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編集部ピックアップ『干天の慈雨【改稿版】』

葬儀の現場で働く青年・来栖仁朗(くるす じろう)はとある事件のために心に深い傷を負っていた。あえて感情を押し殺す仁朗を、唯一理解できるのがフラワーコーディネーターの同居人・橘悠介(たちばな ゆうすけ)。しかし、彼もまた優しすぎるが故に苦しみを抱えていて……。痛々しいけれど、美しい物語。

著:屋本くジら

死がつなぐ再生の物語

幼少期に姉を殺害された過去から、”心を無くした”ようになってしまった仁朗は、職場である葬儀場で、悲しみに暮れる遺族に心無い発言をしてしまう。そのことを週刊誌に報じられ、謹慎処分を言い渡される。
仁朗は、同居人の悠介には心を許していたが、このトラブルで二人の関係に亀裂が入る。

読みすすめると、仁朗や悠介の他にも、つらい過去を背負った人物が複数登場する。それぞれが死に関係している登場人物たちの、対立や嫉妬などが描かれている。つらい出来事に圧倒されそうになるが、お互いの内面をさらけ出し、支え合い、過去と折り合いをつけていくことで、死を生へ向かわせることができるのだ、と思わせてくれる。

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