Build

2023年7月5日水曜日、SuU 1st Full Album「Build」をリリースしました。どうやら好評のようで一安心。


サブスクなりCDなり、どんな形であれ聴いてくれるだけで嬉しいです。でもまー出来ることならCD買ってほしいですね、売れれば売れるほど大人が喜ぶので(笑)。写真見返したらアルバムの制作を始めたのが2021年の夏だったから2年近く時間がかかってた…本当にやりすぎ、遅すぎ。思い返してみるとアルバム制作のきっかけは家の近所の公園でアツヤ(デザインやベース担当)と今までのデモCDやカセットでリリースした音源を6曲くらい生音で再収録、新曲を6曲くらい宅録で収録してレコードでリリースしよう、と話していたのが発端だったような気がする。その次の月にはレコーディングスタジオを押さえて大ちゃんに「映画(短編)」、「透明船」、「コースト」、「あなたの中で死んだようです」、「機械人間」のドラムを叩いてもらった。「collage」もサポートメンバーに演奏してもらったからそれを使う予定だったんだけど、どうにも自分の中で納得できなくて全部ボツにし全部俺が録り直した。サポメン(意味:サポートメンバー)には申し訳ないけど俺が納得できないものを作品として残せないし残したくない。SuUは元々、自分が楽しむための趣味、創作者としての挑戦、として始まった活動で売れたいとか有名になりたいなんかの野心やモチベーションは全くなかった。そういった野心がなくなったのも前身バンドの解散があったり誰かに期待したりすることにうんざりして散々捻くれてしまったのが原因だろう。音楽を作ることが趣味。これは料理をすることが趣味や読書をすることが趣味、写真を撮ることが趣味…といった人たちとなんら変わりないマインド。俺が言いたいのは「料理を作ることが趣味な人が全員プロの料理人として働いているわけじゃないでしょ?」ってこと。誰かに聴いてほしい、称賛してほしいという気持ちはもちろん創作者として多少あるけど「俺と内面性が似たような人」が分かってくれればいいという気持ちのほうが今まで大きかった。創作者としての挑戦、これは簡単にいうと「ヤベー曲を作りたい」ってこと。一般的にバンドをやってる人とどうやら俺は少し感覚が違うらしく、俺は「曲の最適解を見つけたい」という追求心と好奇心で曲を作っている。ロックスターになりたいなんて思ったこともない。曲の最適解について少し具体的にいうと、俺じゃない人が歌ったらいい曲になる、なら俺は歌わなくていいし、なんなら演奏もしなくていい。職業的には音楽プロデューサーに近いのだろう。それに実験的なことを何度も試して作り上げていくことが楽しくて仕方ない。とにかく俺は「ヤバイ曲を作りたい」という気持ちでSuUを始めた。まずこの経緯を分かってほしい。

再録ってのはめちゃくちゃハードルが高い。それはオリジナル版を超えることが大抵できないから(TOMOVSKYは結構成功しているけど)。現に(これは俺個人の見解ですが)アジカンの「サーフブンガクカマクラ」の再録版、あれは「サーフブンガクカマクラ」ではない。あのときの情熱や空気感、演奏力、グルーヴ、息づかい、間。「ワールドワールドワールド」「未だ見ぬ明日に」からの流れやそのあと「マジックディスク」に続く感じ、それを含めての「サーフブンガクカマクラ」だったのに…とちょっと前の俺ならゴッチに散々文句を言っていたと思う。でも今は違う。再録に挑戦しようという心意気、思考、目的、やりがい、葛藤、ストレス、プレッシャー、不安。今ならなんとなく分かるよ、できることなら全部汲み取ってあげたいよ、ゴッチ。「Build」の収録曲のほとんどが1st,2ndデモ、1st,2ndカセットテープの再録。デモ版の「透明船」のほうがいい。MVの「コースト」が好きだった。再録なんかしてないで新曲でアルバム作れ。とか思う人もいるでしょう。うるさいわ。まず俺は誰かの機嫌を取るのために音楽をやっていない。好きなら大切に聴いてほしいし俺はその誰かを大切にしたい、嫌いなら一生聴かないでほしい。次に俺はタレントやアイドルまがいなことをしているバンドマンなんかではない、アーティストだ。常識的な部分は欠落しているし人間的にはだいぶ終わっているほうだ。好きでこんな破茶滅茶になっている訳ではない、できることなら俺だってちゃんとしたいよ…。まあそんな俺なので人間性の部分にはなにも期待しないほうが得策で、人間を批評するのではなく音楽を批評してほしい。「Build」というアルバムは今まで出した楽曲たちをあるコンセプトに基づいてまとめた。この作業をしないとSuUは先には進めないしずっとフラフラしたまま中途半端になってしまうな、と思ったから。コンセプト、それは「SuUの構築」。Buildとは建築するや作り上げる、といった意味があるのだが、まさにその言葉通りSuUという存在をこのアルバムで作り上げたかった。よくSuUってバンドなんですか?シンガーソングライターなんですか?ソロプロジェクトってことはVaundyみたいなことですか?と聞かれるのだが、SuUというのは概念です。バンドではないしシンガーソングライターではないしVaundyではない、けどバンドだしシンガーソングライターだしVaundyです。何を言っているのかよく分からないでしょう、要するにドーナツの穴みたいなことなんです(説明めんどいので「ドーナンツの穴 哲学」でググってください)。こんな感じで俺が勝手にSuUという存在を自分の中でややこしくしているため、それをわかりやすく整理、説明したくてアルバムのコンセプトを「SuUの構築」にした。要は「SuUってなんなんですか?」俺「こないだ出したアルバム聴いてください。なんとなく分かります。」ができるようになったってこと。

