X2Oバドカマー・トロフェー2020-2021 第5戦「バール(GPスヴェン・ネイス)」
シクロクロス3大シリーズ戦の1つ「X2Oバドカマー・トロフェー」の第5戦が、1/1(金)にベルギー・フラームス=ブラバント州の街バールを舞台に開催された。
このバールはシクロクロス界最強の男スヴェン・ネイスの本拠地とも言える場所で、このレースも「GPスヴェン・ネイス」という別名で呼ばれている。毎年1/1に開催されている恒例のレースだ。
天気は晴れだが、路面は凍結が溶けて緩んだマッドコンディション。男女ともに有力勢が揃う激戦となった。
女子レース
今回は4周。
今年最強とも言うべき3名、すなわちルシンダ・ブラント(バロワーズ・トレック・ライオンズ)とセイリン・アルバラード(アルペシン・フェニックス)、そしてデニーセ・ベツェマ(パウェルズ・サウゼンビンゴール)が先行してレース全体を支配する。
その中でもやはり強いのがブラントとアルバラード。最終周回でベツェマを突き放し、2人だけの勝負となる。
今期ここまでの戦績では大半でブラントが一歩上手。この日も、アルバラードが得意の区間で突き放しても、その直後にブラントが力で追いついてくるなど、やはり彼女には勝てないのか・・・と思わされていた。
だが、最終盤。アルバラードが一気にアクセルを踏んで加速。ブラントも当然ここに食らいつくかと思っていたが――最後の最後で、わずかに開いた隙間が、埋まらない。
昨年の絶好調から一転して苦しい状況に立たされていた22歳の世界王者が、この日は執念を見せて勝利を掴み取った。
まさに世界王者の意地。このままでは、ブラントに3大シリーズ戦総なめに加えて世界王者まで奪われかねないという中で、まだまだそう簡単にはいかせないというところを見せてくれた。
【X2Oトロフェー第5戦バール 女子リザルト】
タイム差で争う総合成績ではアルバラードはすでに戦線離脱しているため、この日はブラントがベツェマとのタイム差をさらに広げ、総合優勝に向けて着実に駒を進める結果となった。
【X2Oトロフェー女子 第5戦までの総合リザルト】
X2Oトロフェーは残り2戦。ほぼほぼブラントの総合優勝は揺るがない結果となるだろう。
男子レース
男子は7周。
注目が集まったのは、5日前のヒュースデン=ゾルダーで落車して左肘を脱臼したエリ・イゼルビット(パウェルズ・サウゼンビンゴール)の状況。
彼が欠場すればタイムペナルティ5分が加算され、さすがに総合優勝は厳しくなるだろう、と予想されていた中で、なんと彼は出場を決定。
それでもまずは完走することが第一。失うであろうタイムを最小限に抑えることができれば御の字、と思っていたのだが・・・。
蓋を開けてみれば、序盤からハイペースで突き進むマチュー・ファンデルポール(アルペシン・フェニックス)、ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィズマ)、トム・ピドコック(トリニティ・レーシング)の現役最強トリオに食らいつく走りを見せるイゼルビット。
さすがにシケインでのバニーホップは自粛したようだが、それ以外の部分では肘の痛みを全く感じさせないような走りを見せ続ける。
5周目にファンデルポールがアクセルを踏んで独走を開始すると先頭集団もバラバラになり、5周目終了時点ではイゼルビットはファンデルポールから17秒遅れと突き放されていくが、最後まで4番手の座を失うことなくフィニッシュし、直接のライバルたるコルネ・ファンケッセル(トルマンス・シクロクロスチーム)やマイケル・ファントーレンハウト(パウェルズ・サウゼンビンゴール)、トーン・アールツ(バロワーズ・トレック・ライオンズ)たちからは逆にタイムを奪う結果となり、総合首位の座を盤石なものとした。
先頭は独走を続けるファンデルポール。それを追いかけるピドコックは、ここ最近の不調から完全に脱したような強い走りを見せ続けたが、5周目の終了時点で5秒、6周目の終了時点で20秒と、確実に突き放されていく。
逆にファンデルポール独走開始時点ではピドコックからも遅れイゼルビットと共に走っていたファンアールトも、6周目からはペースを取り戻し、やがて失速したピドコックを追い抜く。
着実にファンデルポールとのタイム差を縮めていったものの、最終的には届かず。今期マチュー・ファンデルポールとの対決は2勝3敗と負け越す形となった。
【X2Oトロフェー第5戦バール 男子リザルト】
もちろん、ファンデルポールもファンアールトも基本的にはすでに総合争いから脱落している。
総合争いにおいてはイゼルビットが欠場の危機を乗り越えて逆にタイム差でリードを得たことで、総合2位とのタイム差は3分半に。
【X2Oトロフェー男子 第5戦までの総合リザルト】
残り3戦あるとはいえ、怪我の悪化など大きな問題が発生しない限り、イゼルビットの総合優勝は盤石なものとなったように思える。
また、前節まで総合2位だったファンデルハールは大失速。ファントーレンハウト、アールツにも抜かれ、表彰台圏外に。
ここはまだ残り3戦でいかようにも逆転可能な範囲ではあるが、この2人は今期も強さを見せているだけに、ファンデルハールにとっては苦しい展開となっている。
次回は1/3(日)のUCIワールドカップ第4戦「フルスト」。
X2Oバドカマー・トロフェーの次節第6戦は1/23(土)の「ハンメ」となる。