面白い百合漫画について
面白い百合漫画について考えていた。結構変遷しているが、割と好みも円熟し定着してきた気がするので、今、自分がどんな百合漫画を好んでいるかを言語化してみたいと思う。
自分で描くときに、また、本選びをするときに、参考にしたい。
1、百合漫画の特徴
そもそも百合漫画とは何か。女の子同士の関係を描いた漫画であることは確かだ。
そこで、その特徴から帰納的に考える。
(1)関係性描写が中心
少年漫画のような戦闘シーンやファンタジーシーンによって勇気・友情・勝利を描くのとは対照的に、百合漫画は基本的には会話劇によって、愛・感情・友情が描かれる。
もちろん、バトルやファンタジーを要素とした百合漫画もあるが、それによって、女同士の関係性を描くことに本質がある。
(2)女同士特有の問題を描く
これは必須ではないものの、同性愛を当たり前の世界として描くことよりも、同性愛特有の葛藤や性欲、絡み、を描く方が百合漫画としてしっくりくる。
したがって、きらら作品的な女の子しかでてこないけど関係性を描くことを目的としていない作品は、百合漫画ではなく、百合的な見方のできる日常漫画のように思う。
けいおん、のんのんびより、ごちうさ、これらは女の子ばかりが出てくる日常漫画であって、女同士特有の問題を描くことはなく、関係性に深く踏み込むわけでもない。したがって、ここでは百合漫画の定義からは外したい。
(勿論百合オタ的にはこれらの作品で勝手にCP妄想をしたり二次創作をするくらいには好きだ)
さてそうすると、百合漫画とは結構存在が限られてくる。百合姫に載っている漫画を想像すると分かりやすいだろう。今の売れ筋でいうと『ゆるゆり』『citrus』『あの百合』『やが君』等々。
2、良い百合漫画とは
(1)感情移入の容易さ
上記で述べた通り、百合漫画は会話ベースで感情を表現し、関係性を描くことが中心となる。
感情表現とは、その人物がどうモノを考え、それをどう表現するかということであり、登場人物のキャラクター性からある程度演繹される。
「この人物は、こう言われたらこう返すだろうな」と読者が自然に受け入れることができるものが感情移入のしやすい作品ということになろう。
これを感情の論理性と呼びたい。
あまりに突飛な発想をするキャラや、不自然な反応は感情移入を阻害する大きな要因となる。
(私は、登場人物の生っぽさ、人間らしさがある作品が好きなので、アニメキャラ感が強くオタクのお人形遊び感が出ると萎える。が、これは完全に個人の趣味。)
そういった意味では、百合漫画は、ひたすら人間の内面を描写するという点で非常に人間について詳しくないといけない。人が好きでないといけない。そのように思う。
(2)キャラクターの魅力
これはどのような漫画でも同様に大切であるが、百合漫画においては、他の作品と差別化できる数少ない要素であるという意味で相対的にその重要性も大きいように思う。
3、おすすめの作品・作者(アフィじゃないよ)
(1)『付き合ってあげてもいいかな』(著:たみふる)
まさしくこの作品は感情移入の容易さとキャラクターの魅力を兼ね備えた神作品である。
女が好きな女と女が好きな女が出会う。それなりの葛藤や困難がある。でも人が人を好きになるということをシンプルに描く。そこに性差は関係ない。恋愛に肯定的な人も否定的な人もそれがあるものとして描かれる。
読者のそれぞれの恋愛観に合致し、それぞれがその生き方を肯定されるような慈愛に満ちている。
そういう意味で、多くの読者を対象にできる強みがある作品といえる。
また、感情の論理性も高く、読んでいてスッと納得できる。
さらに、各話ごとの引きがかなりしっかり作られていたり、背景の書き込みが丁寧だったり、細部への拘りが世界観への没入感を高めており、漫画力が極めて高い。
そして、キャラクターがとても魅力的である。
パッと見の造形もギャップがあって素敵だが、各々の服飾にも細かいこだわりがあり、作者も楽しんでデザインしている感じが伝わってくる。
また個人的趣味嗜好だが、よく人間を観察しているというか、「あ〜こういう子いそうだわ〜」と思わせる絶妙なリアリティに満ちていることと、女体の魅力をちゃんと描くところ、女性の性欲をちゃんと描写しているところなどが非常に最高。
余談だが表紙デザインはにじさんじバーチャルライバーJK組のイメージソング『dream triangle』の作曲者であるclocknote.さんである。
(2)『オトメの帝国』(著:岸虎次郎)
この作品はとにかくエロい。
登場人物の興奮を生っぽく湿っぽくいやらしく描く。
女体の魅力をこれでもかと見せつけられる。
『触れ合い』を描いた作品といえる。
そして心も、身体も、触れ合うその瞬間の、最高のドキドキを体感する。
また、30人近いメインキャラクターたちのそれぞれをしっかり描き分け、それぞれに特定の相手が用意され、それぞれの愛の形を描く。
そのキャラクター描写の巧みさと、数の多さで、感情移入という点でも多くの読者に適合する。すごい。
ちなみに私は初期はゆうまり派だったが最近はマスク先輩の魅力の虜に……。
(3)Sal Jiangさん
(Twitter↓)
(booth↓)
彼女の描く作品はもう本当に可愛い。キャラの可愛さが尋常じゃない。しかもいわゆるアニメ的美少女の可愛さとは一線を画した、人間的可愛さがすごい。
美人や美少女だけでなく、小太りだったり芋っぽかったり、そういうキャラの魅力を掘り下げて描かれていて、もうどれだけ人間の魅力をよく知っているのかと畏怖しちゃう。
お話もよく練られていて、感情の論理性が高いし、ちょっとトゲがあるストーリーにガツンと惹き込まれる。
この方の作品も、「あーーこういう女いるいるーーーー!!!(気がするー)」となる。
そして女体の魅力を感じる。女体。性欲。女。
またご本人もよくTwitterでギターの弾き語りをしていて、ハスキーな声でしっとりとめちゃくちゃ上手な歌を歌われていたりして、どれだけ多才なんだ!という感じ。
商業誌デビューを心待ちにしているけれど、生っぽい作品って百合姫とかの雰囲気から離れている気もするので、どこの編集部が目をつけるのだろうか。
さて、良い百合漫画の持論と、最近の好きな百合漫画について書きましたが、是非これを読んでくださったみなさんのおすすめ作品を教えてくれると嬉しいです。
(その他、青い花、ささめきこと、新米姉妹のふたりごはん、あさがおと加瀬さん。、終電にはかえします、森永みるく先生の全作品、特に『ハナヒナ』は神、等々も大好きです)