じゃあSuUがどういう要素で構築されているのかざっくりですが言葉にしていきます。セルフライナーノーツってやつだね、こういうの苦手だから上っ面なことしか説明できないけどせっかくの機会なので。歌詞の内容や心情とかは書かないよ、捉え方は受け手の皆様に全てお任せしているスタンスなので。「Build」では「生演奏+サンプリング」これを軸に制作を進めていった。これが今、現時点でのSuUの音楽性。感情や感性なんかは流動的なものだからいつ俺の気が変わって別の方向に行くか分からないけど、この軸は絶対ブレないと思う。サンプリングを知らない人はググってください、これから出てくる知らない言葉はググってください。知ってる体で話進めます。まずM2「kaguya」。この曲は新曲ですね、つっても去年の7月にはレコーディングを終え完成していた。ヒップホップ調の曲だね、ヒップホップではない、ヒップホップ調ね。俺はヒップホップが本当に好きで敬愛している。だからこそ俺なんかでは本物のヒップホップを作ることはできないって分かっている。あくまでも「kaguya」はヒップホップの音楽的技法を使って制作しているからヒップホップ調、ヒップホップ風になっているわけ。ヒップホップって文化や知識、歴史、精神性だと俺は解釈しているから今の俺なんかでは全然理解しきれてないのよ…。まず傾聴してほしいのは琴の音。Logicのプリセットにある琴の音をカセットテープに録音しサンプラーでサンプリングしてからミキサー通してEQをうんたらかんら…(要はとにかく面倒臭いことをしている)。ドラムの3点の音も好きですね、マスタリングエンジニアの風間さん(studio Chatri)にマスタリングの時にレベルオーバー気味で2Mixを突っ込んでもらったからアナログの歪みがバキバキに出て最高。楽器の出音のイカつさと対照的な詞世界感なんかも感じてもらえたら。M3「ennui」。これは2nd カセットからの再録です。サウンド、メロディ、アレンジなんか含め個人的にアルバムの中で一番この曲が好きかなー。左のほうで聴こえるギターのリフと俺が歌ってる「酔えない夜を〜」後のギターソロはコウジロウが弾いたギターをサンプリングして演奏したもの。キックとベースが気持ちよく絡み合うのもいいよね。ちなみ今作のベースは全曲アツヤが弾いてます。アツヤの休符の取り方が独特で気持ちがいいし、キックの出音、ヨレ方はJ Dilla狂の俺、好み。狂気と正気を行ったり来たりが「ennui」だ。M4「collage」。これも2nd カセットからの再録。さっきも書いたけど、「collage」は一度出来上がってたものを全てボツにしている。サポメンの演奏が悪いとかでは全くなく、単に俺のわがままと好みの話で、「collage」には沈んでいくイメージみたいなものがあり、それを前テイクでは体現できていなかったから録り直した。どんどん沈んでいくのよ、気持ちも体も。そして「映画(長編)」に続いていくって流れがあるんだけど。傾聴してほしいのはまずドラム、またドラムかよ。「collage」のドラムはアルバムの中で一番好きです、サウンド面でね。好きな理由を書くにはさっきもチラッと出てきたJ Dillaのことを語らずにはいられないんだけど…簡潔に言うと、J Dillaが作るビートが最高にかっこいい。“酔っ払った三歳児のキックみたいだ”と言われるほど独特なノリとパンチのあるドラムの鳴り、俺はこのドラムの出音が大好きでJ Dillaが使っていたサンプラーと同じものを買った。だからと言ってそう簡単にJ Dillaと同じ出音になるわけではないのだけど、色々試行錯誤して音作ったので「collage」のドラムはJ Dillaサウンドに少しは近づけたのではないかと思っている、でももっと近づきたいね。Bメロのサイドから聴こえる囁き声もいいよね、ちなみに1.2回目は俺の囁きで3.4回目はミナコの囁きです。一緒に沈んで、次いってみよー。M5「映画(長編)」。1st デモからの再録だね。歌詞について言及しないって言ったけど、この曲はまんま自分のことを書いてる。めちゃくちゃ飲んで酔って歩いて帰ってる時に「映画(長編)」を聴くとまじで泣きそうになるのよ…シラフの俺、こんなの書くのやめてくれ…。この曲がアルバム前半の部のラストソング。前半の曲と後半の曲をどういう基準で分けたかというと、ドラムがサンプラーで組んだシーケンサーか生音か、で分けてる(思想家は例外で)。