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須坂キラビトvol.1 あなたには”足りないなら作る”という気概はあるか?須坂市、特定非営利活動法人まいぺーすを取材した

このマガジンは須坂を「盛り上げてくれている人」をテーマに、活動のきっかけ、これまでの苦労や未来の活動についてもお話を伺っている
記念すべき第一回目は私の趣味であるレザークラフトに関する「特定非営利活動法人まいぺーす」さんを取材した。

【インタビューを受けたのはこの人!!】

※左が堀川さん、右が製作スタッフの小林さん

堀川 勝巳さん(理事長)
昭和28年1月11日生まれ69歳
群馬県吾妻郡嬬恋村出身現在は奥様と小布施で2人暮らし(長男は須坂市、長女は高山村で暮らしている)
両親が長野県須坂市に移住したことをきっかけに長野へ移住。
元々は福祉施設で働いていたが、須高地区の障がい者福祉サービス事業所の不足を知り、30年前に障がい福祉事業を起業。
10年前に特定非営利活動法人まいぺーすを立ち上げ須高地域で障がいのある方々のための「暮らす場」としてグループホーム、「働く場」としての日中活動事業所、「社会参加」を支援する居宅介護事業所のどんなことでもワンストップで「相談」できる相談支援事業所等を運営する。

■須高地区の社会資源不足を解決したい

2012年3月に設立し今年で10年目となる。その設立のきっかけはいったいどのようなものだったのか。

「『まいぺーす』を設立以前から障がい福祉に携わっていて、その中で須高地域の社会資源が充分ではないことに注目していました。40歳で独立して障がい者等共同作業所の運営をはじめ、それから20年を経て10年前に『まいぺーす』を設立し、現在まで障がいのある方を支援するための法人として活動をしています。」

そう語る堀川さんは常々、須高地域に「障がいのある方々が生き生きとした活動をする場所を作りたい」との想いで活動をしていたそうだ。今はその言葉を形に出来たことで表情がとてもイキイキとして見えた。

■イキイキとした利用者のワケ

まいぺーすという名前が記された車は良く見かけるので知っていましたが、そもそもどういう団体なのか?

「『特定非営利活動法人まいぺーす』は障がいのある方が支援を受けながら生活できる社会を作っていく団体で、その中に障がいを持った方が作業をする『もえぎ舎・楓舎・共働舎いぶき』という事業所があります。」

もえぎ舎、楓舎、共働舎いぶきとは何か。

「まいぺーすが運営するこの施設は就労継続支援B型(※1)と生活介護の福祉サービス事業所のことです。」

この施設での利用者の作業内容は、主にレザークラフトや縫製作業、様々な下請け作業で、働いて得た収入を工賃として利用者の方へ支払いをしているスタイルになっている。
つまり一般的な社会と変わらない雇用方式で働いているのである。
作業者が皆イキイキとして見えたのは、利用者が社会参加している意識を持っているからなのかもしれない。

大型設備を使わず手作業で製作するのがポイントだ

■こだわったレザークラフトブランドの立ち上げ

起業の際にも堀川流のこだわりがあったという。

「①手作業に関わる仕事②作り終えたときに達成感のあるもの③大きな設備投資が必要ないもの。この3つには拘りたかったんです。」

そんな時、ちょうど息子(m&coの室長)がレザークラフトに造詣があったことから「レザークラフトなら大きな設備も廃棄品もない、何より作ったときの達成感もある!」という閃きで、レザークラフトを作業科目として取り入れ福祉事業を始めた。

さらに堀川流の事業理念はここでも発揮されている。

「レザークラフトもどこかの会社の下請けでは『利用者』の仕事がいつ無くなってしまうかわからない。利用者の工賃も下がってしまう・・・。」
そんな不安を払しょくするため、無いなら自分で作ってしまえ!という強い思いで製造・販売まで出来る「m&co」というブランドを7年前に立ち上げた。「m&co」はそれぞれ製造拠点であるもえぎ舎(須坂)のMと、楓舎(小布施)のCがイニシャルになっている。

■利用者一人一人に作品の達成感を味わってほしい

レザークラフトは手先の器用さが要求される面もあるが、その点はどう克服しているのか?堀川さんはこう語る。

「利用をする際に興味を持つかどうかをしっかりと確認しており、興味が湧かないという方には下請け作業や施設外の作業など、その方に合った別の作業を用意しています。
また私達は『流れ作業はしない(一人が最後まで仕上げるということ)』というコンセプトの基、一人一人が製品を一から仕上げています。」

なんと、一連の作業を一人がやっていたのだ。商品クオリティも高く、どこかの作業の一部のみを利用者が仕上げていると勝手に考えていた自分が恥ずかしい。
細かい話になるが、革を切る工程はスタッフが行い、それ以外は、目打ち、縫い、磨き等仕上げまでの工程をすべて利用者が行っているそうだ。ミシンなども使わず、利用者の手縫い作業のみで、だ。

