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【自分語り日記】坂本真綾さんのライブを見てきた話【セトリネタバレ無し】

2023年6月2日(金)、その日は台風が接近していて、東京も大雨だった。
武蔵野線が生き絶え、なんとかかろうじて運転している電車にギュウギュウに詰め込まれて越谷に向かう。到着予定時刻から1時間遅れて、なんとかギリギリ目的地へ辿り着いた。

声優・歌手として活躍されている坂本真綾さんのライブツアー初日公演が6月2日、越谷シティホールで行われた。
このツアーは5月末にリリースとなったニューアルバム『記憶の図書館』を引っ提げてのもので、発売して間もなくというタイミングでのツアー開始だった。

初日公演はファンクラブ会員限定で、1,600人程度しかキャパがない小さな市民ホールでの開催となった。おかげでファンクラブ会員の僕もチケット一次先行では落選し、なんとか二次先行でもぎ取った。チケット取れなかった〜って人も結構いたので二次で取れただけでもラッキーだ。

坂本真綾さんは一年前の4月ごろに第一子を出産し、もう43歳になる。しかし、年齢と出産を全く感じさせないほど若々しく精力的に活動していて、産休もほぼ取っていないのでは??と心配になるほど働いている。出産した翌月にシングル出してるし秋にはライブやって一年後にはアルバムリリースしてツアーまでやるって、パワフルすぎんか?それくらい、彼女は仕事が大好きな人なのである。

僕が坂本真綾さんにハマったのは確か2014年くらい。9年ほど前だが、女子高生でデビューした坂本真綾さんの芸歴が27年ほどだと考えると僕のファン歴は浅いといえる。

2014年当時の僕は精神的に健康とはとても言えない時期で、ブラック企業をバックれて転職したもののそこでも人間関係のトラブルに巻き込まれ、会社に行くのが怖くて不眠になり、引きこもっていた(結局その会社も辞めてしまった)。

そんな時に、高校生の頃から付き合いのある友達に、坂本真綾さんのライブDVDを貸してもらった。その友達はすでに真綾さんのファンクラブに入っているほどのファン。
当時の僕はアニメという文化にめちゃくちゃハマっていて、坂本真綾さんの曲も有名なものはいくつか聴いていたので、友達は「それならば」とライブDVDを貸してくれた。僕はほぼ引きこもりで暇だったので、ちょうど良いやくらいの軽い気持ちでライブDVDを見た。

「この人は、なんて良いライブをするんだろう」
それがライブDVDを観た感想だった。ほとんどが知らない曲だったのに、感動し、初めて見るのに涙が流れた。

それは「KAZEYOMI」というツアーのライブ映像だった。坂本真綾さんはまだ20代後半くらいなので、15年ほど前の映像だろうか。
このツアーをやるまで、坂本真綾さんはライブをするのが怖くて、あまりやってこなかったという。人前に出るのが苦手(これは今でも言っている)で、完璧主義であるゆえに、ライブに自信がなかったらしい。

そんな彼女が勇気を出してみんなの前に立ち、ツアーをする。もともと楽器も弾けなかったのに、アンコールでサプライズにピアノの弾き語りまで披露してしまう。その姿に強く胸を打たれた。
これともう一本「ミツバチ」ツアーのDVDも借りていて、二つのライブを毎日のように繰り返し観た。ミツバチツアーはカウントダウンライブなので、毎日年越ししていた。何度見ても飽きなかった。

そこから、友達が実際にライブに連れて行ってくれるようになり、自分でもファンクラブに入って一人でもライブに行くようになった。
厳島神社でライブをしたときには一人で広島まで遠征して観に行ったほどだ。厳島神社で行われたライブは、自分が行った日は中止になるのではないか?というくらい大雨で、かっぱを被って大雨に降られながら参加した(それでも最高だった)。

そして今回のライブツアー初日も台風による大雨。25周年ライブも雨だった。坂本真綾さんは、ファンならば誰もが認める「超雨女」なのだ。

しかしこういう日に限って雨、というのも、それはそれで印象に残りやすく、時が経ってから良い思い出として蘇りやすいので、悪いことばかりでもないと思っている。
これは、いつか見たRISING SUN ROCK FES.でくるりのライブを見たとき、雨のなか岸田繁さんが「こういうときに雨だったほうがね、何かと思い出に残るもんなんですよ」と言ったMCに影響を受けた考え方だ。この考え方がとても好きで、今でも大事な日に雨が降るとこの言葉を思い出す。

