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聴いたよ新譜2022 vol.1

お世話になっております
もう2月となりましたが今年も新譜の感想を書いていきたいと思います。

プライベートでも仕事でも色々と多忙を極めた年末年始でしたが、リリースされる新譜を聴いてはアウトプットできることが何よりの幸せでした。

昨年と比べると更新頻度はまちまちになっていくかもしれませんが備忘録の意味で捉えていただいて…僕の心の一つの拠り所として今年もこのノートを続けていこうと思います。宜しくお願いいたします。


01. Bonobo - Fragments

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大ヒットの前作「Migration」からはや5年も経つのですね…bonoboはなんだかんだ2010年のBlack Sandsから聴いてきたので今作も楽しみにしておりました。

アイデアの断片が散りばめられたフラグメンツ
より強固となったビートに
エレクトロニカの質感はしっかりと残る

ジョーダン・ラカイをはじめとした客演の調和も最高なのですが、何よりこれまで以上に厚みを持った明瞭なダンスチューンが印象的。トラックごとにビートアプローチのバリエーションも多岐にわたりながらも、そこにはBonoboらしく品を感じる繊細さが各所に感じられてとにかくクールなんですよね。自然体で気持ちよくフロアを感じて揺れることができる傑作だと思います。



02. FKA twigs - CAPRISONGS

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FKA Twigsの新譜をリリースと同タイミングで聴いたのは初めてだったのですが、3作目にしてかなりスッと入ってくる大作の満腹感を感じました。

豪華な客演と共にならされる最新のサウンド
強い説得力と発見に溢れる波
前面にR&B感の増したポップネスが心地よい

前作までのアングラ感あるビートからメジャー感のあるサウンドに変化した本作。売れ線にも感じて最初は「サウンドがリッチすぎる…あのアングラ感はどこへ…」とも思ってしまったのですが、聴けば聴くほどフロウも歌声もサウンドのアレンジや取り入れ方も紛れもなく新しくて鮮度が高く、何周か聴くほどに発見に富んでいてとにかくかっこいい…何より心地よくて聴き入ってしまうんですよね。すごいアルバムだと思います。



03. Elvis Costello & The Imposters - The Boy Named If

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僕が知りうるロックスターの中で最も持って生まれたかった歌声を持つのがエルヴィス・コステロで(次点でアレックス・ターナー)。青臭くてダンディな「青年の色気」とも言える歌声に何度も魅了されました。そんなコステロがTHE IMPOSTERSとの名義で新譜を出すとのことで「どれどれ」と聴きました。

「あの頃」を思い出すパワー
「あの頃」さながらのブルーボイス
それが確かに今鳴っている喜びでしかない

前作「LOOK NOW」を聴いていればこそ、今作一曲目の「Farewell,OK」を再生した瞬間から度肝を抜かれました。67歳のコステロがあの頃さながらのフルパワーでギターをかき鳴らし、あの「THIS YEARS MODEL」の頃さながらの青い歌声で甘く激しく歌い上げ、そこにあの頃さながらのオルガンサウンドまで入ってくるんだからこちらは興奮しっぱなしでした。2022年にこれを聴くことができるなんて思ってもみなかったのでうれしい限りです。いつまでも僕の憧れでいてくれて本当に感謝です。



04. Jesper Munk - Taped Heart Sounds

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ドイツ出身のSSW、JESPER MUNKの新譜です。オリジナルアルバムはちらっと聴いたことがある程度だったのですが、今回はブルース/ロック/カントリーの名曲たちをカバーしたアルバムということでなんとなく聴きだしてみたらとても良かったので今回感想を書きたくなりました

テープレコーダーの味わい深い音質と
甘くて儚い歌声が最高にハマる

Tom WaitsやJJ Cale. Willie Dixonなど渋さ全開の楽曲達をTASCAMのテープレコーダーで録音したカバーアルバムなのですが、正直ここまでひとつのアルバムとして気持ちいい仕上がりになっているとは思わず、とてもハマってしまいました…どこか間の抜けた伸び方の声なのに甘くて渋く歌いこなすのが最高なんですよね。ヴィンテージ感のある録音にも限らず全く違う曲かのようにも聴こえてきていい感じに新しさもあるんですよ。ブルースクラシックを見つめなおす意味でも素晴らしい試みだと思います。



05. Fazer - Plex

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ミュンヘンのジャズバンド、Fazerの新譜。
ジャズの自由さの中にクラウトロックのキメ感を併せ持った最高にかっこいいバンドです。

タイトでマスライクなドラムにメロウなホーン
ミニマルな中に様々な情報を内包した
スリリングでクールな作品

実は割と近い時期にたまたまspotifyで知ったバンドではあったのですが、信頼する筋の方が勧めていて今作のリリースを知りました。Talk TalkやCanのようなクラウト性と絶妙なポップさ入交り、アフロビートやダブも交えてジャズの線上で絶妙にブレンドされており見事に魅せられてしまいました…ここ近年各地でジャズを用いてたくさんの名盤が生まれていますが、今年何度も聴くことになるアルバムだと思います。



