見出し画像

五十音アナグラム「ネロリ」

夜闇深くへ歩む
小雨はネロリ濡らせし
溶けて消えた忘る日を想う
そんな毎日のほつれ

よやみ ふかく へ あゆむ
こさめ は ねろり ぬらせし
とけてきえた わするひ を おもう
そんな まいにち の ほつれ


ふと夜更けに家を出て歩きたくなる。
目的地などなく、今が何時なのかも曖昧で。
庭先のネロリが小雨でほんのりと濡れていた。
香りに懐かしさを思い、記憶が蘇る。
今の自分はあの頃の自分と同じだろうか。
変わり果てているだろうか。
彼なら、なんと答えるだろうか。
切なさと愛おしさが整然とした毎日を僅かにほつれさせてゆく。
小雨はまだ降り続いている。


補足
離れ離れの男女のお話です。
特定の香りに誘われて記憶の欠片が顔を出すこと、ありませんか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?