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春、再び。

  私の父は、酒癖が悪く面倒くさい人だった。素面の時はあまり話す方ではないが、酒を飲むと本性が出るのか、よく話す。そして、誰彼構わず言わなくて良い事を言う。私は、そんな父が苦手で早く一人暮らしをしたかった。
 
  私は高校卒業後、大学進学のために県外へと引っ越した。見慣れない景色、清掃が入り独特の香りがする1Kの部屋。そして、誰1人知り合いもいない。大丈夫だろうと思っていたが、意外と心寂しかった。  
  それから、時が経ち友人ができるか不安を抱えながら、大学の入学式に出席した。入学式終了後、1人でそそくさと家路を急ぐ私の周りには、「インスタやってる?」「どこの学科?」と複数人で会話をする入学生らしきスーツ姿の人達で溢れ返っていた。人見知りで自分から話しかける事が苦手な私は驚きつつ、少し羨ましいと思った。

  次の日以降、オリエンテーションや履修登録、身体測定などで、てんやわんやしているうちに少しづつ話していく人が増えていった。それから、時が経つにつれ一緒に行動する人がある程度、固まっていった。しかし、高校までと違い1人で居ても居心地の悪さはそこまで感じなかったが、一抹の寂しさはあった。
 慣れない大学生活に翻弄されている内にいつの間にかGWが過ぎ、あっという間に夏休みが来た。2ヶ月ほどあった夏休みは長いようであっという間に過ぎていった。そこから、後期が始まり徐々に日が落ちるのが早くなり枯葉が目立ち始めた。花粉症で春は好きではないが、早く春が来てほしいと願うほど寒かった。
  年末年始は、実家に帰省しお年玉目当てに親戚の家に集まる。先述したように、私は父が苦手でだったが、兄や親戚の集まりも苦手だった。だからいち早く一人暮らしの家に帰りたかった。

  3月1日。高校卒業から丸1年。「光陰矢の如し」という諺がぴったりだと思った。色んな経験をし、定期的に病んできた。だけど、高校以前よりかはマシだった。恋人はできなかった。インスタを見ると高校時代の友人と遊んだという投稿を目にする。病む。
 
  外に出る時の服装が徐々に薄くなり始め、街並みが桃色に染まっていく。また、ふと日の長さを感じ、この時期によく耳にする曲を思い出す。私は、この経験をあと何回経験出来るだろうか。その時の心情はどんなものだろうか。辛くないといいな。

2022.3.3   さら

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