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編集部ピックアップ『夢か現か、それとも恋の物語。』

作品紹介

 水瀬秋人《みなせあきと》は大学三年生。恋人の香月絵理奈《こうづきえりな》を高校卒業と同時に失っている。絵理奈は物語を書く天才だった。その喪失を埋めるように、大学生になってから秋人は小説を書き続けている。でも一度も受賞できないまま大学生活も最終年度に突入しようとしていた。そんな時、親友の望月颯馬が連れてきた恋人の朝比奈舞と出会う。――これは現実世界のお話。

 エリナ・エルシフォードはフローレンス王国の公爵家の娘。双子の弟アキト・エルシフォードを五年前に流行り病で失っている。公爵令嬢でありながら引きこもりがちな彼女は、周囲の理解もないままに一人物語を書き続けていた。幼馴染で婚約者の伯爵家次男のウィリス・カッツェンは眉目秀麗で申し分のない男。それでもエリナは彼との結婚に気乗りがしない。そんな彼女の元に吟遊詩人レン・ミルドレッドが現れ、エリナの物語を「面白い」と言う。――これは異世界ユーレフラシアのお話。

 水瀬秋人はエリナ・エルシフォードの物語を書き。エリナ・エルシフォードは水瀬秋人の物語を書いている。
 そうやって、お互いに世界を超えて書き合うことで生き続ける二つの命と二つの世界の――恋のものがたり。

 朝比奈舞に勇気づけられて小説コンテストを目指す水瀬秋人の心は、揺れ始めてやがて……。
 ウィリスとの婚儀が進む中、エリナの住むフェリシアの街も戦乱に巻き込まれて、そして……。

 すべては香月絵理奈の願い。あらゆる物語の書き手の願い。
 それは書くこと、書かれることで、存在し続けて、世界を超えて繋がり続ける、願い。
 違う世界に住む二人は、夢の中で出会う。

 これは――夢か現か、それとも恋の物語。

著:成井露丸

 世界は人の認識が作り出す。

 『この世界は人の作り出したモノだった!』がどんでん返し的に来る物語は多くあるけど、一番最初からそれありきで物語がスタートする本作。

 つまり、世界がどうとか、真実とかそんなことはどうでも良いのです。これは大切な人を亡くした悲しみに固執し、捕らわれ、けれど、それを突き詰めた先、昇華させる物語であり、1つの答えがみつかる物語。

 すごいのは主人公達の執念。すがすがしいまでに爽やかで熱い思い。決して後ろむきじゃないのです。どう考えてもこの子達は前を向いている。固執しながらもそれを信じることで真っ直ぐ前を。

 だから読んでいてもモヤモヤせず爽やかに読むことが出来る。

強いなーって応援しながら。 そして、彼(彼女)の思いの強さが世界を構築し、やがて小さいながらも彼らにとって何よりも大きい奇跡を起こす。これはもはや趣味でもライフワークでもなくきっと使命であり生きる意味にまで発展している。その姿を見ていて何だか勇気づけられるし、応援したくなるし、とにかく自分も頑張るぞって気持ちが湧き出てくる。

 それと、物語を書く人なら一度は思ったことあるんじゃないでしょうか? この自分が作った世界、あるんじゃないかな?って。 それが実際にあるとしたら。僕らが書き続けることで存続するとしたら。 

 昔書いたあいつ、今どうしてるかなって僕は思いました。元気にしてるかな? また書こうかな? 今書いたらもっと良い世界に連れて行ってあげられるかな? 

 きっとこの物語を読んだらみんなも昔のあいつを掘り出して書いてあげたくなるんじゃないでしょうか!

作品URL
https://sutekibungei.com/novels/4f7b2a5e-b4f5-46e3-97c8-97b44829e6b4

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