『M-1グランプリ2023』感想

◆ファーストステージ◆

令和ロマン【少女漫画】…648点(ファーストラウンド3位)
トップバッター引かれた時は、令和ロマンは大会のトップとしては最高の盛り上げ役だとは思いつつも3組残るところも見たかったな…とこっちが勝手にトップでの最終決戦進出を諦めてしまった部分があったので、まさか3位通過できるとは!初登場とは思えぬ全く緊張を感じさせない堂々とした面持ちでビビった。せり上がりでもなんかやっていて、とにかく大胆不敵。しかも準決勝ネタではなく、しゃべくり漫才を選択したのかなり衝撃だった。とにかく序盤からお客さんを巻き込む力がスゴかったし、のちに分かるけど今年の決勝の客層は例年と比べるとだいぶヘンではあったのでその客層の心をトップで掴んでたのは本当に凄かった。くるまさんが以前「自分達はゼロイチが出来ない」と言ってたけど、しっかり新発見からなる理論立ての漫才になってたし「マジで今日全員で考えたいんだよな!」って言いながらお客さんを取り込んでいく感じが激アツだった。あと食パンのくだりのあのしつこい感じがめちゃくちゃくるまさんっぽくて最高だった。それに対する「直角に曲がる人いないね?」っていうケムリさんのいなし方も面白かった。地味に好きな部分だと「あの社長初代なの!?」の部分かも。「二体の日体大が…」「もっと戻せよ」のくだりも凄い好きだったなぁ。あと、こういうタイプのネタで現実的な解を見つけて「ダメだ、あんまこれ面白くない」って片付ける展開を初めて見たから「おもしろ!!」って思った。ちゃんと新しい学校のリーダーズみたいなワード入れてるのも用意周到で計算高さを感じる。ただ令和ロマンの真骨頂的な終盤のくだりがあんまりハマってなかったのが今回の決勝の独特な空気を表してた気はする。その空気を察知して2本目に活かしたくるまさんの策士ぶりもいかついけど。

シシガシラ【放送禁止用語】…627点(ファーストラウンド9位)
敗者復活。まさかシシガシラが復活するとは夢にも思わなかったのでアツかった…!去年の自分に「シシガシラが敗者復活したよ」って教えても絶対信じないだろうな。そして敗者復活ネタと決勝ネタを変えたのも自分としてはシシガシラなりの矜持を感じた。もし世に初めて出る時は絶対にこのネタ、という矜持というか。初進出での準決勝で代表作であるこのネタをかけた時点でもそれを感じたんだけど。「てっぺんだけハゲてる奴にやれよ!」のツカミ面白すぎる。どうもの「ど」の時点でハゲちゃってる脇田さん良い。脇田さんは改めて決勝で見ると、フォルムとか声とか含め謎に華があるように感じた(キャラクター的なポップさ)。ネタとしてはコンプラで言葉選びが厳しくなる世の中に対する「ハゲ」からの視点、という感じで今思えばこのコンプラいじりって結構早かった気がする。このタイプのネタ今年異様に予選で流行ってたけど、このネタは数年前からあるネタなので当時は最先端すぎたんだなぁと。そして数年経った今もちゃんとハゲだけは規制されてなくてある意味良かった。脇田さんの言い方も全部面白くて、「ハゲだけ漏れちゃってる」の後の「え これ見落とす?」が好きすぎる。「これ規制できないって嘘でしょ?」と脇田さんがお客さんに語り掛ける際の、浜中さんの邪魔にならない絶妙な声量も良い。確かに冷静に考えて、このコンプラの網をハゲだけすり抜けちゃってるの本当に変だな。ハゲってワードだけで拒否反応起こしちゃう浅い奴に対するアンチテーゼにもなってる漫才。

