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ワクワクのおすそ分け -角野栄子さんご著書「おいしいふ~せん」

今回ご紹介するのは、角野栄子さんのご著書「おいしいふ~せん」です。

食をテーマに書かれた56のエッセイで、読むととても美味しく、楽しい気持ちになる本でした。


・内容紹介

めまぐるしく愛おしい88年間の日々を、『魔女の宅急便』の作者が食を通して描き出す、待望のショートエッセイ集。
『魔女の宅急便』の角野栄子が食をテーマに描く、待望のショートエッセイ集。
たんぽぽの汁を吸って亡き母を想った子ども時代、弟と1コの卵を分け合った戦時下、初めての味に驚きの連続だったブラジル生活、『魔女の宅急便』の読者から届いたゆすらんめのジュース……。
めまぐるしく愛おしい88年間の日々を支えてくれたのは、いつも“おいしいもの”だったーー。
角野栄子ならではのユーモアと温かみにあふれる文章と、カラフルで愉快なイラストを散りばめたショートエッセイ56編をオールカラーで収載。

おいしいふ~せん | NHK出版 (nhk-book.co.jp)

角野さんの素敵なイラストも満載で、どのエッセイを読んでも幸せな気持ちになります。
特に心に残ったことを書いてみます。

・美味しそう!

とにかく出てくる料理が美味しそうなのです。日常のご飯、海外旅行で食べた物、その一つ一つがとても魅力的に書かれています。

それは多分角野さんが、その食べ物をよく観察して、良さを味わっているからかなと思います。角野さんの「おいしい!」「おもしろい!」「きれい!」という感情が、文章から直接伝わってきて、こちらまで幸せになります。

・人との出会いが楽しい!

「メイズ・ビスケット」と題されたエッセイでは、イギリスの迷路で迷った経験が紹介されています。「ヘルプ!」と叫んで、同じく迷っていた人と会うことが出来た角野さんは、その人と助け合って何とか迷路を出たそうです。

この話が、ビスケットとどう繋がるかは読んでいただけたら思います。
最後まで読んで、旅先の出会いはたとえ一瞬でも、ずっと心に残るよなあと気持ちがあたたかくなりました。

・個性にワクワク!

角野さんは本当に個性的な方で、その個性やユニークさが本当に素敵だなと思います。

ただ日本では、出る杭は打たれるという言葉が示す通り、大変なこともあったのではと勝手に考えています。そしてそれをはねのけて、素敵なお話を皆さんに届けている角野さんを、尊敬しています。

個性に関して、角野さんの考えを知ることが出来る文章がありました。

「まだら、まだら」と題されたエッセイの中で、料理の先生から「おむすびのご飯は、あらかじめ、お塩を入れて、混ぜておくといい」と聞いた角野さんが、「それじゃつまらない!」と思ったと書かれていました。

ご飯全体全部にお塩が混ざっていたら、おむすびのご飯全部が同じ味になってしまいます。でも手のひらにお塩をぬって、握れば、味がまだらになります。そして食べると、お塩の味が薄いところ、濃いところと味が違います。それを、

味は「まだら、まだら」と口に迫ってくる。
そこがおもしろい、またおいしい。

と書かれています。枝豆をゆでるときも、ゆであがった後に塩をふるそうです。それは「おまめそれぞれの個性を尊重したいから・・・・・・。」そして最後はこう締めくくられています。

あらかじめ分かっちゃうのはつまらない。
たとえ毎日の決まりきった食事にも、そのワクワク感を感じていたい。
物語を読むときのように。

この文章を読んで、こんな素敵な考えの角野さんだから、一人ひとりの個性を尊重して、素敵な物語を作ってこられたのかなと思いました。

・終わりに

この本を読んで、自分にもワクワクする未来があるんじゃないかと思って、自分の人生も楽しみになってきました。

この本では少しだけ触れられているだけですが、戦争など角野さんにも大変な時期があったと思われます。
また角野さんは本当にお若く、元気に見えるんですが、このエッセイの中では自分に残された時間がどれぐらいあるのだろうと考えるときがあると、書かれていました。

魔法使いみたいに何でもできそうな角野さんも、制限を感じる中で前向きに対応されているだなと感じ、私もできる限り楽しい人生を過ごしていこう、思いました。

角野さんの映画も昨日から公開されています。いつ見に行こうかな~と、劇場情報を見ながら考えならが、今とてもワクワクしています。

年末年始の少し元気のない中、角野さんのご活躍には励まされて、とても感謝しています。お忙しいのではと思いますが、角野さんにこれからもたくさんのご多幸がありますように。