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木村カエラがこれからもずっと歌いつづけるならば、いつか世界から戦争はなくなるのではないか~《Sun shower》評(2012年11月4日記)

天然モノのボーカル。ボイストレーナーに筋肉を増強された人工養殖モノではなく、突き抜けるようなノン・ビブラートのナチュラルな発声。

木村カエラ本人による歌詞。大サビの歌詞を聴いてワタシは想起した。今年を代表する傑作ドラマ、NHK『カーネーション』を。

きっと なくしたものや
きっと 失ったものは
ずっと 君の近くで
形を変えて 側にある
きれいに

この歌詞から漂ってくる記憶は、もちろん、去年の3月のあの日のことだ。だから、このパートに来ると、私は鼻の先がツーンとする。

上品なメロディ、そしてアレンジもとっても好ましい。

もっと強く抱きしめたいから
守りたいものがあるから
この思いが届くのなら
転んでもたちあがらなくちゃ

細かい話になるが、この、いわゆる「大サビ」の次、「♪この辺りで心を休めようか 何も間違いじゃないって染まるまで」という「Aメロ」のバックで、先の「大サビ」のメロディが鳴っているのがすごくよい。まるで、ポール・マッカートニーの味わいだ。

そしてこのMV(ミュージック・ビデオ)の映像。4分半のスペクタクル。「♪羽を広げて飛んでゆける」のところの美しさに脱帽。「MV史」というものがあるのなら、その流れのど真ん中で、すっくと立ち続けるだろう。

私が毎年、勝手に選んでいる「レコード大賞」、 2008年の《Jasper》、 2009年の《Butterfly》、そしてこの曲。

これだけ高潔で清廉な作品を、彼女がこれからも歌いつづけることが出来るのならば、世の中はもっと優しい気持ちになり、そしてゆくゆくは、つまらない争いを放棄しようという気分に覆われるのではないか。

世の中を正しい方向に導いてくれる歌。


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