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ナイフはどこまで落ちるか(3)

このシリーズの(おそらく)最後の回は奈落の底博士、英語名Dr. Doomで有名なルービニ先生の説を紹介します。先に述べておきますが、深く暗いです。

前回の金融危機の際には様々なショックのハラオチする解説を提供されたルービニ先生は、直近のProject Syndicateで今回の危機は、1930年代の大恐慌や、第二次世界大戦以上の影響があるとしています。その背景には、生産に関する活動が実際にシャットダウンされるのは、戦時中でも(これは国によって事情は異なりますが)なかったため、としています。

そのうえで、ベストケースシナリオとしてリーマンショック級の経済インパクトがあり、それを実現するためには、各国政府が新型ウイルスの広範囲での検査と追跡、隔離と中国で見られたロックダウンを実行すること、中央銀行が量的緩和や信用緩和をこれでもかというほど行うこと、健全な中小企業への融資が継続されること、GDP比2~10%の規模での巨大な景気刺激策が打たれること(ヘリコプターマネーを含む)、その国債は中央銀行による引き受けであること、等が「前提」として挙げられています。正直、息が詰まる内容です。

現状の各国政府の取り組みは上記にははるかに及ばないため、経済の停滞は「自由落下」し続けるとされています。相場の形をアルファベットで形容するならば;

neither V- nor U- nor L-shaped (a sharp downturn followed by stagnation). Rather, it looks like an I

という、救いのない方向性になります。新型コロナウイルスの蔓延防止もありますが、そうこうしているうちに次の疫病も流行るだろうし、中央銀行の直接引き受けが行われれば、どこかで物資不足をきっかけとした高インフレが訪れる可能性もあるとしています。

元々ルービニ先生は、この連載の前号でWhite Swanとして、米国が置かれている様々なリスクの中でも米国=イラン戦争がもたらされるリスクを述べていました。大統領選に絡んだ騒乱が起きる可能性や、世界がバルカン半島化する可能性を踏まえれば、それは暗い今後が待ち構えている、ということになります。

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ここまでの見方に対して皆様はどう感じるでしょうか。正直、私自身の暗い想像力を上回る内容であったのは事実です。ただ、今の状況は、例えば信用コストの水準だけで見れば、まだ、前回の金融危機のピークの半分までにしか至ってないような状態であり、これから本番が来る、という思いでいるのが、心の備えとしては良いのだとも思います。

現時点でのBBB格債券のスプレッド(長期時系列)

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Ice Data Indices, LLC, ICE BofA BBB US Corporate Index Option-Adjusted Spread [BAMLC0A4CBBB], retrieved from FRED, Federal Reserve Bank of St. Louis; https://fred.stlouisfed.org/series/BAMLC0A4CBBB, March 26, 2020.


ただ、同時に市場には明るい味方をする人たちがいるのも事実です。

良く株価が売られて下落する、という表現がありますが、奇妙ながら売られるときには、それを買っている人がいないと、売買は成立しません。どちらの圧力があるかはめちゃくちゃ大事ですが、常にいろいろな見方をしている人が市場にいる中での、とびきりの暗い例であることもご承知いただき、よろしければ原文も読んでいただければと思います。

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