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【エッセイ】取ってよかった資格「運転免許」

 新年度、会社に提出する履歴書のような書類に「所持している資格」を書く欄があった。恥ずかしいことに堂々と書ける資格がない。「ヤマハ指導グレード5級」「秘書検定準1級」「手話技能検定3級」など、資格は持っているものの、実際のところピアノは10年近くのブランクがあり弾けなくなっているし、秘書でもないし、手話を使えるわけではない。

資格を取る勉強をしている時は「仕事にできるといいな」「持っている人多くないからいいかも」などと夢見て、自分なりに頑張った。けれども人生そんなに甘くはなく、今は資格とは全く関係ない仕事をしている。

しかしながら、唯一役に立っている資格(免許)が「普通自動車運転免許」である。18才の時に取った。私の実家の周辺は車がないと生活ができないくらいの田舎なので、16才になると原付をとり、高校3年生で進路が決まると自動車学校に通いだし、18才の誕生日を迎えて免許センターに学科試験を受けに行くことがパターン化している。都会暮らしの人には驚かれるかもしれない。

自動車学校に通っていた時は、「運転したい気持ち」と「運転が怖い気持ち」が半々だった。教習は嫌ではなかったが、免許を取ったら教官が横に着くわけではない。事故を起こしてしまったらどうしよう…と不安も大きかった。

しかし、そんなことも言ってられず、恐る恐る運転を始めた。それからは事故に遭うなど怖い目にあったこともあるし、運転したくないと思ったこともある。

そのおかげか、会社では通勤や社用車の運転、家では買い物、送迎と、車をフル活用した生活を送っている。ドライブが趣味のひとつだし、取材も車で行くことがほとんどなので車がない生活が想像がつかないくらいだ。

車の維持費は決して安くはないが、生活必需品なので「趣味」と割り切っているところもある。また、事故への不安や恐れはなくなることはないので、気を引き締めて運転している。長距離はところどころに休憩をはさむようにしている。

けれども車のおかげで、自分の世界が広がった気がする。田舎育ちで仕方なく取った車の免許だったが、取って良かったと思える資格である。