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コロナ・ショック後の景気対策を考える ーピンチをチャンスに、デジタルで変える新時代ー

(更新4月7日)

緊急事態宣言が4月7日についに発出されました。
コロナ・ショック撲滅の正念場です。外出自粛は辛いですが人の命がかかっています。ここは我慢ですね。みなさん、#StayHome です。

自民党が3月31日に提言した事業規模60兆円をはるかに超え、4月7日現在で108兆円の緊急経済対策です。緊急経済対策としては思い切った判断です。

この緊急対策を凌いだあと景気浮揚に繋げられるか?その点では残念ながらその景気刺激策は充分とはいえません。

幸いなことに、デジタル化が進んできました。デジタルトランスフォーメーションの時代です。今年から5Gもスタートします。これらのデジタルを活用する視点で、コロナ・ショック後の経済施策を考えてみます。



●リーマンショックとコロナ・ショックの違い

リーマンショックは、金融市場でバブルが崩壊したこと。つまり世界中の【キャッシュが麻痺】したということです。金融機関の破綻や危機が続き、個人の消費意欲が一気に減退してしまいました。金融機関のリスク管理を強化する政策が実行され、キャシュの流れが弱まり、企業が淘汰、個人にも雇用・賃金・消費の影響がでました。【キャッシュの麻痺】です。
キャッシュが麻痺したのですから、キャッシュを健全にすればいい話ですね。当時の米国長期金利は4%程度と余裕がありました。金利を下げる質的緩和とマネーサプライを増やす量的緩和をおこないました。それでも回復までには相当の時間がかかりましたが・・

対する今のコロナ・ショック。新型ウイルスという未知なる攻撃を受け、世界中の【人の移動が麻痺】。感染防止のために人々の行動を抑え込んだことで供給側は製造の側面で麻痺、需要側は、観光などの外出需要が麻痺しています。麻痺したのは【キャッシュ】ではなく【人の移動】なのです。景気対策として金融緩和や現金支給などを検討しているようですが、それは応急的な処置。中長期的な視点での国家施策が必要です。

●コロナ・ショックの景気対策で必要な視点

仮にこのコロナ・ショックを乗り切ったとして、ある程度の景気が回復したとします。その後、また新たなパンデミックが発生した場合、今回と同様の人の移動が麻痺します。その場合に、社会的なインパクトを最小限にできるソーシャルレジリエンス(社会的柔軟性)を高めておく必要があります。

3/31現在、自民党は経済対策を、事業規模60兆円で実施するよう提言しています。【感染拡大抑制期】の施策は直近の応急処置的施策なのでコメント省略します。その後に続く【反転攻勢期】施策と【中長期】施策に焦点を当てます。

【反転攻勢期】施策案
・キャッシュレス決済によるポイント還元の拡充、延長
・旅行券などの割引助成、クーポン、ポイントの発行
【中長期】施策案
・企業、地方自治体でのテレワークの推進
・遠隔医療、遠隔教育の促進
・サプライチェーンの見直し支援

正直、力不足を感じます。点的な施策で面的な施策とはいえません。
人の移動が麻痺した場合に備えたソーシャルレジリエンス(社会的柔軟性)を高めておく必要があります。

着眼点を整理してみます。
・人の移動の麻痺を予防する施策に重点をおく
・人の移動で麻痺しても経済への影響が最小限になる施策に重点をおく

結果として、
・人口減少・高齢化・地方衰退といった構造問題にも有益な手段とする
・日本の新たな成長プランのきっかけとする
この視点で考えてみます。


●コロナ・ショックでの課題とそのデジタル対策

幸いなことに、デジタル化が進んできました。デジタルトランスフォーメーションの時代です。今年から5Gがスタートします。このデジタル化を用いて、人の移動が麻痺に備えたソーシャルレジリエンス(社会的柔軟性)な施策を考えてみます。

対策1、医療のデジタル化 
対策2、教育のデジタル化
対策3、需要と供給のデジタル化
対策4、物流のデジタル化
対策5、イベントのデジタル化
対策6、飲食店舗のデジタル化
対策7、働き方のデジタル化

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対策1、医療のデジタル化 

一番のキーワードは医療崩壊。なんとしてでも医療崩壊は避けなければいけません。従来のe-Healthは電子カルテ(EMR)や遠隔手術など平常時をイメージしています。今回のような指数関数的に増加する感染症対策の視点で考えると医療機関のみならず一般人に向けたe-Health対策の整備が必要となります。