ギターリフはデモ版を再現しつつグリッチー系のエフェクターを使ってより不安定に。不安定なものほど美しいんだよ。M6「映画(短編)」。ここからが後半の部。これも1st デモからの再録で、デモCDでは一曲目。長編から短編への繋ぎも面白いのでシャッフルで聴かず、曲順通り聴いてほしいね。俺はあんまりプレイリストを作ったりせず、アルバムを通して聴く派(たまにシャッフル機能使うけど)なので曲間にも遊びがある作品にしたいなと思い、風間さんとあーでもないこーでもない言いながら曲間を決めていった。曲間中ヒスノイズを入れたんだけど、アナログ盤を聴いているような耳触りになるから俺はなんだか落ち着く。アレンジはなかなかカオスなことになっているね、ギターのトラック数がとんでもないことになり、PCが発火する勢いで熱くなっていたな。ミックスも結構手こずったし、生ドラムの処理もすげー難しかった。風間さんに「こんなに音を重ねているのに曲が破綻しないのはすごいね。」って褒められたのは嬉しかった、絶妙なバランス感覚を持っていますので。後半の部の楽曲たちのテーマは「ライブ感」。では次、M7「透明船」。1st デモからの再録。1st デモの「映画(短編)→透明船」の流れが気に入ってるのと詞世界が繋がってるところもあるのでこの並びに。「透明船」はサポメンががっつり演奏してるからライブver.に近いね。左のほうで聴こえるギターリフとギターソロはコウジロウが弾いている。にしてコウジロウのギター渋いね、良い。コウジロウとは出会って2年くらい経つけど、彼はすごい速さで環境が色々変わっていったな。これからもブレず自分の信念をしっかり貫いた最高のギターリスト、渋い男になっていってほしいね、頑張れコウジロウ。デモ版は宅録始めたてってのもあって独創的なレコーディング方法、プラグインの掛け方をしてた。そのせいなのかあの特殊なガビガビサウンドになり、今はどうやってあのサウンドを作っていたのかさっぱり思い出せないけど。ここで少し“ローファイ”という言葉について話しておきたい。「ローファイ=ガビガビサウンド」だと多くの人は認識しているかもしれないが俺の定義は違う。「ローファイ=録音の常識を信じない」これが俺の思うローファイだ。だから今作のアルバムはガビガビサウンドではないけどローファイなんです。常識を信じず、非常識的な録音方法やミックス方法で制作したので。結果ではなくて信念や過程なんですよ、ローファイって。履き違えるなよ。M8「コースト」。2nd デモからの再録で、2021年に配信リリースした音源に楽器を足したり、再編集、リミックスしたのがBuild版の「コースト」。SuUの代表曲みたいなところがあるので大切な曲だね。2021年ver.より荒々しく、ドラムなんかも歪ませ若干暴力的なミックスにした。「kaguya」と同時期に音源は完成してたから生ドラムの楽曲たちのリファレンス、基準となった曲。「kaguya」と「コースト」、新旧の代表曲がアルバムの中で一番最初に仕上がったってのがなんかいいね。なぜかこの曲だけボーカルをダブルにせず、一本だけにしてる、でもいい感じだからいいか。これからもSuUのことをどこまでも連れて行ってよ、コースト。M9「あなたの中で死んだようです」。これも2nd デモからの再録。にしても曲名が長い。「あなしん」って省略するね。「あなしん」はバンドのグルーヴ全開。このグルーヴを生み出しているのは大ちゃんなんだけど、彼は本当に素晴らしいドラマー。跳ねるように歌うドラム、歌に寄り添った抑揚、人間力も最高で俺は大ちゃんのことを嫌いな人を見たことがない。大ちゃんのこと嫌いな人いない説。バンドSuUのバンマスとして自由奔放な俺ら(主に俺とミナコ)をまとめてくれている。ありがとう、大ちゃん。「あなしん」は18か19歳のときに作った曲で前身のバンドでも演奏していた。前身バンド時代のデモver.、SuU 2nd デモver.、Build ver.と3バージョンもあるこの曲、ホント擦りすぎ…。でも本当に大切な曲で、大切な友人が振られて落ち込んでるのを見て書いた曲だし、若さ全開の歌詞とメロディが小っ恥ずかしいけどなんだかんだ演奏してて気持ちいい楽曲。もうここまで来たら毎回アルバムに違うバージョンで入れていこうかな。M10「機械人間」。