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UCIワールドカップ2020-2021 最終戦「オーベレルエイセ」
シクロクロス3大シリーズ戦の1つ「UCIワールドカップ」の第5戦が、1/24(日)にベルギー・フラームス=ブラバント州の街オーベレルエイセを舞台に開催された。
「すべてのシクロクロスの母」とも呼ばれるらしく、アップダウンやコーナーリング、ドロップオフ、舗装路や石畳、担ぎ区間と乗車区間のバランスなど、総合力が問われるコース設計となっている。
女子レース
全部で5周。
しばらくは世界王者セイリン・アルバラード(アルペシン・フェニックス)、ルシンダ・ブラント(バロワーズ・トレック・ライオンズ)、デニーセ・ベツェマ(パウェルズ・サウゼンビンゴール)の現役最強格3名に加え昨日の「ハンメ」でも初の3大シリーズ戦表彰台を手に入れた若手のマノン・バッケル(クレディショップ・フリスタッズ)を加えた4名が中心となって先頭集団を形成しており、そこにアメリカ王者のこちらも若手クララ・ホンシンガーが追走を仕掛けている、そんな構図となっていた。
そして5周目。最終周回でアルバラードが抜け出すと、すでに総合優勝を決めているブラントはこれについていけない。
追走集団も各自バラバラに単独で追走するようになり、最終的にはセイリン・アルバラードがブラントを20秒突き放して前日「ハンメ」に続く連勝。年明け後は4戦中3勝とかなり絶好調で、この勢いのまま世界選手権に突っ込んだ場合、ブラントが余裕の優勝というわけにはいかなそうだ。
すでに総合優勝を決めているブラントが力を抜いていたというならまだわかるのだが・・・。
【UCIワールドカップ第5戦オーベレルエイセ 女子リザルト】
これにてUCIワールドカップ女子総合は決着。
総合優勝はルシンダ・ブラント。彼女にとって初の3大シリーズ戦総合優勝。そして今年はもしかしたらこの3大シリーズ戦すべてを制覇できる可能性もあり、まずはその第一歩、といったところだ。
【UCIワールドカップ最終総合成績(女子)】
昨年スーパープレステージュとDVVフェルゼクリンゲン・トロフェーを制したセイリン・アルバラードは2位。昨年ワールドカップ総合優勝のアンマリー・ウォルスト(777)はイマイチ調子を上げきれずの7位。
そしてU23カテゴリではカタ・ヴァスが5位で最高位。U23という枠組みだけでなく、エリートカテゴリの選手たちとも互角以上に渡り合い続けた、今後が楽しみすぎる存在である。
あとは1週間後の世界選手権がどうなるか。
無事ワールドカップを制したブラントではあるが、このアルバラードの上向きの調子を踏まえると、世界選手権本番がどうなってしまうのか、まったく予想がつかないところである。
男子レース
全部で8周。
総合成績を巡り、マチュー・ファンデルポール(アルペシン・フェニックス)が昨日の「ハンメ」のように勝利し、かつワウト・ファンアールト(チーム・ユンボ・ヴィズマ)が3位以下に沈んだ場合はファンデルポールが総合逆転優勝する、という状況で迎えたUCIワールドカップ最終戦。
そんな状態で本気度がいつも以上なのか、1周目からいきなりファンデルポールとファンアールトの2人が抜け出し、後続に圧倒的な差をつけ始める。今日の軍配がどちらに上がるのかはわからないまでも、少なくともこれでファンアールトの逆転敗北はなくなったように思われていた。
そして、2周目でファンデルポールが後輪をパンク。これでファンアールトから遅れ、2周目終了時点で二人のタイム差が11秒に。このあともファンデルポールはペースを取り戻せず、3周目中間時点ではそのタイム差が20秒に広がり、さらにファンデルポールの元に、後続から追い上げてきたトム・ピドコック(トリニティ・レーシング)とマイケル・ファントーレンハウト(パウェルズ・サウゼンビンゴール)とが追いついてくる(なお、エリ・イゼルビットは年末の怪我の状況で昨日のレースも最終的にイマイチだったこともあり、来週の世界選手権に向けて大事を取って本日は欠場)。
このあとも、ファンデルポールは細かなミスを連発し、集中力を欠いているような印象を受ける。最終的には最後の2周で2度の大きな落車を経験し、ファンアールトはファンデルポールに1分以上のタイム差をつけて圧勝。
パンクという不運、そしてミスによる敗北であると言えば聞こえはいい。
今年すでにファンデルポールがファンアールトに対して敗北している2戦も、パンクによるものと異様な泥のコンディションの中での絶不調によるものと見ることもできる。
「昨日のハンメを見ても分かるように、実力ではまだファンデルポールがファンアールトを上回っている」ということもできる。
しかし、過去に世界選手権でファンデルポールがファンアールトに敗北したときはやはりパンクや「彼らしくない」細かなミスの連発が原因だったりする。
果たしてそれは偶然と片付けるべきなのか? また気になるのは、パンクやミスが連発したときにファンデルポールが勝負を諦めるスピードの速さ、そこからの失速の度合いの大きさ。
諦めがいいといえばいい。次につなげるという意味を感じることはできる。しかし、前節「ハンメ」で勝敗はほぼ決しながらも最終的にファンデルポールとのタイム差を詰めていったファンアールトとの姿勢の違いを如実に感じる部分でもある。
フィジカルでは確かに、ファンデルポールがファンアールトを上回っているかもしれない。
だが、世界選手権本番がどうなるのか、まったく予想がつかなくなる、そんな今日のレースだった。
本日の結果をもって男子の方でも総合成績が確定。
ワウト・ファンアールトが自身3度目のUCIワールドカップ総合優勝、3大シリーズ戦自体では7度目の総合優勝を果たす。
【UCIワールドカップ最終総合成績(男子)】
絶望的な大怪我からの復活による昨年のロードレースでの大成功。
さらにプライベートにおいても、妻サラさんの出産を経験するなど、多忙ながらも精神的には充実する日々が、彼の力をより増しているように思われる。
「4度目の世界王者」はこのベルギーの若者にもたらされるのか。それともマチュー・ファンデルポールがそこに待ったをかけるのか。
本日トム・ピドコックも落車もあり十分な走りを見せられなかったことを受け、世界選手権ではほぼほぼこの2人による激突となるだろう。