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「白いパラソル」(昭和56年 1981)松田聖子

 松田聖子。現在でも知らぬ者はない私と同世代のアイドル歌手であります。
 有名な聖子ちゃんカットですが、第1弾シングルの「裸足の季節」から第7弾シングルの「風立ちぬ」までの1年半余り、不動の髪形として君臨しました。当時、私が通っていた高校の女子たちも、禁止されていたパーマを両サイドだけ当てた“サイドだけ聖子ちゃんカット”で生徒指導部の先生と闘っていました(笑)

 私は、当時も現在も、聖子ちゃんのファンではありませんが、この曲の大ファンであります。今でも、この曲を聴くとサビで涙腺がやばい感じになることがあります。
 なにかと、他人の曲の好みが一緒の斉藤和義くんも、この曲をカバーして(しかも、斉藤和義バージョンでカラオケもあります)います。

 曲も歌詞も、サビ前には、慎重な女子の心情を表していますが、サビで一気に伸びやかに歌い上げます。「白いパラソル」だけでなく、今までこのレビューで取り上げた曲たちの多くが “伸びやかに歌う”パートがあるので、きっと、女性歌手のそんなところに私は惹かれているんだろうと思います。

 もう少しこの曲について掘り下げてみます。
 彼女のデビュー曲である「裸足の季節」、第2弾シングルの「青い珊瑚礁」、「風は秋色」、「チェリーブロッサム」の歌詞に出てくる男性像や男性が行った所作をあげてみると、「手を振る」「映画に誘う」「やさしい目」「あなたの腕の中で旅をする」「泣き虫なのはあなたのせいよ」「遠くでほほ笑む」「愛の花受け止めてくれるでしょう」「走り出した船はただあなたへと続いてる」と、歌詞の中の女の子と同等、もしくはそれ以上のあこがれの存在としての男性であることがわかります。
 第5弾シングルの「夏の扉」の一番の歌詞で、「照れたよう」「ためらいの」と、初めて可愛げな男性像が現れるのですが、その男性とて、二番の歌詞になると、みんなの見ている前で好きだと叫んだせいで、女の子に「どうかしてるわ」と思われてしまう、そんな快活で積極的な男性になってしまいます。

 ところが、第6弾シングルのこの「白いパラソル」では、「素知らぬ顔をする」「あやふやな」「少し影ある瞳」「冷たい」、そんなクールで素っ気ない男性が初めて登場して、そんな彼の前で、女の子は時には慎重に、時には「さらっていいのよ」と大胆な誘いを掛けます。
 これは、前回登場のあべ静江の「みずいろの手紙」と同じく、ブラウン管の前の男共を挑発するエグい手法そのものです(笑)
 この第6弾シングルの曲から第19弾シングル「ハートのイヤリング」まで足掛け3年、連続14作の作詞を行ったのが松本隆であります。

 この曲、テレビサイズでは1コーラス半を聖子ちゃんが歌うのがほとんどだったのですが、歌詞の一番のツボはテレビでは滅多に歌われなかった2番のサビにあると思っています。

 ♪涙を糸でつなげば 真珠の首飾り

 この歌詞で私はいつも涙腺が熱くなります。

♪「白いパラソル」(昭和56年 1981)松田聖子
 作詞:松本隆 作曲:財津和夫
https://www.youtube.com/watch?v=ot6B3ng8Bfo(フルコーラスです)