「YAH YAH YAH」

子どものころ
毎日のように
遊んでいた公園。

鉄棒、ジャングルジム
ブランコ、大きな砂場、
なんだってあった。

いつものように
遊んでいると当時に
してはめずらしい格好の
おじさんがくるようになった。

サングラスにおしゃれな
ハットをかぶってしゃれ
しゃれのシャツに無精ひげ。

少しこ汚ない感じがしたが
「おしゃれだから｣のひとことで
かたづけてしまえばそれまでだ。

とにかく毎日のようにくる。

いつも
「やあ、やあ、やあ｣と
言いながらあらわれる。

ときに飴を持ってきてぼくらに
くばったり、ジュースをくれたり。

無言でベンチに
腰かけてニコニコしながら
ぼくらの遊びを見守る。

そして無言で帰っていく。

つぎの日
またつぎの日も
あらわれる。

「やあ、やあ、やあ｣
というキメゼリフを
たずさえて。

ついたあだ名は
”やあ、やあ、やあ おじさん”

そのままだね。

ワクワクしながら
ぼくらはおじさんをまつ。

お目当ては
差し入れ。

今日は何かな、
飴？ジュース？
それともアイス？

来た！来た！
いつもの格好で！

ハット、サングラス
しゃれしゃれのシャツ。


冬休みにはいると
ぼくらの公園遊びは
エスカレート。


となりまちの子どもたちも
参加して大勢でお祭り騒ぎ。


帰りも遅くなり
お母さんお父さんに
いつもしかられる。


あまりにも帰りが遅くなった
ときの言い訳はいつもこれ。


「ゲンちゃんとこの犬が
逃げたから探していた」


２秒以内でばれる嘘だね。


あれ？
そういえば最近
やあ、やあ、やあ おじさん
こないね。


ほんとだこないね
どうしたんだろ？


何かあったのかなあ。


冬休みも終わっても
公園での遊びはとまらない。


そしていつのまにか
あのおじさんはぼくらの
記憶からいなくなった。


公園でさんざん遊んで
家に帰るとテレビにかじりつく毎日。


最近は音楽番組に夢中。


どれどれ
ポチッとチャンネルを入れる。


おっ、この2人組
なかなかいい曲だ。


えっ！まさか！


えっ？似ている！
あのおじさんに似ている。

まさかあのおじさん！


そんなわけないかあ。