さや香【ホームステイ】…659点(ファーストラウンド1位)
予選でこの漫才見て、超優勝候補だと思っていたので3番手はちょっと早かったなぁという印象。このネタが持ってる本来のウケ量よりはウケ切らなかった感じでちょっと悔しい。ただそれでも3番手で1位通過はエグいけど。コンビ名を名乗らずに漫才に入る感じは旧M-1のM-1戦士を彷彿とさせる余裕感だったし、石井さんの歩きながら喋るってツカミも一瞬で自分達の雰囲気を作った感じ。新山さんがちゃんと国際交流というワードを抑え直すからそこでの取りこぼしもないし。個人的には「黙って引っ越そうと思ってるんですよ」は去年の免許返納よりも好きなファーストインプレッションだったので、なんでもっとざわざわウケなかったのかが不思議。その後の「コンビニ側」で例えるくだりもそうなんだけど。「誰が一週間後にブラジル人いけんねんな」というツッコミの、「ブラジル人いける」という状態の概念が好き。石井さんの自分の状況をライト兄弟に例える図々しさも面白すぎるし、それに対する新山さんの「ホームステイは飛んだらあかんねん!」の熱量もいかつかった。そして石井さんの「ええよほな!!受け入れるわ!!」の突然の逆ギレよ! タイミング・声量・表情、全部怖くて最高。その後の地球の裏側で呑気に荷造りしてるエンゾに呼びかける新山さんの熱量で全部持っていく感じも凄かった。今年のM-1ネタで言うと、この漫才のオチ「俺らが浪速のライト兄弟や!」が一番好き。個人的には、去年の免許返納よりも新山さんが怒ってる理由が明確で好きだった。去年は勿論面白いんだけど「なんでこの人はここまで怒ってるんだろう?」の理由があまり無かったので。

カベポスター【おまじない】…635点(ファーストラウンド6位)
本当に上品でキレイな漫才。題材としては不倫を取り扱ってるのに、なんでこんなにしっとりと聞いていられるんだろう。フリとしてはだいぶ長いけど、ずっと聞いていられる心地良さ。カベポスターは永見さんの子供の頃のエピソード的な漫才が多いイメージだけど、世間のダーティな部分を純真無垢な人間から見た視点の描き方が繊細で、かつ物凄くポップに描いている。永見さんの「叶ったんですよ~」のゆるい雰囲気の言い方も、全然ダーティな雰囲気を感じさせないし。特に「ずっとずっとゼリー ずっゼリ」からの流れるような「叶ったんですよ~」が笑い声の中に溶け込むような感覚があって好き。地味に好きなのが、みーちゃんが校長の事を「校長」と呼んでいるくだり。「この中にずっゼリがいるわよね?」のバカバカしさも凄い。そして浜田さんのドロドロ事件おもしろすぎた!浜田さんが噛んでるところ初めて見たので本当に決勝には魔物が潜んでるな…と思ったけど。個人的には予選のオチの方が好きだったけど、結果的にはオチ変えて最高の結果だった気がする。

マユリカ【倦怠期】…645点(ファーストラウンド4位)
「ずっとキモダチ」ってキャッチコピー良すぎる。マユリカを的確に表しすぎてる。阪本さんが階段に気を付けながらちょっとだけ小走りだったのも良かった。キャッチコピーと登場シーンで十分マユリカの気持ち悪さが伝わってたし、阪本さんが変なそぶりを見せて中谷さんが「なんじゃこいつ…」って言う導入もキモの地盤作りがめちゃくちゃ強固だよなといっつも思う。マユリカのネタは全ボケがしっかり振りかぶって絶対に爆発させるのでマジで凄い。一発がデカい。中谷さんの「エ~ッ?」みたいなリアクションも全部面白いからちゃんとその空気が持続していくし。「枕田ベイ」っていう阪本さん独特のネーミングセンスめちゃくちゃ好き。もっとヘンにしてもいいのに、ちょっとだけヘン程度でとどめてる感じ。特に凄かった部分で言うと、「ズッキンズッキンプッチン不倫です、ポンピーン」に対する、阪本さんを舞台の端っこに追い詰めながらの中谷さんの「エ、エ、エ、エ、エ!?」という反応。終盤のノーシンピュアのくだりに至ってはもう阪本さんは何もしてないのに中谷さんだけでずっとウケてる感じで凄かった。ネタ後の審査員とのくだりも他の組よりもだいぶ長くて、一瞬でマユリカのイジり方の教科書が完成していく感じも良かった。