「レザークラフトは一見難しそうですが、実はその日から作業が行えるんですよ。利用者のみなさんも日々上達して、見ているこちらも毎日が楽しいです。」

堀川さんの笑顔から利用者との信頼関係が見えた気がした。

切る作業はスタッフが行う
小布施名物の栗をモチーフにした商品は人気だ

■苦しかった品質向上と資源拡充

そんな順風満帆に見える堀川さんも、事業を進めていく中で2つのことに大きな苦労をしたそうだ。

「1つ目に販路開拓です。販路開拓にはまず革製品の質を向上させることが必要で、そのために多くの時間をかけてきました。その上で、地域の様々な店に商品を置いて頂けるよう営業し、商品や理念をご理解いただきました。」

今では東急ハンズ長野店を始め高速道路のSA他、30か所近くのお店で販売され、ネット販売にも力を注いでいる。

「2つ目に須高地域には障がい福祉サービスの資源が充分でなかったことですね。障がいのある方々が地域でその人らしく生き生きと暮らすためには『暮らしの場』『働く場』『社会参加する場』『相談の場』が不可欠です。法人として、どうしてもその4つの事業を実現し充実させたいと考えてきました。」

堀川さんは特に「暮らす場」であるグループホームは一床でも多く作りたいと力を注いで来たそうだ。現在では、5拠点42床となったのもレザークラフトと同様に、1つ1つの菱目に針を通す作品のように丁寧に作ってきたのだ。

名刺の裏に書かれた理事長が大事にする理念。「暮らす、働く、社会参加、相談」4つ

■利用者と共に地域と成長していきたい
大きな事業所ではなく、地域に事業所を分散していることに堀川流の理念があるのか。

「事業所は全て小規模地域分散型にすべきと考え事業展開しています。グループホームは5拠点ありますが、敢えて1つに集約しない方法をとっています。それは、地域福祉を進めて行く原点は相互理解だと考えるからです。障がいのある方と市民が自然に出会う場を出来るだけたくさん作っていくことが大切だと考え、街中に事業所を作ることで障がいのある方々が地域の中で自分らしく生活し地域の方々と自然な形でかかわりを持てる環境づくりこそ大切であると考えています。」

現に今、グループホームで生活している人たちは、自分で買い物をしたり、外食したり、電車やバスで出かけるなど、障がいがあるからと制限を受けることなく、ごく当たり前の生活を楽しんでいるそうだ。

そして堀川さんは地域への感謝も忘れない。

「このような生活が出来るのも地域の皆様のご理解ご協力があってのことです。」

その言葉は『利用者が安心して社会参加できる世の中であってほしい』そう言っているようにも感じた。それは私たちが普段から意識をしていくことなのではないかとハッとする思いだった。

■堀川さんはこれからも事業を磨き続ける。それは使い古された革製品のよう。

ここまで完成度を高めてきた堀川さんに今後の展望を聞いた。

「これからの課題は『サービスの質の向上』です。障がいのある方々のより豊かな生活の実現に向けた取り組みに力を入れていきたいと思っています。その為には、支援する側の質の向上も必要です。スタッフも常に自己研鑽しスキルアップしていかなければならないと考えています。」

堀川さんの言葉に強い意志や理念を感じた。
私はレザークラフトでも古い革製品が特に好きだ。新品には出せない傷、色、におい。
古くても磨けば誰にも出せない味が出る。傷がついても磨いて、糸がほつれれば直せばいい。
堀川さんはそんな古くてカッコいい革製品のように、今後も事業を磨き続けていくのではないだろうか。私はそんな堀川さんがとてもカッコいいと思った。

※1 就労継続支援B型とは、障がい者総合支援法に基づいた就労系障がい福祉サービス。生活介護とは、障がいの重い方が日常生活上の様々な支援を受けながら日中活動を行うサービス。

<のーすの個人的オススメ!>

革のペン!シンプルで格好いい。特にブラウン。中身を変えればずっと使えるし、手元オシャレっていうのはダンディな大人男子も、ミニマルなお洒落女子にもおすすめの一品です!


※製品は須坂と小布施の2拠点で製作

革の鯉のぼり

【のーすレポート】

堀川理事長の障がい福祉に関わり40数年間、今「やっとひとつにまとまってきたんだ」という言葉に重みがあり達成感を強く感じた。
また実際に作業していた方々も元気で、表情もイキイキして見えた。
私はレザークラフトを趣味でやっているが、福祉施設で作ったとは思えないクオリティで、市場に出すまでに苦労したという言葉が良い意味で作品に出ていると感じた。
イベントにもよく出店しているので、機会があれば是非のぞいてほしい。
その一品一品の丁寧さに驚くのではないだろうか。
今回のインタビューでは、まだまだ引き出せた感じがせず、反省が残ったので今後は、もっとみなさまの情熱を引き出せるように改善していきたい。

【この記事を書いた人】

のーす
1986年7月3日 石川県金沢市生まれ
2022年8月神奈川県川崎市より須坂市に移住し妻と2人暮らし
現在、須坂市地域おこし協力隊として活動中
趣味:レザークラフト、野球、DIYなど
好きな歌手:吉川晃司、氷室京介
主な活動:空き家バンク、信州芋煮会
夢は須坂市の特産品で6次産業の企画・開発・営業で起業すること

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