スーパープレステージ2020-2021 第6戦 ガーフェレ
シクロクロス3大シリーズ戦の1つ「スーパープレステージ」の第6戦が、12/13(日)にベルギー・オーストフランデレン州の街ガーフェレを舞台に開催された。
郊外の森の中を駆け巡るコースは起伏に富んでおり、その路面の大部分がスリッピーな泥で覆われていたため、登りでも下りでもシビアなバイクコントロールが要求された。
さらに粘着質な重い泥が常にバイクに付着するコンディションゆえに、1周回に2箇所設置されたバイク交換エリア(ピット)に毎回、少なくとも1周に1回は入らないとまともに走れない状況で、ここでの選択が勝敗に影響を及ぼしうる状態であった。
※女子レースは観られていないので今回は省略(後から追加するかもしれません)
男子レース
全部で8周。
ホールショットはクエンティン・ヘルマンス(トルマンス・シクロクロスチーム)が取り、その後はベルギー王者のローレンス・スウィーク(パウェルス・サウザンビンゴール)が先頭を奪うが、このスウィークが序盤に足を取られて転倒。
その隙にマチュー・ファンデルポール(アルペシン・フェニックス)が先頭に出て、その後ろにヘルマンス、コルネ・ファンケッセル(トルマンス・シクロクロスチーム)、そしてトム・ピドコック(トリニティ・レーシング)が続き、前日の「アントウェルペン」でファンデルポールに食らいついたヨーロッパ王者エリ・イゼルビット(パウェルス・サウザンビンゴール)は後続集団に取り残されてしまった。
1周目の後半にファンデルポールがバイク交換をしている間に単独で前に抜け出したピドコックが独走を開始。1周目はファンデルポールに5秒のリードを得て先行する形となった。
2周目の前半にピドコックもバイク交換し、その隙にピドコックの背後にファンデルポールが迫る。
2周目の後半にファンデルポールが再びバイク交換し、ピドコックはここでバイク交換しないことを選んだためまた独走が始まるかと思いきや、泥を吸ったバイクのあまりの重さにそこまでリードを稼ぐことはできず、この日の路面コンディションの難しさを思い知らされた。
後ろから追いついてきた元ベルギー王者トーン・アールツ(テレネット・バロワーズライオン)とも合流し、先頭はしばらくはこの3名(ピドコック、ファンデルポール、アールツ)が付かず離れずで推移することとなる。
とにかくひどい粘性の泥。ひと踏みひと踏みにパワーを要するこの路面コンディションの中、早くもマチュー・ファンデルポールの表情に疲れのようなものが見え隠れする。一方、若き世界選手権銀メダリストは、軽快に泥まみれのバイクを転がしていく。
それでも5周目に入ると再び集中力を取り戻したかのように見えるファンデルポールが一気にペースを上げる。
思わずアールツは振り落とされ、ピドコックもかろうじて食らいついていくが、ときおり危険なギャップが生まれる。
このままファンデルポールが復帰即2連勝となるか?
と思ったところで、6周目。最後から3周目の周回。
ここでピドコックが前に出て、ペースを上げていく。当然ファンデルポールもここに食らいつこうとするが、スリッピーな泥にグリップが効かず、失速。その隙に、ピドコックがするすると抜け出して独走を開始した。
まさに一瞬の出来事であった。そして抜け出した小さな天才はそのまま、ファンデルポールの追撃をものともせず、むしろそのタイム差を引き離しにかかる。
ファンデルポールが力尽きたか? さすがに復帰初戦で力を使い過ぎてしまった結果、この日のハードなレースに耐えきれなかったのか?
彼らしくないミスを何度か見せるその姿からは、そういう面もあるようにも思えたものの、それでもファンデルポールと単独3番手のトーン・アールツとのタイム差は縮まるどころかむしろ開いていきつつあることを考えると、ファンデルポールの調子が悪いのではなく、ただひたすらにピドコックの調子が良いと捉えた方が適切に感じる。
そして、フィニッシュゲートにピドコックの姿が現れる。最終ストレート。その表情には早くも笑顔。振り向き、コーナーの先からファンデルポールの姿が出てこないことを悟った彼は、信じられないというように顔を振るわせ、そしてフィニッシュした。
そこから25秒遅れてマチュー・ファンデルポールがフィニッシュ。
ほとんど見かけることのないような、項垂れた姿でのフィニッシュとなった。
【スーパープレステージ第6戦ガーフェレ 男子リザルト】
まさかの展開。
改めて、決してマチューが「不調」だったわけではない。
さすがに昨年の最も調子の良いときと比べればまだまだ本来の力には到達していないだろうが、それでもこの日も3位以下をしっかりと突き放していることを考えれば、それをさらに力でねじ伏せたピドコックこそが信じられないような力を発揮したと見るのが正しいだろう。
トム・ピドコック。昨年の世界選手権2位も驚きだったが、いよいよ世界の頂点にたどり着くときが迫っているということか。
来年のロードレースエリートへの参戦もまた、非常に楽しみになってくる。
【スーパープレステージ男子 第6戦までの総合リザルト】
ファンデルポールもピドコックも総合争いには絡んでいないため、この日は3位のトーン・アールツが4位のイゼルビットとの総合ポイント差を4ポイントにまで縮める結果となった。
また、3位~6位の中段争いが白熱化。3位と4位のファントールノールトがスウィークが順位を入れ替えたほか、5位ファンデルハールが4位スウィークに1ポイント差にまで迫っている。前節で1ポイント差だった6位ファンケッセルは突き放される格好に。
スーパープレステージも早くもあと2戦。
総合優勝を巡るイゼルビットとアールツの激戦は最後の最後までわからない。
次回の3大シリーズ戦は⇒12/20(日) UCIワールドカップ第2戦「ナミュール」
次回のスーパープレステージは⇒12/26(土) 「ヒュースデン・ゾルダー」
【参考:この後の3大シリーズ戦スケジュール】
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