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私と痴漢

分かりやすい痴漢なんて居ない①


「痴漢」と聞くと

「満員電車の中でスカートを履いた女性」

が被害者になりやすいと思われるだろう。


それだけじゃないんだよ。


私は気が小さく

人に迷惑をかけるのを恐れて生きて来た。


故に「気のせいだ」「思い過ごしだ」と考え

傷ついた自分を見て見ぬフリしていた。

でもやはり傷は消えないのだ。

多分何をしても消えない。


でも何かせずにはいられない。

だからここに書き記すことにした。


「分かりやすい痴漢なんて居ない」


事実。

私が遭遇した痴漢達は

その場で「痴漢なの???」と思わせるヤツらばかりだった。


覚えている中で1番古い物は

20年くらい前だろう。


仕事の飲み会の帰りか何かで

人が2~3人しか車両にいない

最終電車に乗っていた。


その時の自分の服装はハッキリ覚えていないけれど

決してミニスカートでも露出度の高い服でも無かった。


席は車両の1番端。


目の前の座席にも

ひとつ隣の座席にも

その向かいの座席にも

人はいなかった。


私は乗り物に弱いので

何かに乗る時は必ず目を瞑る。


眠ってしまうこともあるけれど

基本的に意識はある。


その日もそうだった。


途中の駅で隣に誰かが乗って来た。


「こんなに席が空いてるのに変なの」


それまで痴漢に遭ったことの無かった私は

その時はそう思っていた。


しかししばらくすると。





・・・・・脇腹に違和感がある。




もぞもぞと何か動いている。



驚いてパッと顔を上げる。


隣にはスーツを着た小太りのオッサンが

腕を組んで座っていた。


「え???何????」


何が起きたか分からなかった私。


気のせいかと思い

また同じように目を閉じる。





またすぐに脇腹に違和感。

先ほどと同じ感覚。


またパッと顔を上げる。


その時横を意識すると

隣のオッサンが姿勢を正すような仕草をしていた。




「・・・・・・・・・・・触られてる・・・・・???????」



2度目で分かった。



オッサンは組んだ腕の下から手を出し

私の脇腹を触っているのだ。


私が眠っていると思って。


しかも私の膝には荷物が乗っている。

周りからオッサンの手は見えない。

(周りに人居ないんだけど)


「・・・・・・・・・・怖い・・・・・・・・・・」



気付いてしまうと恐怖しか無い。


何でこんなに席が空いているのに隣に座ったの??

何で私の脇腹触ってるの??

え??本当は鞄が目的??

財布狙ってるの??

痴漢なの??







そんなんどっちでもいい。

どうでもいい。


離れればいいのだ。


そう。

離れれば・・・・・・・






しかし私はそれができなかった。



恐怖と戸惑いの中で

「もし違ったら?」

「私の勘違いだったら?」

「自意識過剰だと思われない?」

「この人に失礼じゃない?」

そう考えていた。



阿保か。




今の自分だったら

ソッコーで睨みつけて別の席へ移る。


当時の私はそれができなかった。


何度も何度も

目を瞑っては触られ。

目を瞑っては触られ。


同じことをぐるぐるぐるぐる考えているうちに

男性は降りていった。



怖くて怖くて。

痴漢だったのかなんなのか分からなくて。

混乱して。

誰にも話せなくて。


席を移らなかった事を後悔して。

声を出さなかったことを後悔して。

自分の情けなさに後悔して。


悔しくて悔しくて仕方なかった。



これが記憶にある初めての被害。

自分が被害者になるなんて誰も考えないことだと思う。


「自衛してない被害者も悪い」

そう言うけれど。


「女である」というだけで

組み敷かれてしまう可能性と隣り合わせだと思いながら生きていくのは

地獄でしかないという事を分かってほしい。

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