党はいらない」と言う人が多くても小選挙区では勝てるのです。

とはいえ比例では立憲民主党と日本維新の会が一定の議席を奪うでしょうから前回から議席数は大幅に減らすでしょう。前回の総選挙で自民公明が圧勝したのとは状況が変わり国会運営では苦労しそうですが、少なくとも政権交代はないということがこの世論調査から読み取れます。

ちなみに数字だけを見れば立憲民主党と維新が選挙協力をすれば支持率合計が29%となって政権交代が起こるように見えますが、これは政党の思想的にまず起こらない提携です。

また、無党派層28%を動かすような大物が出現すれば政権交代が起きそうですが、小池百合子都知事を筆頭に、その候補者は直近では誰にも勢いがありません。だから政権交代は起きない。世論調査を消費者アンケートだと読み取った場合にコンサルが考える未来はまずはこれが大前提です。

ちなみにわたしのレポートをお読みの読者の皆さんはご存知のように、ここまで紹介したストーリーはレポートの終盤で逆転しますので楽しみにお読みください。

さて消費者調査では誰にも欲しい商品がない状態という今の政界の勢力図ですが、これをもう少しかみ砕いて読み解いてみましょう。

消費者視点で見ると今の政界は、品質と性能が消費者にとっての大問題です。政治を任せるだけの品質がない野党と、任せる品質がありながら消費者が求める性能を出してくれていない与党のどちらかしか選べない不満が溜まる状態です。これを経済に例えたら、かつ定食が食べたいのに目の前の選択肢が400円のかつ定食と4000円のロースかつ定食の二択しかない状態に似ています。

かたや食べたくない品質のかつ定食であり、もう片方は税金を払っている人には買えない価格のかつ定食。後者は裏金問題に対する国民のうらみつらみと、あがらない実質賃金に対するぼやきですが、だからといって前者を選ぶ人もいません。

ひとことで言えば民主党には懲りたということです。格安スマホに代えたらつながらないとか、EVを買ったら寒いと充電できないことがわかったとかと同じでもう懲りたというのが消費者意識です。もちろん「15年も前のことで今は品質が違う」と作り手は言いたいでしょうけれども、消費者の意識はそんなに簡単には変わりません。

このような状況ではベンチャー政党がその隙間を狙うチャンスが本当は生まれます。維新が本当はチャンスをつかめるはずなのですが、お金がかかる万博を止められないでしょうから万博までは全国の消費者からは逆に反感しか買わないでしょう。結局、れいわ、参政党、保守党など小型の政党が議席を数議席増やす程度の変化しか起きないことが世論調査から読み取れます。

さて、今回の世論調査からは実は、ここまでの流れとは逆の「新商品のチャンス」を読み取ることができます。まだお話ししていない消費者の不満を解決する方法が少なくとも2つあるのです。

それは何かというと、アンケートを読み取るプロから見ると自民党が安定多数を確保する未来がひとつ、そして立憲民主などの野党が跡形もなく消え去る可能性の未来がもうひとつ読み取れます。ここからはその話をしたいと思います。

シナリオ1:自民安定多数確保

まずは支持率16%の自民党が総選挙に討ってでて安定多数を確保できるひとつめのシナリオを紹介しましょう。それが起きる条件はふたつあります。ひとつが総選挙の前に岸田内閣が倒れた場合で、かつ、ふたつめにその後に無党派層が動く後継者が新総裁となったケースです。

岸田自民党総裁の任期は9月30日で満了になります。現在の衆議院議員の任期は最長で2025年10月31日ですから今年9月までに総理が解散を決断できなければ先に総裁選が行われ、その後に選挙というスケジュールが実現します。

そうなった場合、今の支持率から考えるとおそらく自民党総裁は交代することになるでしょう。

問題はその際の新総裁が誰になるかです。旧最大派閥の安倍派の実力者が裏金問題で動けないことから、誰が新総裁になってもおかしくはない。その後の選挙のことを考えると、総裁選挙に投票する国会議員票は「次の選挙に勝てそうな候補」に集まるでしょう。

国民に人気が高そうなという視点で名前を挙げれば(注:わたしが支持しているかどうかはここでは関係ありません。あくまで消費者調査で選びます)、石破茂、高市早苗、小泉進次郎、河野太郎といった候補が仮に総裁になれば、無党派層が少し動くと思われます。

ただこの四氏はいずれも過去、消費者視点で見ればミソをつけていることがあり、大きく無党派層が動くとは言い難いのも事実です。

では純粋に消費者調査の視点から考えて、次回の衆議院議員選挙で大幅に無党派層の支持を取り込んで自民公明与党を大勝させる人物はいるのでしょうか?実はいらっしゃるのです。

毎日新聞系列のJNNがこの2月に世論調査を行っていて、そこで「次の総理にふさわしい人は?」というアンケートをとっています。一位が石破茂、二位が小泉進次郎とここまでは順当な結果なのですが、三位に上川陽子外務大臣が登場しています。前回調査の6位から急上昇したのです。

あくまで消費者調査の視点からだけで意見を申しあげると「勢いのある新商品」には集客力があります。「一般の国民から見て手垢のついていない新人」のイメージは「売れる商品」の必要条件を満たします。そして、ジェンダー論争的には不適切な表現にはなりますが「日本初の女性宰相」という言葉は純粋に商品力だけで論評すればパワフルな要素です。そこに、これはわたし個人の感想ですが、実力が伴えば最強でしょう。

多少のひいき目を差し引いたとしても、仮に上川新総裁が9月に誕生し、総理にも選ばれたうえで11月に総選挙の投票が行われれば、自民党は最低でも議席数微減程度で収まるとわたしは予測しています。

さて、ここまでの未来予測は多くの読者の皆さんにとっても想定の範囲内の話だと思います。最後にもうひとつ、皆さんがおそらく想定されていない予測を披露しましょう。それが今の与党勢力が絶対的な得票数を獲得する、これまでの延長線上では想定できないもうひとつの未来です。そして申し訳ないですが、この先は100円、料金がかかりますのでご了承ください。

シナリオ2:敵対勢力消滅

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