06. 宮内優里 - Beta

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ちょうどリトル・フォレストの映画を今更ながら視聴したところだったのですが、そんな折に宮内さんの新譜がデジタルリリースされたことを知りました。

間や空白をあえて残した
せわしない日常の隙間にフィットし
これまで以上に透明で浸透率の高い作品

ハードディスクに残るデータたちをリサンプリングして再構築しながら実験的に製作した作品ということですが、どこか未完成であるかのような余白の感じがむしろ僕の日常に絶妙にフィットして気づいたら何周も聴いていた作品でした。これまでの代表的な作品と比べてもキラキラ度よりも透明度が高い気がしてグリッチの具合やカットの入り方も絶妙に好きなんです。一番好きかもしれない…



07. Mitski - Laurell Hell

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前作から3年半、6枚目のアルバム。Mitskiは2019年のフジロックで来日する際に初めて聴いて衝撃を受けて過去作も聴いていったアーティストなのですが、今作も楽しみに待っておりました。

シンセを活かした新機軸の今作
ドラマチックな展開と80’sライクなサウンドに
絶妙に持っていかれる

FKA Twigsといい今年はチャレンジングな変貌を遂げるアーティストが年始から続いている印象ですが、インディ・オルタナ的アプローチから一変して80’s的なシンセポップサウンドながらフォークロック感ある歌いまわしでドラマチックに演出したMitskiの今作は、これまでのファンから賛否両論はありそうだなと感じつつも僕としてはとても好きな作品でした。「これも素敵!」一聴してめちゃくちゃいいな~って思える展開がいくつもあり、世界観としても惹きこまれる。挙げるならば5曲目「Heat Lightning」のビート入りの展開なんかグーっと沸き立ちました。とても好きです。



08. Pinegrove - 11:11

アメリカはニュージャージーのエモ・オルタナバンドPinegroveの新譜。USインディシーンでカルト的人気を誇る彼らの新譜はラフ・トレードから発売されました。

社会への痛烈なメッセージがこめられた今作
よりカントリックに気持ちが乗り
乱高下するエモーションが気持ちよすぎる一作

僕はラフ・トレードに移籍して発表した前作「Amperland,NY」で初めて知りました。今作は前作までのキンセラ感あるエモらしいアルペジオ回しよりも、どこかカントリーやフォークの色合いを濃く感じることができるのが特徴的でした。切なく響くメロディには社会への痛烈なメッセージが込められ、より強い説得力を持ってサウンドとエモーションを乱高下させていく展開に「この音が聴きたかった」と何度も思わされました。大好きな作品です。



09. Animal Collective - Time Stiffs

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アニコレの新譜…めちゃくちゃ良かったんですよね。気持ちいいくらいのサイケでキマった最高なアルバムでした。

生の質感といい意味での未整理感
終始痛快なサイケデリックながら
妙な説得力がたまらない快作

アルバム一曲目のDragon Slayerの時点からいい感じに散らかったアンサンブルが既にワクワク感を誘い、本能的なサイケさすら感じる浮遊感にこれまでとは明らかに違うオーガニックな土の香りが漂う自然発生的サイケデリアをビシビシ感じてあっという間に一周してしまいました。ビーチボーイズかのような多幸感あるポップネスも相まって、これまでとは明らかに違う突き抜けた感性を感じて、まだアニコレに新しい扉があったのかと驚かされます。最高。




10. Raum - Daughter

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昨年素晴らしい作品をリリースしてくれたGrouperのリズハリスの別プロジェクトRaumが新作をサプライズリリース。こんなにうれしいサプライズなかなかないですよ。

深く美しいアンビエントドローン
まどろんで飲み込まれていく重厚な霧のよう

7曲一時間の間、なんの不安もなく身をゆだねることができるアンビエントドローンの傑作でした。環境音とシンセの揺らぎが気持ちよすぎる…楽曲の切り替わりも含めて楽器のループの変遷の具合に繊細さを感じ、極めて上質にゆらゆらと奥へ奥へいざなってくれる。気づいたら時間が経過している。今も書きながら持っていかれそうになる。
素敵なサプライズをありがとうございました。


はじまりました

今年もすごい作品がたくさんリリースされていますね…うれしい悲鳴です。これを書いている段階で既にBig ThiefやSpoonの新譜も既にリリースされており、もうこれ以上溜めてはおけないと一気に書きましたが本当にどの作品も素晴らしくて、また時間をかけてほかの作品にも出会っていきたいなと心から思います。

忙しさから不定期にはなりますが、今年も何卒宜しくお願い致します。

おつかれさまでした

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