坂本真綾さんが今回リリースした『記憶の図書館』というアルバムは、まさに岸田繁さんが提供した楽曲「菫」をラストナンバーに置いた構成になっている。

この曲は一年前にリリースされたシングルで、ちょうどリリースされた頃に自分は11年過ごした街から引っ越しをするという大イベントがあったので、その記憶と強く結びついて印象深い。とてもシンプルな曲だけれど、聴くたびに泣きそうになってしまうほど大好きな曲。

「記憶」と言ったが、まさに今回のアルバムは記憶をテーマにした作品。ライブのセットリストも、「記憶」にまつわる様々な過去楽曲と合わせて構成されていた。
まだツアー中なのでセットリストのネタバレは避けるが、予想外の楽曲も飛び出す大満足の初日だった。
(坂本真綾さんは必ず予想外すぎる曲をセットリストに入れてくれるので、これだからライブに行くのがやめられない)

そして今回のライブから、「声出し」が解禁となった。
坂本真綾さんにはライブ定番の楽曲として観客に合唱させる曲も多いが、ここ数年はコロナの都合でそれができなかった。

今回から解禁された声出しによって、いままで封印されてきたライブ定番の曲も待ちに待って演奏された。数年ぶりに会場に響き渡るみんなの大合唱を聴いて、坂本真綾さんが涙ぐんでしまうシーンもあり、自分も思わずもらい泣きした。

思わずもらい泣き……といったけど、正直ライブの最中は泣きっぱなしだった。
特に(これはアルバム収録曲なのでネタバレではないと思うけど)「言葉にできない」という曲の演奏を聴いて、最近お空に旅立った自分の祖母を思い出して涙が止まらなくなってしまった。

「言葉にできない」は坂本真綾さん自身が作詞作曲したナンバー。真綾さん作曲らしい素朴な構成とメロディがかえって心に響く素晴らしい曲だ。

この曲の歌詞にこんなフレーズがある。

ひとりだけど ひとりだから
気づけることあるかもしれない

坂本真綾『言葉にできない』

坂本真綾さんの楽曲から見える哲学のなかに、「人はどこまで行ってもひとり」という考え方があるように思う。それは決してネガティブな意味ではなく、むしろ「ひとり」ということに対し肯定的で、だからこそ大切にできるものを歌っている気がする。

例えば、これは真綾さん作詞ではないが「ユッカ」という楽曲では、”誰も一人で死んでゆくけど 一人で生きてゆけない”という歌詞がある。重いフレーズだけれど、だからこそ誰かを愛して生きようという前向きな楽曲である(この曲が大好きで自分もユッカという植物を育てている)。

前述した岸田繁さん作曲の「菫」は真綾さんが作詞していて、この曲も”ひとり、またひとり…”という歌いだしで「ひとり」という単位を強調しながらも、”ひとりがふたり並んだ影 君を抱きしめていいかな”というフレーズで締めくくっていて、「ひとり」という単位がふたり並ぶという表現をしているのが心に刺さる(なんていい歌詞なんだ…)。

自分も最近は「孤独」についてよく考える。それは「寂しさ」とは異なる、ネガティブな意味ではない「孤独」。自分と向き合うこと、その孤独から手を伸ばすことについて、村上春樹さんの最新作を読んでから特に考えている。

だからこそ坂本真綾さんの歌う「ひとり」の表現には強く共鳴するものを感じる。

今回のツアー初日は一人で参戦するのを良いことに、お気に入りのぬいぐるみたちを連れて行った。真綾さんのライブに行くときはいつもこいつたちを連れて行っている。
いつもは周りの人にバレないようにひっそりと連れてきているが、今回はもはや人目を気にせずに堂々と抱きかかえて一緒にライブを楽しんだ。自分が「ひとり」と向き合う上で、ぬいぐるみたちには本当に助けられている。これからも色んなところに連れて行ってあげたいなあと思う。

スタッフさんに撮ってもらった思い出の一枚


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