須坂キラビトvol.2 田舎での農泊制度の活用。楽しみを分かち合う空間~やれるもんならやってみなさい~
ファームハウスわっくん 若林敦さん、真由美さん
「須坂キラビト」は、須坂市に関わるキラリと光る情熱を持つ人をテーマに、活動のきっかけ、これまでの苦労や未来の活動についてもお話を伺う。
第2回目は須坂市内で農泊体験の出来る「ファームハウスわっくん」を取材した。
【とある空き家が呼び寄せた夫婦の話】
須坂長野東ICから車で約5分。葡萄畑と緑豊かな田園風景が目の前に広がる井上エリアにそこはある。
「ファームハウスわっくん」
若林夫婦が営む農泊施設だ。
畑付き物件を探していたところ、築40年のこの空き家に一目惚れ。
というのも真由美さんは、この家屋にヨーロッパの「ハーフティンバー様式」に重なるものを感じたそうだ。ハーフティンバー様式とは木材である梁や柱などを露出して白い壁を見せる工法のことで、イギリス旅行で惚れ込んだ建築様式を思い出させてくれる物件だった。
しかし付いてくる畑が750坪もあり、農業経験のあった真由美さんにとっては広すぎて管理ができないと思い購入には消極的だった。諦めきれない敦さんは「畑は全て一人でやるから!」という説得を試み、真由美さんは「やれるもんならやってみなさい」という思いでわっくんはスタートした。
【農林課のサポート】
農泊をはじめたきっかけは何だったのか?
「この家で何か始めたら面白いとずっと思っていたんです。そうこうするうちに、2018年に民泊法が変わり、このチャンスを逃したらもう挑戦出来ないと思って、やってみたのがきっかけです。そんなに大した理由はありませんでした(笑)スタート時には農林課にサポートしていただいたので、とてもスムーズに事業をすることができました」と真由美さん。
認可から起業に至るまでの手続きを須坂市の農林課がバックアップしてくれたそうだ。農泊を営業したいと考えている方は是非覚えておいてほしい。
【石塚古墳と畑】
この農泊の魅力の一つは、減農薬栽培の野菜が育つ畑だ。かつてはプルーンを栽培するだけの果樹園で、長い間耕作放棄地だったという。
「入居当時、畑は果樹しか育てられない石だらけの畑でした。伐木や石取りから始めて、掘り出したものを家の裏に積んでいたら、まるで石塚古墳になっていました(笑)」と敦さん。
駐車場の裏手に敦さんが積んだという大きな石垣があった。その甲斐もあり、現在では年間50種類もの野菜が収穫できる畑となり、四季折々のでいろいろな野菜が楽しめる。
「畑仕事は体力がつく上に、野菜中心の生活で体調も整うんです」と真由美さん。
実際にここに住みだしてから体調が改善されたそう。そして宣言通り、今でも敦さんがメインで畑をやっているそうだ(笑)
【夫婦のこだわり~古き良き自然派内装~】
古民家をリノベーションし、快適で楽しい生活ができるように工夫した空間にも強いこだわりがある。
「古材を多く使い、リビングなどのくつろぎのスペースには出来るだけ化学素材を使わないようにしました。床などの木部を柿渋で塗装し、壁にはホタテ貝の漆喰を使うなど自然派に拘ってきました。」と真由美さん。
台所天井には立派な梁がつり下がっていた。何と構造上は全く必要ないものだという。飾りのためだけに設置したというその熱意に驚きだ。
【オープン後の苦労。それはお客様の「丁度いい」を探すこと】
真由美さんにオープン時のことを聞いてみた。
「宿泊業や接客業がほとんど初めてなので、何が正しいのか、農泊自体がまだまだ認知されていない時代でロールモデルも無く右も左もわからないまま進んでいきました」
主に経営面を担当している真由美さん。持続的な運営をしていくには「利益」が必要になってくるが、考えたこともない値段設定の一つ一つが手探りの状態だったそうだ。
「サービス面も日々反省し、改善を重ねています。私たちが二人で持続していけるサービスの幅に苦戦しています・・・難しいですね」
人員が限られた中でサービスを充実させていく労力は計り知れないだろう。それでもお客様の「丁度いい」を常に模索している姿に真由美さんの強い思いが見えた。
食事のレシピにも工夫と模索を続けている。
畑で取れた野菜を使った田舎料理が好きな人か?どんな雰囲気の料理を好むか?を感じ取りながら、毎日違う献立で考えているそうだ。
「一番人気は窯で焼く本格派ピザ。採獲れたて野菜を中心に、お客様の好みで自由なトッピングができて、フルーツのピザも楽しめるんですよ」
そんな工夫をするのも運営の難しいところであり楽しいところだと言う。
【農泊を利用する人は?】
農泊を目的とする人はどんな方が多いのか?
