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マニュアルモードの意義 【後半戦】

※ マニュアルモードの意義【前半戦】の続きです。


4. 風景写真と人物写真のアプローチ

前半戦ではマニュアルモード(以降Mモード)についての大まかな解説、Mモードから学ぶことについての僕なりの考えをお話しました。

今日はその続きです。


まずは

「Mモードから教える先生が悪い」

「でもそういった先生方を批判するつもりはない」

この言葉たちの伏線回収からはじめましょう。


他の先生方がMモードから始めなさいという理由をこれからご説明することになりますが、その最たるものが風景写真と人物写真のアプローチの違いにあります。


まずは人物写真について。

人物写真を教える上で「Mモードから始めなさい」というのはあながち間違いではありません。

理由はこんな感じです。

① 風景写真ほど絞りに詳しくなる必要がない。
② 風景写真ほどS速度に詳しくなる必要がない。
③ ある程度光を作れるのでISO感度も低めで撮れる。
④ 室内撮影が多く、一定の露出で撮影することが多い。
⑤ 設定よりも優先することの方が多い。

ここだけ切り取れば風景写真は難しい、人物写真は簡単となりますが、そうではありません。

それぞれの分野で優先することが違う

このことをお伝えしたいだけです。

注目すべきは⑤の部分ですね。


それぞれの違いをわかりやすくまとめると

■ 風景 = 目の前にある風景をいかに美しく撮るか
■ 人物 = 目の前にいる人物の魅力をいかに引き出すか

これを更に落とし込むと

■ 風景 = 風景をイメージ通りに撮るために細かな設定をしていく
■ 人物 = 人物がイメージ通りに写れば設定なんて関係ない(極論)

最終着地点は

■ 風景 = 絞りやS速度やISO感度を理解していないとMモードで撮れない
■ 人物 = ボケを使えてブレないS速度を知っていればMモードで撮れる

となります。

繰り返しになりますが、風景と人物、どちらも明確な正解はなく、あくまで写真は自分がどう撮りたいかに尽きます。

相手が風景なのか人物なのかで撮影のアプローチは変わり、人物である場合は設定うんぬんよりも、被写体に笑ってもらったり、真面目になってもらったりといった心を通わせる作業の方が重要になってきます。

わかりやすい例で言うと、ポートレートをされている方はピンボケでも、ブレてもいいから、いかにモデルさんの表情を引き出すかのみに執着している方もいるくらいです。

ここまでをまとめると「ひとまず人物写真を撮りたいのであればMモードからはじめるのは悪くない」が高田の見解であり、そういう意味においては他の先生方の手法にも納得です。


しかしですね。


このことを生徒さんたちにちゃんと伝えてますか?

そのせいでいざ屋外で風景を撮る時にあれ?難しいぞ?

Mモード難しーい!という方が増えているのではないですか?

これが高田の主張です。笑


お話ししたいことはまだまだあるのですが、風景も人物も大変に奥の深い分野ですので今日はこの辺りにしておきます^^


5. Mモードと他のモードの使い分け

Mモードについて色々とお伝えしてきました。

Mモードを使える方もそうでない方も「各モードはどう使い分けるの?」という疑問にぶつかると思います。

これについても正解はありませんが高田的にどうしているかを書いておきます。

① 風景写真 = 問答無用でMモード
② 建築写真 = Mモード
③ プロフィール写真(屋外屋内) = Mモード
④ 家族写真(屋外) = 絞り優先モード
・ 相手が複数かつ光が読みづらいから
⑤ 動物写真・ペット写真(屋外) = S速度優先モード
・ 被写体が動き回るから

これらはあくまで仕事として引き受けた場合の話です。

撮影料をいただく以上、絶対に失敗しない選択する必要があるのでこのような方法で撮影しています。

それから僕は基本的には屋外案件を受け付けていますので、屋内となれば④も⑤もマニュアル撮影は可能です。

前半戦でお伝えした「ほとんどの写真は絞り優先モードで撮れる」「スポーツ選手や子供や動物はS速度優先モードで撮る」という言葉の裏にはこういった理由があり、極論すると①②③④は絞り優先、⑤はS速度で撮れてしまいます。

ただ、露出(『絞り』『S速度』『ISO感度』の三要素)をしっかり理解した人間が絞り優先モードで撮った写真と、なんとなく知ってますという人間が絞り優先モードで撮った写真には大きな差が生まれます。

それこそが写真の深みであり、楽しいところです。


風景写真が問答無用でMモードな理由はまたの機会に書きたいと思います。


前半戦でMモードは不要とお伝えしましたが、これはあくまで2択に迫られた話であって、決して不要ではありません。

僕にとってはむしろ必要です。


6. マニュル撮影が楽しくなったその先に

さてさて、2回に分けてMモードについて語りましたが、写真をやる以上は是非ともMモードを扱えるようになってほしいと思っています。

一度買った機材にはどんどん愛着が出てくるもので、それはまさに相棒と呼べるもの。

パイロットが飛行機を空に浮かべるように、車掌さんが電車を寸分違わず動かすように、F1レーサーがマシンを高速で乗りこなすように。

僕たちカメラを扱う人間も自分が選んだ高価な相棒を使いこなして、撮りたい写真を撮れるようになりましょう。


そうしてMモードに慣れてくると、歩いているだけで数字が浮かんできたりします。これはLv.3を受講済みの生徒さんはご存知の話です。

ここの絞りはこうだな、S速度はこうしよう、じゃあISO感度はこんな感じだなと。

こうやって頭の中が露出に乗っ取られ始めたらようこそマニュアルワールドです。


もちろんいきなり適切なF値やS速度はわからないので、最初は「ざっくりこんな感じかな?」で構いません。

いきなりわかってしまったら誰も苦労しないし、写真はつまらないものに成り下がるでしょう。

挑戦と失敗を繰り返して、またとないチャンスを撮り逃した苦い経験を経て、自分だけの設定、自分だけの引き出し、自分だけの必殺技が生まれていきます。

絞り優先モードの扱いを面倒(S速度が決められないという意味で)だと感じたらそれは慣れてきた証。

いろんな被写体、いろんな環境を経験して、少しずつ修得していきましょう^^



以上で前後半に分かれた戦いは終了です。

少し難しく感じた方もいらっしゃるかもしれません。

今日の記事をフムフム読めた方は立派に中級者です。


理屈っぽく散々に書きましたが

Mモードは楽しい!!!

これが結論です。笑



ということで今日はここまで。

またお会いしましょう^^


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