ヤーレンズ【引越しの挨拶】…656点(ファーストラウンド2位)
とにかく手数が多い。マユリカとはまた対照的なタイプの漫才コントで、楢原さんがとにかくずっと喋ってて全方位に矢を打つ感じ。人それぞれ刺さる部分が違って、審査員が講評時に全員別のくだりを挙げたのが象徴的だった。あと「大丈夫でしょ」って導入も結構革命的だと思う。漫才コントってコントインしてからボケまくる理由付けが特には無いので、変人への対応がちゃんと出来るかどうかのシミュレーションという導入になっててそこの整合性がしっかりしてる。そしてそこからの1ボケ目が「なんだ あたしの右手か…」なの強すぎる。セクシーダイナマイトボートレースのくだりの後にさりげなく「のってけ のってけ…」ってフレデリックの「スパークルダンサー」口ずさんでるの良かった。好きなくだりは割とさりげない部分が多くて、「ねねねーねねーねね」とか「ちらし寿司だ」みたいなくだりくだりの接続点みたいな部分が好き。「ゴスペラーズ誰が好き?」「話す事ないならいいですよ」「わたしドラム」「いねぇよ」の流れるようなやり取りもヤーレンズって感じ。「北京原人のDVD」は伝わるターゲット層としては物凄く狭そうなのに、語感とテンポで全員を笑わせててネタのとてつもない強度を感じる。最後の鍵捨てる部分は予選よりさりげなくなっていて、一瞬リアルタイムで見た時は「鍵捨ててなかった?」と思っちゃったんだけど、後から最後ゴミ捨て場に捨ててるって分かって作り込み凄いなぁと思った。予選の分かりやすく捨てるマイムとは変わってて、本当はそっちの方が伝わるはずなのにリアリティを尊重するこだわりを感じた。

真空ジェシカ【Z画館】…643点(ファーストラウンド5位)
せり上がりからの登場がだいぶ速くて2020のニューヨークがよぎったけど、ツカミが過去2年とは違うロートーンスタートのツカミだったので結果オーライだったかも。真空はアングラな雰囲気を残しつつも3年連続決勝来て安定してウケてるので、それだけに安定に留まってるのはマジで厳しいなという感想。最強の2本目が控えてる事を知っていながら2本目を毎回見れなくて悔しい。序盤の「配慮がいるかどうかも分からない」みたいなワードも良いし、「エンジンのスマホ使ってる」はシンプルなのに誰もやってなかったタイプのボケでしかもその後の「検索エンジンすぎる」は予選途中で付け足したくだりなのエグい。検索エンジンという言葉ありきで生まれたくだりではないんだもんな。「ドラ泣きしてるところすみません」はめちゃくちゃ真空だなぁ!って思ったくだり。ドラ泣きってワードを面白がってる感じが。ムービー勝山に対する「左に受け流された」の後の「右から質問しちゃったから…」って付け足しもめっちゃ面白い。「三谷後期高齢者」に対する「もうラジオネームじゃねぇか」ってツッコミとか「映画泥棒が勝った」みたいな激強部分もあって、本当に賞レースへの当て方が見てて気持ちいい。ただ講評ではもっと真空の自由さを欲してる声もあって、それで言うと個人的に一番真空の良さド真ん中みたいなネタだった一日市長のネタが爆ウケしたのに点数伸びなかったから今こういう戦い方になってるのでは?っていうもどかしさもあった。

ダンビラムーチョ【カラオケ】…631点(ファーストラウンド8位)
個人的に準決勝で一番純粋に笑ったネタだったので、厳しいなぁ…という感じ。原田さんがM-1ネクストデイでの舞台裏映像で言ってた「長く歌うのが面白いのに」がマジで全てな気がする。それまで予選とか劇場でずっとウケ続けてきてたので、今回の客層があまりにもイレギュラーだっただけだと思うし審査員もそれに引っ張られてた感はある。出てくる曲の世代的に、爆ウケしてたとしても点数伸びなかった可能性はあるけど。「入れるわ」っていう謎の発言から天体観測の最初を「チョー…チー…」で表現するの面白すぎるし、イントロを歌う大原さんに対する原田さんの「マジで…?」の構図も良すぎる。「ジョンゼゲゼゲゼ スーゼ スーゼ」とか再現度高すぎて素晴らしいし、Aメロの途中からイントロのメロディがまた入るところなんで笑っちゃうんだろうあれ。アイドルも曲の再現性は大前提として大原さんの顔が面白すぎて良い。ギュッと瞑った目と、正面から見た時の耳のデカさが良い。「エナーイモード」とか、「玉置浩二モード」とかその後の展開のさせ方も全部楽しい。先に「聞きたくないよ」歌っちゃうのと、「のがれ」の上がり方が玉置浩二すぎて面白すぎる。あとそもそも自分も生反省会配信で隆さんが言ってた意見と一緒であんまりこのネタを歌ネタとして意識してなかったので、講評もちょっと違和感があった。「YOASOBIのアイドルがとうとう入ったけど」みたいな言い回しの面白さもあるし、「以上、元木大介でした」みたいなダンビラらしい何の脈略も無いしょうもないボケもめちゃくちゃ面白いのに。細かい部分だと、冒頭の原田さんの「あんま聞かないけどな~」の言い方が凄く好き。あとネタとは関係ないけど、講評後に大原さんが一度ハケてユニフォーム持って戻ってきたシーンは痺れた!M-1史に残る大事件。大原さんがいない事件を繋ぐ原田さん面白すぎた。

