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2023年5月5日に発生した震度6強の珠洲地震について(報告)

地震発生から丸2日が経ち、ようやくご報告できる状態まで落ち着きましたので、現在の状況をご説明します。
地震直後から休館することなく、元気に営業をしておりますが、一部制限をさせていただいている部分もあります。
ご心配、ご迷惑をおかけした皆様には心よりお詫び申し上げます。

(14:42)震度6強の地震発生

2023年5月5日 14時42分、震度6強の地震が珠洲市で発生しました。
小さな揺れを感じ、そこから大きく長い縦揺れが30秒ほど続き、座り込んでしまうくらいの大きな揺れ方でした。
2022年6月19日に震度6弱の地震をホテルで経験していましたが、前よりもひどいことになりそうだと、座り込みながら感じていました。
前回の経験を活かし、従業員によるお客様に被害がないかの確認に動きました。
1Fロビー・売店は大きなガラスが2枚割れ、最初に発した言葉は「また?!」でした。
実は昨年の震度6弱の地震でも割れたのでした。
幸い、どちらもチェックイン前で売店にもロビーにもお客様はいらっしゃらず、営業中の大浴場にもお客様がいらっしゃいませんでした。
すぐに客室階にスタッフが走り、滞在中のお客様の安全を確認しました。

前回もテラスに破片が飛びました。
屋内に飛んだらと思うとゾッとします。
どういう風な圧力がかかったのだろう。

(15:00〜21:00)当日の営業について

客室の状況は「電気スタンドが倒れる」「湯呑みが割れる」「トイレのタンクから水が出てしまっている」という状態で、すぐに使えるようスタッフが掃除と点検に走りました。
エレベーターが停まり、ガスが停まっていました。(安全装置が働いたものです)
エレベーター会社さんは七尾にあるので、すぐに向かってもらっても2時間以上はかかるため、非常階段を使うことに。
ガス会社さんはすぐにきてくれましたが、配管に問題がないか確認に時間がかかるので復旧は難しいかもしれない(結局21:00頃にはガスが復旧しお湯は出ました!)と言われ、この時点でお湯が出ない案内をしなければなりませんでした。

チェックイン時間になり、ご来館いただいたお客様にはお部屋を再点検している事情を説明し少しお待ちいただくことに。
結局チェックインを再開できたのは17:00頃で、客室の復旧に18:00過ぎまでかかったお部屋もあり、かなりのご迷惑をおかけしてしましました。

全てのお客様にお湯が出ないのでお風呂が使えない、エレベーターが停まっている事情をご説明し、半額料金でお停まりいただくことを決断。
お詫びして、ご理解いただいたお客様のみでお部屋のご提供を始めました。
本来は機器の故障の場合、別のお宿に振替なければならないところでしたが、市内の状況も分からず、銭湯の営業状況も不明だったため、お詫び申し上げました。
同時進行で、本日ご予約をいただいているお客様全員にお電話を差し上げて、キャンセル料は無料にしますがいかがいたしますか?とお聞きし、半数以上がキャンセルしますとおっしゃいました。
GWで満室状態だったため、この日の売り上げは予定の5分の1くらいになってしまいますが、市内の道路状況も分からないためお客様の判断にお任せすることに。

お湯が出ないので大浴場の利用も中止させていただきました。
特に外来入浴は、不特定多数の方が使われるので、安全や何か事故が起きた際にお客様の把握ができないため地震の際はお湯が出たとしてもすぐに中止しています。

スポーツクラブも器具が倒れ、プールの水が揺れで溢れ出し、臨時休業にしました。怪我をされる方がいらっしゃらなかったことにスタッフ一同安堵しました。
後日、スポーツクラブのスタッフの対応がとても落ち着いていてよかったとお褒めの言葉をいただき、こんな有事の際でもお心遣いしていただき、会員様に感謝しております。

レストランは棚が倒れ、食器類も割れ、お飲み物もご提供できるか不明な状態でしたが、ご夕食のご予約を多数いただいていたため、準備に動き出しました。
通常オープンは18:00でしたが、19:00頃の再開をご案内し、お飲み物のご提供も出来、お客様には大変お待たせしたことをお詫びしてご利用をしていただきました。

