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生姜焼き

生姜焼き、と聞いて牛肉や鶏肉を思い浮かべる人はあまりいまい。フトゥの脳味噌であれば、豚さんだらう。問題はその先で、とんてきを薄くしたようなソテータイプか、こま切れがたくさん入るタイプか。これは議論が分かれるところであらう。

最初に店で出したのは、昭和20年代、東銀座の「銭形」という居酒屋だったとのこと。驚くべきはその店、いまだ健在。そして豚肉の生姜焼き、もメニューの残っているという。これは知らなかった。生姜焼きマニアとしては、直ぐにでも伺わなければならないところである。

ところで生姜焼きには大きく2タイプが存在することは皆さんご存じであろう。主に洋食屋で出てくる、トンカツ用のような大判の豚肉を薄くスライスし、両面を炒め数枚皿の上に並べたソテータイプと、町中華や家庭などでいただく豚こま切れを豪快に焼き上げ皿の上に盛り付けたこま切れタイプの二種である。

私は細切れタイプを好む。ソテータイプは往々にしてちょっと高級だし、食べていく要領がなんともむつかしい。あの一枚肉を歯でかみ切って何分割にしてやるかというのが、どうにもしっくりこないのだ。その点細切れだと、一口サイズだから切る作業が発生しないし、一度に数枚を放り込めば偶発的にミルフィーユ食感を愉しむこともできる。一気に掻っ込み、シロメシを飲み込みやすいという点でも、こま切れが勝る。

いずれにせよ、肉は薄くあってほしい。厚みのある場合まで生姜焼きなどと書いている駄文がネット上で散見しているが、これはポークジンジャーであり、生姜焼きではない。いや豚肉をショウガで味付けしているけど、違うのである。因みにポークジンジャーは和製英語であり、英語ではGinger Fried Porkとなるらしい。どっちでもいいが。

勿論ポークジンジャーを否定はしていない。豚肉のステーキと言うのも、それがショウガだれであってもいい。旨いと思うし。でも生姜焼きではない。そこはハッキリ分けておかないと。楽しみ方が全く違うのだから。ポークジンジャーはステーキの類であり、生姜焼きはご飯のお供である。そしてその傾向はソテータイプよりこま切れの方が強いだらう。

そうそう、あのショウガのタレが沁みた繊切キャベツが旨いんだよねぇ、という人も結構いるみたい。私はそうは思わないが。むしろ邪魔である。食感が悪くなるし味も薄れる。

肉料理は肉を食べる料理である。野菜は豚さんが既に食べてくれていると、鉄人・衣笠氏も言っているのだ(あれは牛ですがね)。
今晩は生姜焼きで決まりですな。

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