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【エッセイ】短い夏の終わりに

夕飯を食べ片付けた後、リビングで涼んでいた。サッシを網戸にして、扇風機をかける。さっきまで冷房をつけていたが、寒くなって消してしまった。

外からは、秋の虫の声が響いてくる。東北の夏は短い、とつくづく思う。夏が終わると、秋は仕事の繁忙期で忙しくなるし、冬は寒いのが苦手だし、雪かきも憂鬱だなぁ。できればこのまま季節が夏で止まってほしいくらいだ。短い夏を惜しまずにはいられない。

北国特有の感情なのかもしれない。

そんなことを思いながらボーッとしていると、「ドン!ドン!」という地鳴りのような音が数発響いた。ベランダに出ると、花火が見えた。ピンクだったり、ブルーだったり暗い夜空に鮮やかな花を咲かせていた。

我が家は郊外にあり、明かりが少ない。おまけにベランダからは見渡せる風景は山に抱かれた住宅地。高い建物がなく、背景が山なものだから花火がよく見えた。

最初は「素敵~」なんて思いながら見ていたものの、なぜか気持ちが盛り上がらない。真夏の暑い中で花火を見るのとは違い、テンションが上がらないのだ。

あんなにも色鮮やかに(田舎の)空を彩っている花火、カラフルでとても美しいのになぜ?!目をそらしたくなるんだろうか。

きっと…「もう夏は終わり」と告げられたような気分になったからだと思う。

お盆を過ぎて吹く風に秋を感じていたのに、私は夏が終わるのを認めたくなかったのかもしれない。

花火が終わった後、切ないようなさみしいような気持ちになった。窓の外からは涼しい風が吹いてきた。季節は一歩ずつ秋へと進んでいる東北だ。