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TOC / 5つの集中ステップ


■概要

システムには必ず制約がある
・システムとは
  複数の要素が関係しあい、全体として
  まとまった機能を発揮している集合体、組織、系統、仕組み
・システムには必ずつながりばらつきがある
・つながりとばらつきがあると、どこかに必ず制約がある

制約に集中することが全体最適になる
・システム全体で見ると、制約以上にoutputをつくることはできない
・非制約が制約以上に働くと、制約の前に仕掛品の山が生まれる
非制約が行動を変え、制約を助けることで成果を生む

制約に集中することは調和によるマネジメント
個々のすべての活動が全体との関連を考えながら動くようになる

5つのステップで制約に集中できる
・ステップ1: 制約を見つける
・ステップ2: 制約を徹底活用する
・ステップ3: 制約にその他すべてを従属させる
・ステップ4: 制約の能力を高める
・ステップ5: 惰性に気をつけながらステップ1に戻る

ゴールドラット博士 生前最後のメッセージと5つの集中ステップ

総務・人事・経理が全体最適のマネジメント改革でヒーローになる理由とは?


■各ステップの概要

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システムの例
・流れ作業でモノづくり
 ・5つの工程で作業
・1時間につくることができる数
 ・工程1: 20個
 ・工程2: 15個
 ・工程3: 10個
 ・工程4: 12個
 ・工程5: 16個

ステップ1: 制約を見つける
・例の場合、1時間に10個以上をつくることはできない
 ・この工程3が制約

ステップ2: 制約を徹底活用する
・制約が見つかったとして、それが本当にフル稼働しているか?
 ・機械の場合
  ・機械が止まっている時間はないか?
 ・人の場合
  ・希少リソースが、他の人でもできる仕事をやっていないか?
  ・希少リソースにしかできない、本来なら不要な作業がないか?

ステップ3: 制約にその他すべてを従属させる
・ボトルネックの数量以上に、最初から投入しない
 ・制約が10個以上つくれないのなら、それ以上つくるのはムダ
 ・10個だけつくれるように投入を変える

ステップ4: 制約の能力を高める
・短期間に制約になっている原因を解決ことは難しい
・ステップ3までで得たゆとりで能力を高める

ステップ5: 惰性に気をつけながらステップ1に戻る
制約は相対的なものなので、必ずどこかに存在する
・ここまで改善したら制約が別の場所に移っているかもしれない
・現状に満足せず、さらなる改善のためにステップ1に戻る


■実践のポイント

●ステップ1: 制約を見つける

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制約の3つのタイプ
物理的な制約
 ・装置や設備、人的リソースに起因するもの
 ・人の場合、その人にしかできない作業がある希少なリソースと言える
市場の制約
 ・需要や顧客など起因するもの
方針の制約
 ・会社の方針や慣習
 ・圧倒的にこの制約が多い

制約の特徴
・在庫が溜まる
・処理時間が長い
・問題やトラブルが多い
・稼働率は高い

処理時間から制約を探す
・VSMで、LTが長い工程を把握
・対象の工程内でのVSMで、LTが長いタスクを把握
・タスクのリソースから制約を把握


●ステップ2: 制約を徹底活用する

非制約が制約より多く働くと、仕掛品が溜まる

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時間とともに制約の前には仕掛品の山が生まれる

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・会社のお金が滞留する
 ・お金を他の用途では使えないモノに変えている
 ・お金を本当に使うか分からないモノに注ぎ込んでいる
・本来なら不要な作業を生む
 ・大量の仕掛品を見分ける、状況を把握する作業
 ・大量の仕掛品の順序や整合性のメンテナンス
・制約の作業効率を下げる
 ・制約の工程は人が実施している
 ・目の前に仕事の山があればプレッシャーが生まれる
 ・焦りがミスや認識齟齬を生み、効率は落ちる

