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【雑記】ワレワレのモロモロワークショップの感想(前半)

先日、演技経験者以外の会社員でも参加できるようになった、ワレワレのモロモロワークショップに参加してきました。

ワレワレのモロモロとは、岩井秀人氏が行っている企画の一つです。とある記事には以下のように説明されています。

「ワレワレのモロモロ」は、参加者が自分の身に起こった話を書き、演劇化する企画。

https://natalie.mu/stage/news/545962


以前は、俳優向けに行われていたソレが、だんだんと広がり、最近はワークショップ団体が始動し、誰でも参加できるようになりました。

岩井秀人と渡猛が講師を務める、ワークショップ団体newgoo!が始動

https://natalie.mu/stage/news/573713

私、先日参加してみて、めちゃ楽しかったので、以下の文章はその感想です。

ただ、感想を書いたら、とても長くなりました。
なので、前半と後半に分けて投稿いたします。

ワークショップへの参加を悩んでいる方にとっては、後半の内容(来週に投稿予定)の方が参考になるかもしれません。
この前半パートについては、ただの当日のワタシのモロモロです。

よければ、読んでいってください。



第一章 ワークショップ前

 有楽町線千川駅の地下ホームから階段を登る。外に出ると、曇りの割に、前方が眩しかった。暑い。大好きな柴犬の厚手のトレーナーを着た私は、この日の服のチョイスを完全に間違えた。 


 11時20分、千川駅に着いた。
 今日は、ワレワレのモロモロのワークショップ当日。開催場所の最寄りであるこの千川駅に、私、野崎は降り立った。こんなに北上したのは、出張で群馬県に行って以来だ。
 それにしても早く着きすぎた。受付時間の12時15分まで、約1時間余裕がある。

 時間を潰そう。

 私は、前方に広がる視界と画面上のGoogle Mapの間を行き来する。バーミヤン、モスバーガー、松のや、ココスがある。しかし、多くのヒトが空腹を感じる時間帯だからか、どこも混んでいた。受付時間を潰すために並ぶヒトになりそうだったので諦めた。そこで、ココスを抜けた先にあった、酒のカクヤスで炭酸水(ノンアルコール)を購入し、千川駅周辺を散歩した。

 千川は、ヒトが住みやすい街だと思った。都会に近く、チェーンの飲食店やスーパー、弁当屋もある。そして、街は程よく静かだ。
 雨のない土曜なら、もう少しヒトが街を散歩していてもいいはずだが、車道の交通量に比べると、ヒトの数は妙に少なかった。
 
 ゾンビ映画の序章にある不穏な空気と似ている。

 それにしても暑い。

 そうか。この暑さで、脳を撃ち抜かれる前に、ゾンビの肉体は腐敗が進んで、消滅したんだろう。千川の平和は守られた。よかった。

 安心した私は、何を話したいか考えながら歩いたり、目に入る看板を一文字ずつ丁寧に読んだりした。その途中で見つけた公園のベンチに座って、炭酸水を飲みつつ、ベンチ前を通過するヒトを観察して過ごした。 



 11時45分。受付時間の開始時間は、まだ先だ。
 先ほどよりも日が出てきたこともあり、私の脇と背中が、局所的に暑い。

 室内に入ろう。

 そう思った。飲食店は全滅だったが、駅近くに、ハライチ岩井勇気が、前にラジオで最高のスーパーマーケットと評していたライフがあったことを私は思い出した。

 ライフは、我が家の近所にはない。ハライチ岩井勇気が、「ライフのプライベートブランドの出汁パックはうまい」と話しているのを聞いてから、憧れていたライフ。

出汁だ。出汁を買おう。



 11時50分、方向転換。
 ライフに向かうため、私は来た道を戻ることにした。くるりと振り返る。その時、やっと、自分の後方に車がいることに気づいた。慌てた私は、軽快なカニ歩きで脇に寄った。

 そして、周辺視野で赤い物体を捉えた。

 それは、真っ赤なTシャツを着た本日のワークショップの主催者の岩井秀人氏、本人だった。
 岩井氏も、車をみつつ、それが通過するのを待っていた。普通だ。 

 私がいつもやることを、岩井氏もやっている。映画やドラマで、日常を演じている俳優さんが、日常に普通にいる。頭が痒い。

 『私とは違う次元で、日常を演じている俳優が、私の日常と同じ次元で、車を待っている』

 かゆ。

 そんなことを考えていると、車が通過し終わった。

 安心の空間。

 その瞬間に、やっと、私は冷静になれた。
 私の視野内で最もサリエンシーの高い彼を、長く注視することは、ヒトに対して失礼に当たるだろうと私は気づいた。そこで、できるだけナチュラルに、早めに、前進した。後ろは振り返らなかった。