エレベーターは4時間後くらいに復旧しましたが(すみません、かなりバタバタしていて時間を覚えていません)お客様の中には余震があってまた停まったら怖いのでと階段を使う方が多く、こちらでもそのような案内をしました。

当日は最終的に「大浴場の営業中止」「スポーツクラブの臨時休館」のみで、その他は時間通りのオープンは出来ないながらも営業をさせていただきました。
お客様に何度もいろいろなお詫びを申し上げ、多くの方が私共にも気遣っていただき、十分なおもてなしが出来ない申し訳ない気持ちと、せっかくのご旅行を台無しにしてしまったという気持ちで心が苦しかったです。
深く頭を下げた際に「あなたのせいじゃなく、地震のせいだから」と言ってくださったお客様のお言葉に、涙が出そうになったのをぐっとこらえました。

(21:58)震度5強の余震発生

スタッフも近隣住民が多く、地震発生時すぐに家族と連絡を取り無事を確認しながら、家の状況がどうなっているか分からない状態で働き続けてもらったため、帰れるものは帰ってもらいました。
そんな中で、2度目の地震が発生しました。
最初の地震でヒビが入っていたレストランの窓ガラスが割れました。
一度家に帰ったスタッフも再集合し、再度安全確認に走りました。
客室フロアに走った際、お客様が廊下にお出になっていらっしゃったので、出来るお部屋から不具合等を確認し、夜分遅かったのでお申し出をいただいたお部屋から順番に対応し、最後の対応は23:00過ぎになってしまい、再度お客様にはご不便をおかけしてしまいました。
スタッフも深夜遅くまで対応してくれ、支配人とマネージャーが泊まり込みで業務を行いました。
この日は眠れない夜になりました。

(翌朝7:00以降)翌日以降の営業について

朝食は通常営業を行いました。
朝食付きではないお客様の中には、朝食を確保できなかった方もいらっしゃるかもしれないと思ったので、無料提供を開始しました。
GWで満室だったため、用意した食材も大量廃棄になってしまいました。
チェックアウトのお客様に深く頭を下げ、十分なおもてなしが出来なかったことをお詫びしながら、本当に人的被害がなくてよかったと今更ながら手が震えてきました。
「また落ち着いたら絶対来るので、頑張ってくださいね!」「ある意味一生の思い出になりました」「この建物は頑丈なので安心して眠れました」など嬉しいお言葉をかけてくださる方もいらっしゃって、皆様珠洲を嫌いにならないでほしいなと思いました。
「GWの日記の宿題があるので、地震のこと書きます」と言ってくれた小学生のお客様には、嫌な思い出にならないでほしいなと心より思いました。

朝からマスコミ取材が殺到しました。
最初は支配人が取材対応する予定でしたが、スポーツクラブからの水漏れが止まないため、配管の故障ではないかと業者さんに対応を始めてもらい、スタッフも集まって下の階に浸水しないよう対応を行っていたので、個別インタビューは中止させていただきました。
被災箇所を自由に撮影してくださいとお願いしましたが、被災内容の質問は必ず発生してしまうので、結局1日の中で長時間対応することになりました。
一日中ずっと同じ話を繰り返していて喉が枯れてしまったので、次回(ないことを願いますが!)は紙を用意し、これを読んでくださいと渡そうかと思うなど。

パートさん達が被災している方も多く、体力的にも精神的にも出てこれない方もいらっしゃったので、本日の客室清掃が間に合うかと不安になりましたが、遅くなるけどちょっとだけ手伝いに来ると言ってくださったパートさんが集まってくれて、なんとか通常営業ができる算段が午前中に出来ました。
スタッフの中には自宅がひどい状態にもかかわらず、仕事を優先してくれる方も多く、良い仲間に恵まれています。

宿泊も通常営業を再開し、お客様を無事にお迎えすることができました。

市内には被災した方も多く、大浴場の利用を再開したいと思い、掃除を行い、17:00には営業を再開することができました。
一旦宿泊者様と珠洲市民の方限定で営業を行いました。

ロビーの窓ガラスのブルーシートでの養生や、喫煙スペースでの灰皿の破損、当日は気づかなかったさまざまな破損したものをひとつひとつ対応しているうちに、その日は気づいたら夜といった状態でしたが、無事にお客様をお迎えでき、スポーツクラブ以外は通常営業を行うことができたので、ほっとしました。
売店の商品の安全確認と営業再開は、手が回らず翌々日の朝になってしまいましたが、本日までにお客様が入られないバックヤード以外は、問題なく通常営業をしている状態です。