徹底活用の例

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制約が機械の場合
 ・機械が止まっている時間はないか?
  ・シフトのやりくりなどで常に動いている状況をつくる
  ・前工程までのやりくりで制約を動かし続けるように流れをつくる

制約が人の場合
 ・希少リソースが、他の人でもできる仕事をやっていないか?
  ・タスクを洗い出し、他の人でもできる仕事を非制約リソースが代わる
 ・希少リソースにしかできない、本来なら不要な作業がないか?
  ・非制約リソースで、引き継ぐチームを組む
  ・希少リソースがナビゲーターのモブワークで、チームに引き継ぎ
  ・チームが、得たノウハウを言語化する

フローユニットの流れで考える
 ・制約条件に入る不良品を減らす
 ・いま必要な製品だけをつくる
 ・利益を最大にする製品ミックスでつくる
 ・バッチサイズを小さくする

・工程での時間の使われ方
  プロセスタイム
   付加価値を生む実際の処理時間
  セットアップタイム
   段取りにかかる時間
  キュータイム
   前の製品の処理が終わるまで
   そのリソースの前で待っている時間
  ウェイトタイム
   次の製品が届くまで
   リソースが待っている時間

・バッチサイズ
  一回のオペレーションで処理するユニットの数

・キュータイム、ウェイトタイムが大きい
  バッチサイズを小さくすることで
  キュータイム、ウェイトタイムを圧縮


●ステップ3: 制約にその他すべてを従属させる

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このステップが最も重要な戦略的ステップ
・本当に全体最適のマネジメントを実践できるか否かのボーダー

実践する判断は難しい
・「ムダになるので、半分は休んでいていい」と言えるか
・一般的に、それぞれの工程での生産効率を上げることを考える
 ・その結果は、仕掛り在庫が増えるばかり
 ・個々の担当ごとの効率で評価していると、効率は下がって見える
念のために多くつくっておきたい、そのほうが良いと考えるのは人のサガ
 ・現場は生き物だから
 ・市場がどうなるかわからないから

得られる成果
資金繰りが良くなる
 ・ムダな投入がないことで、材料費が大幅に減る = キャッシュを生み出す
 ・ボトルネックを通ったものは、すべてが売上につながる
リードタイムが大幅に短くなる
 ・仕掛品の数が少なくなるので、投入から完了までの流れがスムーズ
 ・生産額100億円の工場で、リードタイムが25%削減した場合
  ・75%の力で100億円を生み出せるようなった
  ・100%なら、100億円 / 75% = 133億円の生産ができる
現場に余裕ができる
 ・ボトルネックでこなせる数量しか作らなくていい

小さくはじめる
・組織は、フラクタル構造になっている
 ・組織全体と、各部署の内部は近い構造
 ・近い構造に適用できれば、組織全体にも適用できる
 ・より組織全体に近い構造の部署からはじめる
・組織には、2:6:2の法則が働く
 ・新しい取り組みに積極的なのは全体の20%
 ・組織内での成功事例があれば、60%は動く
 ・80%が変われば、組織全体に影響が広がる
 ・はじめの20%で成功すれば組織全体に広がる


●ステップ4: 制約の能力を高める

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ステップ3までは、お金をなるべく使わないで最大の成果を生み出すこと
非制約には余裕が出てくるので、制約の作業を応援することもできる
つくられた資金を使って投資することもできる


●ステップ5: 惰性に気をつけながらステップ1に戻る

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制約の能力を高めることで、他の場所に制約が移る
・制約の移動を検知
・新たな制約を同じステップで解消
継続的に改善し続ける

漸進的平衡(Progressive Equilibrium)
・他の場所で新たにステップ1から挑むより
制約が移りそうな場所も一緒に改善して、制約の場所を固定
・これまでの改善の慣性を活かして改善のスピードを上げる


■参考


■TOCのまとめ記事


●他の方のまとめ

ToC(制約理論)入門
上島 賢士さん [リクルート]


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