○一般市民のリテラシー向上
・健康情報学  予防知識、基礎知識、基礎体力向上
○情報の透明化
・医薬品、ヘルズグッズの在庫・配給の見える化
・感染経路を特定する仕組み GPSトレース
○医療機関への負荷軽減、
・家庭で判断できる仕組み  AI診断、リモート診断

指数関数的に増える罹患者のピークを抑えること、無用のパニックをおこさせない仕組みこそデジタル化が得意とする分野です。


対策2、教育のデジタル化

学校にいけない子供たち。ほんとかわいそうです。そもそも毎年発生するインフルエンザでさえ、学級閉鎖や学校閉鎖が発生して教育の平等性が侵されています。教育以外の雑務に振り回される教師、教え方の質と生徒の習得のばらつき・・・どれも昭和時代のそれから大きく進化していないように思えます。
現代におけるeラーニングは、5G、AI/機械学習が進化し、教師対学習者や学習者相互間などのコミュニケーションをも、デジタル化することは可能。学習者の自学自習が無理なく進めることができます。2001年に打ち出されたe-Japan構想にも描かれていたe-Learningを推進するチャンスだと思うのです。

○授業と講師の分離
・オンライン授業化、ライブラリー化
・チューター制度導入、ネットコミュニケーション
○教育機材充実
・リモート受講に向けたタブレットなどハード機材配布
○学力の透明化
・オンラインにおける質疑応答や、学習度合いの絶対評価・相対評価の充実
・教師対学習者や学習者相互間などのコミュニケーション
○文化施設のデータ化
・博物館、美術館、芸能芸術などのコンテンツ化、英語化

これにより、日本の学生・社会人のみならず、海外諸国からの学びにつなげることで日本ブランドの向上につなげる・・文部科学省の出番ですね。

対策3、需要と供給のデジタル化

国民生活安定緊急措置法施行令の改正によりマスク転売規制が導入されました。では、マスク以外は?外出自粛が出た途端買い占めが発生し特定の商品が市場から瞬間蒸発・・・本来必要な人や、買い出しにもいけない弱者が困惑・・・これから日本はますます高齢化を迎えます。社会的弱者の比率が増えていくことを見越し、緊急時の需要と供給のバランスを維持する施策が重要かと。
台湾・デジタル担当政務委員(大臣)の唐鳳(オードリー・タン)が、新型コロナウイルスの騒動のなかで、マスクの在庫が一目でわかるアプリのプログラムを開発し注目を集めました。たったこれだけのことでも効果があるのです。どこかの国ではキャッシュレス購入履歴をもとにマスクの購入上限を定めるとか期間制限を定めるとかしてパニックを低減しています。個人情報に抵触しない範囲での統制化を行い、需要と供給のバランスを維持していきます。

○キャッシュレス推進
・(個人情報と紐付かない)購入履歴化、一元化
・決済手数料のかからない電子通貨の開発・配布
○購入管理統制
・(緊急措置時の)特定商品の指定と配布制度
・需要喚起に向けたポイント付与

デジタル化された購入履歴をもとにすると、不要な買い占めは防げます。速やかにかつスムースな配給も可能です。社会的弱者救済が実現できます。また現金配布ではなく期限限定ポイント配布で即効性も担保できるため景気浮揚のきっかけにつなげることも可能です。


対策4、物流のデジタル化

東日本大震災から得た教訓のひとつがサプライチェーンの分散化。それが今回のコロナ・ショックでグローバルリスクが発生することが露呈、日本国内で一定のサプライチェーンを再構築する必要がでてきました。そのコスト競争力をあげるためにも、高効率化が必要です。
一方で高齢化が進む日本社会。じわじわと供給側では生産労働者が減り、需要側でも高齢化による人の移動が麻痺していくともいえます。少ない人数、少ない人の移動でも日本社会全体が回る仕組みを考え直す好機です。ビジネスにおいて、付帯的に発生する業務を徹底的に効率化。原材料調達、工場生産、倉庫管理、陸海空運、小売・・・サプライチェーン全体を見直し好機。この分野はブロックチェーンが大きく寄与できる部分。コンソーシアム化などを大きく推進するのはどうでしょう。

○本人確認活用  複数企業横断利用を促す本人確認(KYC)
○電子契約活用  契約・決済を署名ベースで電子化
○トレーサビリティ活用 原材料・製造過程等の証明
○知財管理活用 知的財産権の権利関係を証明・透明化
○オープンデータ活用 ビッグデータ収集・活用プラットフォーム
○無人化 労働者不足や高齢者化に備えた無人配送、自動運転、ドローン支援

