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手話通訳者全国統一試験「手話通訳の理念と仕事」2021過去問⑯解説〜手話通訳士倫理綱領〜

2021年度手話通訳者全国統一試験の過去問について、参考文献をもとに独自に解説をまとめたものです。


問16.手話通訳士倫理綱領

「手話通訳士倫理綱領」5に規定されている「技術と知識の向上に努める」について述べています。下記の(1)〜(4)の中から、該当するものを1つ選びなさい。
(1) 回覧板を持ってきた隣家のろう者から、地域活動のごみ収集について聞かれたので一緒に班長に聞くことにした。
(2) 電話リレーサービスや遠隔手話についての記事を目にするようになり、理解を進めるために学習会に参加した。
(3) 福祉大会の第2部のアトラクションになると、ろう者の参加者がいなくなったが手話通訳は最後まで行った。
(4) ろう者Aさんは健康診断で飲酒を控えるように言われた。行事後に飲みに行ったAさんに出会い心配になったが声をかけるのは控えた。

2021年度手話通訳者全国統一試験 筆記試験 問16

問題解説

(2)が正しい。理解を進めるために学習会に参加したことは、「手話通訳士倫理綱領」の2. 「手話通訳士は、専門的な技術と知識を駆使して、聴覚障害者が社会のあらゆる場面で主体的に参加できるように努める。」に該当する。
「手話通訳士倫理綱領」に関する出題は、2020年度、2021年度、2022年度と連続して出題されている最頻出問題である。2020年度は「手話通訳士倫理綱領」に関する「聴覚障害者の主体的社会参加の支援」について、2021年度は「技術と知識の向上に努める」について場面設定をあげながら出題されている。2022年度は倫理綱領の記載内容に関する詳細が知識が必要とされた。「手話通訳士倫理綱領」は詳細までしっかり習得しておきたい。

手話通訳士倫理綱領の制定

1989(平成1)年に厚生大臣(現厚生労働大臣)認定の手話通訳士の試験・登録制度(手話通訳技能認定試験制度)が始まり、手話通訳士が誕生した。1991(平成3)年5月に日本手話通訳士協会が設立されたが、当初から倫理綱領を有していたわけではなかった。会員や全日本ろうあ連盟、全国手話通訳問題研究会の協力のもと、1995(平成7)年に「政見放送にかかる手話通訳士の倫理要綱」を1997(平成9)年に「手話通訳士倫理綱領」が制定された。「手話通訳士倫理綱領」の前文では、「私たち手話通訳士は、聴覚障害者の社会参加を拒む障壁が解消され、聴覚障害者の社会への完全参加と平等が実現されることを願っている」と記されている。

手話通訳士倫理

1. 手話通訳士は、すべての人々の基本的人権を尊重し、これを擁護する。
2. 手話通訳士は、専門的な技術と知識を駆使して、聴覚障害者が社会のあらゆる場面で主体的に参加できるように努める。
3. 手話通訳士は、良好な状態で業務が行えることを求め、所属する機関や団体の責任者に本綱領の遵守と理解を促し、業務の改善・向上に努める
4. 手話通訳士は、職務上知りえた聴覚障害者及び関係者についての情報を、その意に反して第三者に提供しない
5. 手話通訳士は、その技術と知識の向上に努める
6. 手話通訳士は、自らの技術や知識が人権の侵害や反社会的な目的に利用される結果とならないよう、常に検証する。
7. 手話通訳士は、手話通訳制度の充実・発展及び手話通訳士養成について、その研究・実践に積極的に参加する。

1997(平成9)年 5月4日制定


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