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珠洲群発地震から3週間経ちました(被災者の個人的なブログ)

今回は個人的なブログになります。
2023年5月5日に発生した地震で、生まれ育った町内が1番被害が深刻な地域とされ、私の家は「危険(倒壊の恐れあり)」と判定されました。
地震発生から3週間以上経ち、いろんな方と話しました。
そんな珠洲の現状をお話しします。

危険認定された家

地震が発生してから、家が大変なことになってるっぽいぞということは把握していましたが、ホテルもさまざまな対応があり、家に帰れず仕事を続けました。
4日後ようやく家に帰れましたが、片付ける気力もなく、この期間不足した睡眠を取り、ようやく本当に大変なことになっていると理解したのは、5日後でした。

知り合いに見てもらったら、家の基礎が機能しておらず余震が起きようが起きまいが倒壊寸前とのことで至急解体することになりました。
家には赤い紙を貼られ、「危険(倒壊の恐れあり)」とあっても、大丈夫だろうと正常バイアスがかかり、呑気にそこで生活していたのです。
正院町は赤紙だらけで、そこでみんなまだ生活を続けています。
「1番大丈夫そうな部屋(自己判断)で寝てる」「夜は車で寝てる」「外に飛び出せるよう玄関や倉庫で寝てる」などの声が聞こえてきます。

解体屋さんに連絡し、道路に面した家なので何かあったら大変なことになると説明し、出来るだけ早くお願いしたいと依頼。
幸いなことに、増築部分はおそらく大丈夫だろうと自己判断し、古い家の方を解体して大丈夫な方で生活をすることに。
インフラ関係を全て連絡し調整しなければならないので、各所に電話で状況を説明し、至急で対応を依頼しました。
同時進行で、家から荷物を全て運び出す作業。
私は仕事もしなければならないので(この時点ではまだホテルも不具合が生じたりしていて、現場を離れることが出来ず)行ったり来たりしながら、週末には親戚や友達、ご近所さんも総出で手伝ってくれて、なんとか進めることができました。

大きく歪んだ家。ブロックは上から押しつぶされています。
目の錯覚ではなく、見てわかるくらい歪んだ柱。
家がまっぷたつに裂けました。
耐えきれず床が抜けるところも多数。

正院町の現状

荷物の運び出しの目処が着いたので、町内の友達の家に差し入れでもと向かった際に、正院町がひどく被災していることを知りました。
会う人が口々に「正院は大変らしい」とは言っているのを聞いていて、なんとなくはわかっていたのですが、何件も倒壊している家があり、ぎりぎり持ち堪えている家も多数、目に見える様に歪み、ちょっと押したら倒れそうに見える、私の家と同じ状況の家が多数ありました。
目線の高さに屋根が、斜めに傾いた家が、崩れ落ちた鳥居が、小さな頃から見慣れた場所が全てが変わってしまっていることに、ようやく気付いたのです。
家と会社の往復を続け、全体を見る余裕ができたのは1週間後でした。
本来は現状を写真に収めて情報発信すべきだと思うのですが、知っている家が倒壊している現実を受け止めきれず、スマホを向けることもできませんでした。
最初の1週間はやらなきゃ!で動けるのですが、だんだん体も心も疲弊してきます。

神社の鳥居は撤去されており、すっかり風景が変わっていました。
お寺の鐘撞堂が倒壊し、墓石もふっとんでいました。

ありがたかったこと

最初いろんな人から、インフラは大丈夫か、水や食料を送るかと聞かれましたが、幸いなことに今回の地震では主要道路に破損は少なく、物流が止まることがなかったため。食料に困ることはありませんでした。
水は一時断水しましたが、修理業者さんが早急に復旧してくれたり、すぐに給水車が来たりと問題なく利用できました。
被災直後にいろんな方から差し入れもいただき、レトルト食品やカップラーメン、果物や栄養ドリンクが我が家に届きました。
手軽に栄養が取れるものが、すごく助かりました。