ビジネスの30-60%が付帯的に発生する事務業務だといわれています。頭脳となるAI/機械学習と、血流となるブロックチェーンを強力に推進し、物流・サプライチェーンのデジタル化を推進することで、効率の最大化を目指します。


対策5、イベントのデジタル化

野球、サッカーなどのスポーツや、ファッションショー、コンサートなどのイベントも全面的に自粛・・・この業界は大きくダメージを受けています。一方で、東京ガールズコレクションは無観客で開催。デジタル施策を駆使し無観客でも成果をあげています。こういったコンテンツ制作・コンテンツ配信に向けた補助金はあり。

○5G化
○AR/VR/MR化
○ビデオ・オン・デマンド化
○デジタルチケット化
○デジタルコミュニケーション

ネットコンテンツは世界に発信されますので日本ブランド向上に寄与してくれます。


対策6、飲食店舗のデジタル化

今回のコロナ・ショックでもっとも悲惨なのが飲食業界。来店してなんぼの世界。人がこないと商売あがったり。さすがにデジタルで支援できることは少ないですか、それでも飲食業界の基礎体力を底上げする施策は考えることができるかと。

○キャッシュレス推進
○事務処理のプラットフォーム化
・売上管理、税務管理の自動化
・仕入・支払管理の自動化
○P2P化
・農林水産の生産者と飲食店舗の直結化によるコスト低減

飲食店舗のレジリエンスは、経費の効率化による基礎体力増はデジタル化で支援できるポイントとなります。売上・経費データの一元化は脱税の防止を、生産者との直結化は地方産業の活性化もあわせて実現できる施策といえます。


対策7、働き方のデジタル化 テレワーク

日本はそもそも地震や火山活動の災害リスクをおった国。都市への過剰集中は災害時の経済活動におけるリスクを持ち、一方で交通混雑・ヒートアイランドなど多くの都市型課題をおこしています。
今回のコロナ・ショックによる外出自粛・テレワークは大きな経験となりました。通勤ラッシュなし、混雑なし。出社しなくても意外と業務はまわることに気づいた人も多いはず。テレワークならば、自宅にいようと、地方にいようと同じ。これを一層加速させるチャンス到来です。

○ガバナンス
・企業毎のCO2排出数値化、削減目標化
・リモートワーク・地方分散推進助成
・都心のラッシュ時・ピーク時の圧縮によるCO2削減
○地方拠点
・テレワーク可能な一村一拠点運動の展開 (参考:一村一品運動)
・5G化、サンドボックス化
・企業保養所の借り上げ活用
○スマート防災化
・一村一拠点の完全デジタル化と隣接エリアのスマートシティ化
・一村一拠点の(パンデミック時の)準医療施設化・隔離施設化

平時はテレワーク拠点に、緊急時は隔離に活用できる拠点を設け、都会からの人の受け皿とします。これにより都市型問題の解決、地方活性化、パンデミック対策に備えていきます。

●まとめ

まずは7つの対策をあげてみました。どれも緊急対策費の中の数%もあれば楽に整備できます。先例を持つ民間企業に対して補助する形でも、採用企業側の支援費でも充分です。民間企業がばらばらと実施することではなく、オールジャパンとしてプラットフォームを整備する領域もあります。

参考になるエストニア。エストニアでは国家レベルで、共通化・標準化された電子政府基盤を構築、政府機関、市民、企業・団体などをつなぐプロセスの効率化・自動化に邁進しています。保健医療分野では、個人識別コード(eIDAS)を軸に、電子健康記録(e-Health Record)、電子処方箋(e-Prescription)、電子救急制度(e-Ambulance)などが広く普及。2017年下半期、エストニア政府が欧州連合(EU)理事会議長国を務めた時に「デジタルヘルス社会(DHS)宣言」(関連情報)を提言するなど、国内外におけるデジタル化を積極的に推進しています。

世界がめざすのは「サステナブル(持続発展可能)な社会」。
自然災害が高い日本は「レジリエント(柔軟性の高い)社会」。
地球の環境を壊さず、資源も使いすぎず、未来の世代も美しく平和に豊かにずっと生活をし続けていける社会のことです。


コロナ・ショックがあってもこの目標に向けてぶれない姿勢、ぶれない経済対策。コロナ・ショックを好機到来と捉えた積極的な経済対策が展開されることを強く期待しています。

参考資料:
https://money-bu-jpx.com/news/article023870/
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2003/27/news027.html
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2019/kuma200327ET.pdf
https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g00837/

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