1st カセットからの再録。まず曲の入り方、急で怖い。これは風間さんのアイディアで最初のほうには「あなしん」余韻が残ってる、なんか面白い。風間さん、ローファイですね。ドラムは気持ち悪い音にしたくてめちゃくちゃにプラグインをかませて汚している。人がどんどん混沌とした機械に変わっていく、そんなサウンドイメージがあって、間奏の俺とコウジロウのギターソロはまさに人が壊れていくような破壊力。最後はミナコの歌唱力爆発で、笑ってジ・エンド。怒涛の展開だね、狂気でしかない。ミナコはいつもボーカルのテイクを一発で終わらせるんだけど(俺なんか何十テイクも録るのに…)「機械人間」は珍しく何度も録り直した。ミナコなりのこだわりと合格ラインがあるのだろう、全テイク抜群上手いから俺には基準が分からないけど。いやー、彼女は本当に天才だね。ギターなんかの楽器は練習すれば誰でも上達するけど歌声だけはそうもいかない。練習すれば多少は上手くなったりもするが、生まれ持った声色で全て決まると俺は思っている。生まれて持つ才能に勝るものなどない、才能最高、才能大好き。あとミナコは理論的ではなく感覚的に音楽をやるから良い。俺も感覚的人間だから波長合うしやりやすい。現時点のSuUはミナコ存在がマストなので、音楽業界に蔓延る才能もないカスみたいな汚くてずるいゴキブリみたいに人の才能群がるチンカスみたいな大人が唾をつけてくる前にSuUで囲っておきます。ミナコ自身のプロジェクトも頑張ってね。M11「思想家」。本作のラストソング、フィナーレ感あるよね。今年の年明けに配信したのは、俺自身の覚悟とSuUの始まりを形として残したかったから。「思想家」は俺の背中を押してくれる、俺を励ましてくれる、俺に優しく寄り添ってくれる、俺の中ではそんな曲。ドラムは大ちゃんがライブで叩いたノリをリファレンスにしてサンプラーで演奏。終盤の長尺の間奏に「映画(長編)」のギターソロをサンプリングしたものが鳴っているのよ。気付いた人がいたらすごい、その人は耳が良すぎ。前半の部のラストソングを最後の最後にどうして入れたかったからサンプリングした。現時点でのSuUの集大成とアルバムという一枚の作品に説得力を持たせるために。俺は不安定でだらしなくてどうしようもない思想家だけど、人の痛みが分かる人間だよ。この曲が誰かに寄り添えればいいな。M1「Build」。新曲ね、一番最後に作りました。ちょっと待てよ、果たしてこれは新曲なのか。というのも「Build」はM2〜M11の楽曲たちサンプリングして作ったビートなのだ。具体的に言うと、「kaguya」の琴の音が入っていたり、「ennui」のギターリフが鳴っていたり、「透明船」ドラムの素材をワンショットにして使ったり…などなど、アルバムの収録曲を組み合わせて作った一曲なんだよね。だからギターなんかは一切弾いてない。アルバムのコンセプトソングだね。これが今作のアルバムでやりたかったこと、全11曲で一つ。「kaguya」では「一つにはなれないよ」って歌ってるけどそんなことはなかった。バラバラな楽曲たちでもちゃんと一つになれた。よくやったよ。

まずここまでながーい文章を読んでくれた、あなた。ありがとうございます。冒頭で言ったけど今までは「分かる人にだけ分かればいいや」という捻くれた精神で音楽活動をしていました。このながーい文を読んでくれたあなたは「分かってくれる人」です、これからも大切にしてください、俺もします。でも「Build」を作り終えて最初に思ったことは「多くの人に分かってほしい」でした。多くの人に届けたい、沢山の人に聴いてほしい。音楽だけで生計を立て音楽と向き合う時間を増やして生活したい。今はそう思っています。これからはSuUの音楽を多くの人に分かってもらえるように活動していきます。もちろん、ヤバイ曲たちと一緒に。これからもどうか気にかけてもらえると嬉しいです。でもまあ気楽やっていこー。

P.S.
CDを購入した皆様、最後のおまけまで聴いてくれましたか?次に俺が作りたいものの予告みたいな感じです。まあ次は新曲たちでE.P.をリリースするような流れになると思いますが、時間をかけて大切にじっくりと予告したプロジェクトも進めていきます。「SuUの再構築」へ

Build→ReBuild

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