 ライフに着いた時には、出汁のことなんて、すっかり忘れていた。いきなり日常の中で生きている俳優を見たので、緊張メーターはすでに天井を突き抜けた。

 今日、ただの会社員の私はワークショップに応募してよかったのか、と言う意味のない振り返りを、ライフの鮮魚コーナーで、した。



 12時15分、受付開始の時間を超えた。

 そろそろ行ってもよかろう。私は、会場である就労支援センターに向かった。

 Google Map上では、すんなり到着できた。ただ、入り口がわからない。周囲を1.5周したところでやっと、入り口を特定できた。

 ヒトにとってはただのワークショップ会場への入館だけど、私にとっては大きな一歩だった。

 ドアを開けると、そこは、小学生時代に通っていた学童のホームを思い出させるような起毛の絨毯が敷かれた、ほっこり空間だった。

 「こんにちわ」
と言いつつ、何も悪いことなんてしていないのに、私はペコペコしながら、前に進む。

 なんでギターがあるんだよ。なんか靴下の販売コーナーあるけど。ホワイトボードになにかの議論の後が見えるなと、視覚情報を文字情報に変換しながら、私は冷静さを保った。

 運営の魚井さんが、このとき優しく話しかけて下さったり、トイレの場所を教えてくれたりしたけど、何を話したか、緊張であまり覚えていない。ただ、ヒトの優しさに触れて、私の緊張は少し緩んだ。


第二章 ワークショップ開始

 12時30分。参加者が揃った。

 岩井氏がワークショップの概要を説明する。その後、自己紹介パート。一人一人の顔と、参加者リストだろうか、それを交互に観る岩井さんが、参加者の緊張をほぐすように、話をふったり、運営のお二人の紹介や雑談をしてくれた。

 「唯一の役者経験なしは、野崎さん?は、会社員なんですね。で、僕の作品を色々観てくれている。観る専?」

と私に聞く岩井氏。

 「あ、はい。あの。岩井さんは、佐久間さんのラジオで、いきなり本読みのイベント紹介されていて、それで面白そうで、それで知りました。それで、すごい面白いなーと思って、いきなり本読みの配信動画を買って、観て。で、日本映画チャンネルの岩井さん特集で配信されていた舞台収録を全部観ました。はい。なので、初めて生で観たのは、PARCOでやってた、おとこたちが初めてです」と私は澱みなく言った。

 説明しよう!
 これは、極度にテンパっている状態の野崎だ!
 不必要にたくさん喋っているね!
 岩井氏の質問に真摯に答えようとしすぎて、全ての経緯を説明することに必死になって、質問の回答になっているようで、なってないことを言っているよ。コレを読んでいる、そこの君には、全く理解できないと思うが、「私は、ほとんどの演劇を配信で観ている野暮天なのに、演劇の観る専の称号を頂くのは、勿体無いことでございます」と、卑屈になっているから、このような混乱が起こるんだ!
 よいこのみんなは、質問に適切に回答できる大人になるため、卑屈にならない!冷静さを忘れない!これを守ろうね!野崎との約束!!

 参加者は、他に3名いた。全員役者経験者のようだった。
 私にとっては、通常のやりとりに感じることでも、ノートを片手に、岩井さんや参加者の発言をメモしている人がいる。センサーの感度の違いを感じる。みなさん、感度が高そうだ。こうやって、全ての要素から、仕事への学びを得る人ってかっこいい。そうだ、私は、こんな風に仕事に向き合っている人になってみたかったんだ。


 今日、来てよかった。


 13時近く、参加者の1人目の方のエピソードを演じる。
 みんな話がうまい。演技がうまい。みんなすごい。という衝撃を感じつつ、想定していなかったオチがついて、素直に爆笑した。こんな綺麗な偶然があるのかよ。
 前に読んだ堺雅人氏のエッセイで、彼が『演技が上手いですね』と褒められるときの複雑さを書いていた。そこでは、「演技が上手い」と褒められてい時点で、やっていることが、演技だとバレている滑稽さとその褒めに対する葛藤が書かれていた。
 ただ、一会社員の私が、あの場で体感した演技のうまさに対する感動は、演技と言う言葉にまとめられる、なにか多くの要素に対してだと思う。ただ、私が言葉にすると、演技うま!しか言えないのだ。
 
 あの一連を適切に褒める言葉を持っているヒトは、きっと一流の俳優だ。


 14時すぎ頃、一つ目のエピソード終了。

 軽い休憩の後、エピソード聞きタイムになる。
 参加者の2人目の方のエピソードを聞く。ヒトが、精神的な変化の後に体調が急変したというような話だった。「体調と精神状態は影響し合う。繋がっていそう」とそんな話をした。


 2人目さんが『話したいことが2つ3つある』と話し始めたこともすっかり忘れて、私はどうしても自分の話がしたくなった。
 「それで言うと!」会社員野崎は、割り込む。
 「私、アトピーとかアレルギー体質なんですけど、小学校から中学校にかけて、寒冷蕁麻疹っていう症状があって、なんか気になっていることがあって」
と私は話し始めた。

 この時やっと、人の会話に入り込んでしまった自分を恥じた。

 ええいままよ。


後半に続く。

次回、野崎、話す。

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