窓ガラスの修理にはおそらく時間がかかるので、しばらくはこのような状態で営業します。

駐車場や入口、テラスに一部破損が見られます。躓かないようお気をつけください。

タイルが浮いています。こういった箇所が多数です。
駐車場の歩道が陥没しているところも。

お詫び

地震発生後、当日宿泊いただくお客様を優先させていただくため、お電話がかなり鳴りましたが取ることができないものもあり、つながりにくい状況になったことをお詫び申し上げます。
特にマスコミ電話取材をお断りする際に、失礼に感じされた方もいらっしゃったのではないかと心配しております。
いつも通りの対応を心がけたつもりですが、今振り返ると目の前に不安な状態でお待たせしているお客様がいらっしゃる中で、なかなかお電話を切ってくださらない焦りで対応があまり良くなかったかもしれません。
そんな中でも、すぐ私共の状況を察して電話を切ってくださったTV局さんも多数ありました。ご配慮に心より御礼申し上げます。
地震発生当日に、宿泊を検討しているというお客様から、どんな状況ですかと電話をいただいた際も、わかる限りでお答えさせていただきましたが、私共も地震発生からホテルを一歩も出れておらず、ニュースなども見ていないので曖昧なお答えになってしまったことと、長くお話しできないとお答えしてしまったことをお詫び申し上げます。
市内の状況がわからなかったので、外出されたお客様に偵察してきてください!なんてお願いしてしまったりもしました。
皆様とても親切にいろいろ教えてくださいましたが、本来は情報を集めてご提供するのが仕事なのに・・・と今思うとお恥ずかしい限りです。
パニックにならないよう冷静さを心がけていましたが、時間が経つにつれてクオリティが低下した気もします。
頑張ったんですけど、なんてプロとしていってはいけない言い訳です。
お客様どうお感じになったかが全てなので、この期間にお電話対応や接客対応でご不満に思われたお客様がいらっしゃったら、心よりお詫び申し上げます。

個人的な余談

このブログを書いているのは、地震発生から57時間を経過した5月7日23:00です。
実は私(執筆者、ホテルマネージャー)は正院に住んでいて、今回1番被害がひどい地域で、自宅は赤い紙(倒壊の危険性があるというしるし)が貼られています。
57時間のうち、家に帰ったのは合計3時間くらいで、現地の状況をお伝えできる状態ではありませんが、どこのお家も何かしらの被害を受けているといった様子です。
さっき一瞬家に帰ったら、2階建ての1階の天井が剥がれ落ち、空がみえて雨を浴びれるほどの状態でした。

この張り紙の裏の部屋で父がくつろいでいて、ちょっと笑っちゃいました。
「危険」と言われても、生活もあるからなぁ。
築100年の古民家なので、基礎が歪んで家が真っ二つに割れていました。

1時間ほどしか家にはいられませんでしたが、両親の嘆きを聞きながら、これだけ話せるということは元気だなと思いました。
ホテルでも、被災されて大浴場を利用しにこられた地元の方などに大変でしたねとお話ししましたが、皆様いろいろしんどいこともおありのはずなのに「天災はしかたがないからね」「生きててよかったね」「頑張ろうね」と声をかけてくださって、地元の方は皆様強く頑張っています。
今は是非珠洲に遊びにきてください!なんていったら、誰かに不謹慎だと言われそうで躊躇しますが、珠洲はいいところです。
どんなことがあっても、人も、風景も、何も変わりません。
是非珠洲のことを忘れずに思っていただいて、いつかお越しいただければ幸いです。
一部故障した部屋を修理したら、インターネットにてご予約を再開します。
その時は問題なく泊まれるという意味ですので、遠慮せずにご予約ください。
お客様を通常通り、笑顔でお迎えできるのを楽しみにお待ち申し上げております。

夏までには余震も落ち着いて、観光のお客様を多数お迎えできれば嬉しいです。
変わらず綺麗な鉢ヶ崎海岸を添えて。
大好きな生まれ育った正院。
まだ近所の様子を見に行くことすら叶いませんが、多分、きっと大丈夫。
私たちは頑張れる。

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