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朗読者 / ベルンハルト・シュリンク

2021年2月28日 読了

凄まじい読後感、喪失感を味わい、個人的にかなりぶっ刺さった作品。

15歳の主人公の少年と、母親といってもおかしくないほど年齢が離れた女性との恋愛物語として幕を開けるが、中盤からは戦争の影を色濃く残す、とても重い展開に。
少年のもとから去った彼女は、数年後、戦時中のナチスの戦争犯罪者として裁判にかけられる。

とにかく徹底した主観視点で綴られていくため、分からないところはとことん明かされない。なぜこうなってしまったのか?何が正しかったのか?どうすればよかったのか?その答えがわかることは無い。もう変えられない過去に対する主人公の苦悩を、読者も追体験させられ、読後にもそれを引きずることになる。

「何であれ、いまではそれがぼくの人生なのだ。」
という一文がまさにこの作品をよく表している。過去への疑問・苦悩・自責が人生の意義そのものになってしまう。心がえぐられる話だが、美しさを感じる作品。おそらく読んだ誰もが、印象に強く残る小説だろう。

あとがきで引用されている著者の「(過去の)克服は存在しない。しかし、過去が現在においてどのような問いや感情を引き起こすのかを意識しつつ生きる生というのは存在する。」という言葉に、深く深く考えさせられた。


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