ニュースはほとんど見れていませんでした。
市内がどうなっているかの情報収集はほとんど、お客様から教えていただきました。
TV局がYoutubeにアップしてくださっていたのも、遅れて情報収集ができて有り難かったです。
SNSからの情報収集も、間違った情報があったり中傷があったりすることを承知の上で活用しました。
小さな田舎町で、死者は1名という現状から、ニュースやSNSはすぐに日常に戻っていったため、取り残された気持ちになったので後半は見ていません。

親戚や友人がすぐに手伝いに来てくれて、とても助かりました。
どの地域も多少なりとも被災しているので、自ら助けを求めることが出来ませんでした。
聞かれると反射的に「大丈夫!」と言ってしまうのです。
余震もある中、危険な家に入ってもらって何かあったら怖いので、市外の友達からも手伝いを申し出ていただきましたがお断りしました。
心を寄せていただいていることが分かるだけで安心しました。

ボランティアを必要とする人はたくさんいると思いますが、助けてほしいと声を上げる人は少ないかもしれません。
人に迷惑をかけない生き方をしてきた強い土地です。
私も自宅が落ち着いたらボランティアに行きたいと思います。
話を聞いてもらうだけでも、心を寄せてもらうだけでも有り難く感じます。

これからの不安

震災から3週間経ち、震災疲れが目立ちます。
体力的にはもちろん、精神的にも。
相手に悪気はなく、むしろ労ってくれているのは分かっているのに、些細な言葉に傷ついたり心が疲れたりする人も見受けられます。

高齢者ばかりの地域なので、家を今後どうするかで判断が出来なくなっている人も多いです。
珠洲で生まれ育ち、ずっと家族代々家を守ってきて、その守ってきたものが崩れ落ちる寸前になっているのです。
私は一度珠洲を離れ、珠洲が好きで戻ってきたのでずっと家にいるわけではないのですが、そんな私でさえ片付けをしながらこの家を守れなくて申し訳ないという気持ちになりました。
上の世代の方々はもっと心にくるものがあると思います。
珠洲を離れた人からしたら、危ないんだから離れなさいと思うかもしれませんが、本人達に時間をかけてゆっくり考えさせてあげてほしいです。
私達はあなた達が思う以上に、昔から支えあって生きています。
今日もご近所さんの笑い声が聞こえます。
それが今、1番の救いの様に感じます。

珠洲には若い世代が少なく、その世代が今復興に向けて仕事を頑張っています。
家の片付けを後回しに、修理に回ったり、業務にあたったりという人が私も含めたくさんいます。
働き手世代が忙しく動いている中、高齢者の相談に乗ってくれる人が少ないことが気になっています。
健康面、家のこと、精神的なケアのこと。
徐々に体制が整ってくれればいいなと願っています。
誰も取り残されない地域であって欲しいです。
私が生まれた時からずっと声をかけてくれている人たちに、今度は私が声をかけなければと思っています。

お礼とお願い

ここまで私個人の本音を読んでいただき有難うございます。
普段から文章を書く人間ではないので、読みにくく感情的なものになってしまいました。
この段階で、観光に来てくださいと言いづらいです。
私個人(被災者の1人)としては、多くの方に珠洲市の被災状況を見てもらうのも大きな支援だと思っているのですが、余震のことを考えると大きな声では言えません。
あなたのタイミングで、いつか珠洲に来てくれると嬉しいです。
震災の影響でふるさと納税が増えていると聞きました。
珠洲ビーチホテルではチェックイン時にふるさと納税の手続きができ、その金券で宿泊代をお支払いできるシステムがあります。
クレジットカードがあれば申請できるので、よかったらご利用ください。

チェックイン時に、カウンターのタブレットで納税してもらうと、金券が発行されます。
クレジットカードにて支払いが必要です。
現金での納付は出来ません。
ご自身で操作できる方に限られます。

私達は歩みを止めず進みます。
心を寄せていてもらえれば有難いです。

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