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【エッセイ】検査食でマイベストクラッカーに出会う

明日、検査を受ける。
前日の食事は検査食のみと病院で言われていた。

内容は、朝は鮭がゆ、昼も鮭がゆとわずかな量の肉じゃが、夜はクリームシチューとクラッカー。一日で合計700カロリーほど。

検査食のキットを受け取ったとき、真っ先にカロリーに目がいった。そして普段の1食分を3食に分けて食べるのか、毎日食べてる甘いチョコレートや塩味がきいたせんべいを食べられないのかと思うと愕然とし、検査を受けるのが嫌になってきた。切羽詰まって症状が出てないし、受けなくてもいいのでは…なんて楽な方向に流されそうになった。

いよいよ検査前日。検査食オンリーの日を迎えた。
検査食以外を食べられないと思うと、「楽しみは食べること」であるわたしは、朝から鬱々としていた。カーテンを開けると灰色の雲で暗く、雪が舞う寒さだった。まるで気持ちを表しているかのよう。

そんな1日のはじまりだったが、実際に検査食を三食食べてみると「美味しい」と感じた。鮭がゆは優しさを感じる味で満たされたし、肉じゃがやシチューも食べ応えがある味。肉じゃがは甘じょっぱくて白ご飯にピッタリだろう。シチューは大好物の鶏肉が入っていて嬉しい。思わずおかわりしたくなった。

そしてわたしが特に美味しいと思ったのが、夕食のクラッカーだった。正方形の薄焼きのものである。実はシチューを温めている間に空腹がおさえきれずに、1枚食べてしまった。

薄焼きのサクサク感は、焼きたてのクリスピーピザの生地を食べているかのよう。そして絶妙な塩加減。しょっぱくもないし薄味でもない。さり気なく塩味がついているこの感じ。わたしの中でベストなバランスなんですが。

ふと何気なく、検査キットの製造元を見てみると、クラッカーは「前田製菓」と書かれている。住所は大阪…。まさに「あたり前田のクラッカー」のキャッチコピーで知られた会社ではないか!

わたしは、今まで前田製菓さんのクラッカーを食べる機会がなかったが、社名は知っていた。
なぜなら、初めての職場の上司が「あたり前田のクラッカー」というギャグをよく使っていたからである。ギャグだけは知っていて、肝心のクラッカーを食べていなかったことが今となっては悔やまれる。

思わぬ場面で出会った、前田製菓さんのクラッカー。検査明けに食べたくて仕方ない。大阪から遠く離れた仙台のスーパーでも売っているだろうか。探してみよう。