くらげ【サーティワン】…620点(ファーストラウンド10位)
いつも思うけど、くらげは無骨な見た目なのにめちゃくちゃシステム漫才なの本当に良い。一見羅列に見えがちなネタだけど、セットリストが完璧すぎる。無骨な男の口から出たら面白いワード大喜利でもあるし、語感の面白さとタイミングも絶妙なので受け手がサーティワン、サンリオ、口紅全部詳しくなくてもちゃんと感覚で笑えるネタという感じ。バニラ・チョコ・ストロベリーのシンプルゾーンを越えた先がオペラザシンフォニーなの面白すぎる。最後が「ナッツトゥユー?」なの凄い。サンリオゾーンだと、リルリルフェアリルとみんなのたあ坊のタイミングが良すぎる。しっかりシステムを提示して、口紅というワードが出始めるとこれから始まる展開を予想してざわざわと面白くなってくるのも良い。個人的には、口紅ゾーンは予選での「もしかしてシュウウエムラ?」の方が好きだったな。口紅は知識皆無なので完全に語感のみでの感想だけど。マジョリカマジョルカとかめっちゃ面白い。ただ、詳しい人はもっと楽しんでる感じもしたのでやっぱり多少女子ウケ強めな感じはあるかも。だとしたら尚更ウケてもよかったのに。

モグライダー【錦野旦】…632点(ファーストラウンド7位)
2021はトップバッター、2023は大トリ!地味に結構斬新な構成のネタで、まずボケが題材を提示→ツッコミが解決法を提示→それを受けてボケがその解決法に挑戦、ってあんまり見た事ない。さそり座の女タイプのネタと、郷ひろみタイプのネタのいいとこ取りみたいなネタ。モグライダーのこのネタは売れてキャラが浸透すれば尚更ウケるタイプのネタだと思ってただけに、ここも中々厳しい結果になったなぁと思った。「ほんとにってどれぐらい?」→「空に太陽がある限り」があんま伝わってない時点で変な空気すぎたけど。「どうせ今だけなんて思ってんじゃないの?バカ野郎」の芝さん、カッコよ面白い。「ほんまに~」のタイミングとかも凄い面白い。「ごめんねごめんね~」をオチに持ってきて、「栃木のスター」というワードで締めてるのも凄く良い。ただ講評聞く限り、もっとハプニング性の要素を追加してもよかったのかなぁ。そういう要素入れすぎると逆に減点されるのかなぁと思ってしまうけど、もしその要素をふんだんに加えてもいいのだとしたらマジで敵なしになると思うので、来年のラストイヤーに繋がってほしい。


◆ファイナルステージ◆

令和ロマン【町工場】…得票数4票(ファイナルラウンド1位)
「お久しぶりです」から一気にお客さんの心掴み直してるのスゴすぎる。本題に入るまでの前段の時点で何度も爆発起こしてて、それだけで「優勝するのでは…?」ってなった。ここまで正直新M-1の中では2018レベルで重い空気だった分、ここで一気に大爆発した感じ。2018でいうと最後の霜降り明星と和牛で一気に火が付いたけど、今年はとうとうファーストラウンドが重い空気のまま終わってしまった分爆発ポイントがこっちにずれ込んで、なんなら新M-1の最終決戦の中でトップレベルにウケてた気がする。「三密回避でステイホームですけども」とか「指くわえて見ててください」みたいな前段の部分が既にめちゃくちゃ面白くて、盤石の状態で漫才コントに入るので手が付けられないぐらい着火してた。「X2年」っていうボケめちゃくちゃ凄い。その後の「平成14年…」の言い方も良い。「ウィーンガシャン…」の異様な長さのマイム面白すぎるし、そこからの「単純作業ばっかでつまんねぇな」のタイミング凄すぎた。「昔は良かったよな、昔は恐竜がいた…」は2年前の予選でこのネタを見た頃から本当に一番好きなボケ。関係ないぐらい昔なの面白すぎる。もう一つ双璧を成すぐらい好きだったのが「拍手広がらず」のくだりだったので、そこもめちゃくちゃウケて良かった。確か2年前の予選の時は、とんでもなく面白いと思ったのにむしろあんまウケてなくてもどかしかったので、拍手が広がらなくて拍手笑いが起きるという状態になってて最高だった。あとクッキー工場のくだりでの「ノウハウが無さすぎるだろ流石に」ってツッコミの、「流石に」がなんか分かんないけど面白すぎる。その後の「クッキーに未来はない!美味しくない!」もボケとしての迫力凄いし、本当にくるまさんのボケもケムリさんのツッコミも両方ずっと凄い。くるまさんの「クッキイ~!!」のイントネーションめちゃくちゃ好き。そして絶対に優勝したと確信してしまったのが何と言っても最後の「吉本にはこういう人がいます」の部分。ここのウケの音圧凄すぎて感動してしまったし、その爆ウケのままキリよく切り上げたのも潔くてカッコよかった。

