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近況報告と三周忌に寄せて

 大分久しく記事を書くことになる。ここ数ヶ月忙しく過ごしていたのでどうしても投稿する頻度が落ちてしまった。もはや言い訳でしかないのだが、その弁解を書いてみようと思う。

 先々月に私はとある国家試験を受け、先月合格通知を得た。おそらく来月には登録証が来るだろう。この試験は準備を含めて正味一年を有した。私が受験資格を得る区分は現任者講習を受ける必要があり、それで数ヶ月費やしたのと、本格的な受験勉強を始めたのが、昨年の師走であった。

 その後、私の実務経験を証明するために必要な書類を複数箇所前職に依頼した。幸い書類の問題はなかった。実に幸運であった。しかしながら、私自身が実務者である自負は十分あったにもかかわらず受験票が投函されるまで落ち着かない日々であった。気持ちを奮い立たせ、試験日までおよそ半年ほど勉強に打ち込んだ。様々な媒体を教材とした。いくら現任者といえども、試験対策と実務は異なる。よって過去問を何度も解き、模擬試験にも手を出した。本番の試験では模擬試験と同等の実力で落ち着いた。凡庸なミスもあり、自身に落胆したが、大勢に影響のない結果で落ち着いたことは安堵をもたらした。

 確か合格率は半分に満たなかったと記憶している。合格基準点も下がった上でのそれであるから、それなりに難しかったのだろうと思う。やはり「過去問研究」と「一度選んだ答えを訂正しない」教訓が肝要であった。合格発表日に行った身内での焼き肉が美味であった。とりわけヤゲン軟骨が気に入った。立体的な構造なので加熱しづらいのだが、二回も頼んでしまった。それくらい旨かった。もちろん牛タンやカルビも美味しかった。

 私は登録証の通知を心待ちにしている。里程標の一つとして。この国家資格は名称独占資格であるが業務独占資格ではない。よって業務範囲が拡大するとは限らない。しかし私自身の現行の業務の解像度や奥行きに変化が生じたと強く実感しているし、業務遂行の大きな推進力であることは疑いようがない。現状、私見ではこの資格が発展途上かつ議論の絶えないものだと理解をしているが、他方でこの資格の将来性に大きな期待を寄せているし、既存の民間資格から業務と母集団の緩徐な移行が行われるように想像している。

 この資格を国家資格たらしめる法律の施行までに幾星霜を要したことを勉強の途中で嫌すぎるほど知った。この業界において成立過程の歴史を知ることは不可避である。どのような立場で誰が何を意見しているのかを努めて理解しようとすることは大切であるが、正直なところ、私にとってこの歴程は気分の良いものではない。今でも絶えず似たような論争が起きているが、この論争の火種の一つは恐らく制度設計の問題だろう。焼けて灰になった家を見て、どうやって火を消せば良いか延々と話し合っている不毛さがある。恐らく私はどの立場にも与しないだろうし、与しようがない。しかもどことなく各々の立場のナルシズムが透けるような心持ちがして気味が悪い。職業人の矜持は自己愛と近接している危うさがあるように思う。これは私にとっても戒めとしなければならない。


 私は今月上旬にもう一つ国家検定を受けた。こちらは私の業務とは異なる領域であり、勉強するには大変骨が折れた。有酸素運動をしている片手間、スマートフォンで気軽に受検申し込みをしてから、2ヶ月ほど勉強しただろうと思う。社会で広く行われている基本的な内容といえども勉強することは初めてであった。最近では高等学校でも金融資産等の教育がなされるようになったらしい。私が高校生の立場だとしたら、あまりピンとこない内容だろうと思う。今でも得心しない分野もあるが、生きている以上避けられない問題が生じてしまっているために、已む無く教養の一つとして受検することにした。生活上の要請というわけだ。

 なぜこの金額を1/2にするのだろうか、なぜ110万円控除するのか、という疑問が生起しても、これはこうだから、としか答えようがないところに私は喉のつかえのようなものを感じた。誰かが決めるしかないのはわかってはいるのだが。さて、合格発表は来月になるが、自己採点の限り、合格できただろうと思っている。勉強したことは結果的に有意義であったし、資産設計提案を生業としている方々を本当に尊敬するようになった。同じ諮問を受ける立場でありながらも私にはできそうにない。専門性を尊ぶことは大切だ。次の級に向けてどうするかは判断留保としたい。


 私が同時多発的な大災害によって心身が一時的に爆発四散し、フォースの暗黒面に堕ちてから間もなく三年が経とうとしている。ほぼ完全回復したとはいえ、この時期になると毒蜘蛛が私の喉元に潜んでいるような心持ちがしていて、いつ毒牙にかかるかわからない気分になる。毒蜘蛛と言ったのは彼が足音を立てず、気配もなく静かに獲物を仕留めるからだ。痛みは素早くそして強い。しかも鈍く長く続く。心の傷は私をずっと蝕んできた。

 なるべくこの時期は静かに過ごすことにしている。三周忌を無事に過ごせれば良いと思う。趣味のアラビア語の勉強を週一回の割合で続けながら、他の勉強をしつつ一定の成果を出したことは我ながら重畳だと思う。

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