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『文体の舵をとれ』練習問題④重ねて重ねて重ねまくる 問1

一段落(300文字)の語りを執筆し、そのうちで名詞や動詞、形容詞をすくなくとも3回は繰り返すこと。助詞などの目立たない言葉は不可。


 空から一つの太陽が沈み、三つある月の一つが水平線から顔をだす。星詠はそれを、街はずれの灯台から見ていた。一の月がほかの二つの月を引っ張りあげて、月たちが顔をだす。星詠は見ていた。三つの月が夜空に浮かぶさまを。それぞれの月の下に、ひときわ輝く星が現れるのを。星詠は見ていた。手に握られたスケッチブックに月の輪郭を写す。星の光を写す。それが星詠の仕事だった。赤い星が尾を引いて、平行に並んだ三つの月の下を通りぬけていく。星詠は見ていた。赤い星はみるみる水平線へ近づいていき、眼下いっぱいに広がる海へ落ちていく。星詠は見ていた。スケッチブックに赤い星のきらめきを写す。それが、星詠の仕事だった。
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