ヤーレンズ【ラーメン屋】…得票数3票(ファイナルラウンド2位)
去年の予選・敗者復活ネタなのにめちゃくちゃ進化しててビビった!一個アツかったのは券売機のくだり。木曜ラヴィットでヤーレンズがラーメン屋ネタを石田さんに見てもらって講評してもらう、という事があったんだけど、その際に石田さんが唯一添削したのが券売機の部分で。去年までは「券売機にお金を入れるところがない」という設定をツッコミである出井さん側から提示していたので、その部分をちゃんと楢原さん側から提示するように変わっていて違和感のない作りになっていてマジでラヴィットが活きてるなぁと思った。これだけ手数多いネタなのに、ありそうで過去になかったボケばかりなの凄い。「ツッツウラウラ」とか誰か言ってそうで言ってなかったし。チャーシューと長州の違いが「切れてる」と「キレてないですよ」とかも、なんかめちゃくちゃ昔の2chのコピペとか10年前ぐらいのTwitterでツイートされててもいいような内容なのに意外と無かったし。「バナナと言ったら丸美屋」もありそうでなかったよな。あと「ラーメン屋じゃん?」のくだりは今年の3回戦で斬新すぎて衝撃だったくだりの汎用で、元々面白かったベンジャミン・バトンのくだりがさらに進化してて感動。「言葉足らなすぎだろ」とか「言い終わってから切らないと」みたいなくだりも好き。この令和の時代に「day after tomorrow」を入れてくるのが一番ヤーレンズって感じがする。「麺ジャミン・バトン スープなラーメン」って店名、ベンジャミン・バトン知らずにつけてたとしたら流石に意味分からなさすぎる。本当にベンジャミン・バトン知らずにつけていてほしい。

さや香【見せ算】…得票数0票(ファイナルラウンド3位)
2本目はボケ・ツッコミを変える、という噂は聞いていたけど、いざ現実となると凄い事してるなぁ!と思った。ただ、「突然ボケ・ツッコミ交換するとお客さんがついてこないのでは」という危惧がドンピシャで起きた感はあったけど、それ含めめちゃくちゃ面白かった。1本目が終盤ちょっとだけ形勢逆転感あるとはいえ、ホームステイ飛ぼうとしてた石井さんが完全にツッコミに転じてる状況意味分からなくて飲み込みづらいし。新山さんがとうとうと喋り出した時点でセミナーみたいな空気になってたのも、だいぶ前半のほうでお客さんに咳き込まれてたのも笑った。それでもとにかく新山さんのやりたいネタ!って感じが伝わってきて、漫才師の矜持を感じた。去年の2本で若手正統派漫才師の代表格みたいな持ち上げられ方をしていたので、実は全然正統派でも本流でもなんでもないよという突きつけ方を見た気がする。演説しながらスーツを脱いで相方に持たせる漫才、全然正統派じゃない。どんどん話が進んでいくから、当たり前のように「見せした場合」とか「眼(がん)」とか言ってるの面白いな。石井さんの「帰っていい?」に対する新山さんの「最終決戦やけどお前ほんまに帰れる?」という詰め方が一番さや香らしくて面白かった。このネタありきで始まった2023と言っていたので、とにかく見せ算を決勝で披露したくて最終決戦に進出できる漫才を仕上げていったのが変態すぎて凄い。最後、邦ちゃんに「全然よくなかった」って切り捨てられたのもあまりにも最高だった。

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