「利用目的は様々ですが“安らげる環境”を求めて来られる方が多いですね。健康志向や海外旅行者も。3割くらいは(敦さんの前職の)短大の卒業生で、ここに来ては学生時代に戻ったように賑やかに過ごしていますね (笑)卒業してもこうやって気軽に使ってもらえるのはとても嬉しいです」と敦さん。
便利な立地でありながらゆったりとした時間を楽しむことができる「ほどよい田舎」に安らぎを求めるお客さんが増えているという。
【農泊に定義はない】
真由美さんに農泊体験で伝えたいことがあるか聞いてみた。
「農泊だからという押しつけみたいなのは全くなくて、ここに来てよかったと思って頂ければ嬉しいです。ここはみんなが気軽に集まれる場所になればいいなと思っています」
夫婦で何度も口にしていた「気軽に集まれる場所」という言葉。二人の気持ちは一つなのだろう。
【進化し続ける古民家】
わっくんはまだまだ進化中だ。
「今度は古い土蔵を改造中です。反対したんですけど、夫が好き勝手にやってますね(笑) いつのまにか天体望遠鏡や石膏像を持ち込んだりしています。今でも、中にブランコやハンモック、卓球台、スクリーンにプロジェクター、薪ストーブもつけるとか言っています(笑)これまでも自分たちが楽しむために始めたことが事業につながっているので、将来的に事業につながるかな・・・と長い目で見ています」
真由美さんは常に「やれるもんならみってみなさい」という気持ちで敦さんに接している。二人を見ているとこちらも楽しくなる。真由美さんは迷惑そうにして話すが、どこか嬉しそうだ。
「チャレンジしていく中で今後もトライアンドエラーの繰り返しが大事かなと。止まらずに進んでいきたいですね。」
【おわりに】
お二人にとっての「わっくん」とは?
「憩いと出会いの場です。ここに集まってくる人を見ていて楽しいなと思っています」
使って頂く人が楽しめるようにまずは自分たちが楽しむ。二人の夫婦漫才のような息の合った掛け合いで進化を続けるわっくん。次に行った時は何が出来ているのか?密かに楽しにしているのは筆者だけではないだろう。
【のーすレポート】
敦さんの情熱と趣味を、真由美さんが上手く仕事にしてしまう、まるで夫婦漫才のような空気感。どちらかが居なくては成り立たない。わっくんは、そんな関係が生み出す空間だ。
私は古材や古民家が大好きだ。この場所に惹かれた魅力の一つだろう。しかし魅力はそれだけではない。手の込んだ工夫や古材の中にも自分たちが昔から大切に使ってきたものも多く、物持ちの良さがさらに宿泊施設としての魅力をUPしている。
表から見える「おにぎり山」は二人のお気に入りの山で敦さんが命名したそうだ。敦さん曰く、どこにでもあるような里山であっても名前をつけることにより、愛着が湧き、大切にしたいという気持ちが一層強まるという・・・。
「ここにあるもの」を大切にするその考え方が、まさに「わっくん」らしいなと思った。
筆者も都会から移住したので、環境を求めて来る気持ちは良くわかる。
農業体験も収穫した野菜でどんな料理が出来るのだろう?という創造体験にもなるだろうし、それは子供たちへの食育という面でも良い影響を与えるのではないだろうか。農泊から学べる事は年齢に関係なく面白味があるなと感じた。
元々空き家や耕作放棄地だった場所が、こんな風に変わっていくのは須坂市の空き家バンカー(笑)としても理想の形だし、自分自身にもこういった柔軟な発想が必要だと痛感した。
宿泊だけでなく、農業体験、ピザ焼き体験なども出来るので、プランなどはホームページを確認してほしい。現在は1日1組限定で営業している。
自分で収穫した野菜で作るピザを「ピザ窯」で焼けるという夢のようなシチュエーション・・・ん~うらやましい・・・家にピザ窯作ろうかな・・・
【のーす個人的おすすめ】
やっぱり敦さん自慢の手作りのピザ窯!これで焼いたピザは絶対外れなし!しかも自分で収穫した野菜で作るピザなんて夢物語!是非食べに来てください!!!
【ホームページ】
ファームハウスわっくん 長野県須坂市 (farmhousewackn.wixsite.com)
【この記事を書いた人】
のーす
1986年7月3日 石川県金沢市生まれ
2022年8月神奈川県川崎市より須坂市に移住し妻と二人暮らし
現在、須坂市地域おこし協力隊として活動中
趣味:レザークラフト、野球、DIYなど
好きな歌手:吉川晃司、氷室京介
主な活動:空き家バンク、信州芋煮会
夢は須坂市の特産品で6次産業の企画・開発・営業で起業すること
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