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良いお年をお迎えください(2023)

本年も大変お世話になりました。

皆様どうぞ休めるときに休んでいただき、社会が変化する時代の心身をどうか労わっていただければと思います。

パブリック・アフェアーズ室は6名体制となり、今年は子育て政策や金融教育イベントなど、従来からの政策提言やサステナビリティ向けに加えて、活動の幅が増えました。個人的にも研究所設立(2015年)以来はじめてくらいの、業務の移譲を進めることができており、優秀なチームの面々に感謝することしきりです。

二つの標準化

一年を振り返ると、今年は代表理事を務めている電子決済等代行事業者協会が自主規制機関としての認定を取得し、その延長線として既存のAPIに向けた提言であったり、更新系APIの制度的パフォーマンスを決するであろう標準化について、調査と提言を重ねることができた点が大きな進展でした。現下、決済関連の標準化・ルールメイクは、例えば中央銀行がデジタル通貨を発行するにしても、何か新しい決済インフラを国として導入するにしても、オープンなメンバーで議論しなければイノベーションに付随した成長を見込むことができないものと考えています。その文脈で、目下の日本銀行での議論ではマルチステークホルダーアプローチがとられており、こうしたあり方は将来の日本の高度化への期待を体現するものと感じています。

また、税制に関わる進展を見ることができたことも大きかったです。10月のインボイス制度の施行は、社会のデジタル化を進める契機という捉え方もあれば、様々な現場における負荷を避けられなかったというイベントでもありました。その中で、当社としてはPeppolコネクトというサービスのローンチを行っています。Peppolは企業間でやりとりされるデジタルな請求書の標準化様式の一つであり、当社はデジタルインボイス推進協議会での活動を通じて、その日本における進展の一端に関わってきました。Peppolコネクトに室のメンバーがコアとなって開発から広報まで担当していることも、当社らしいのパブリック・アフェアーズ活動として誇らしいものがあります。国税庁や財務省でも、事業者のデジタル化がもたらす税のあり方の変化は大きなトピックであり、(僭越ながら)「うちの資料だっけ?」と思うようなデジタル化のビジョンが示されたり税務手続きのデジタル化に向けた研究会が設置されるなど、時代の変化を感じています。

上記二つの標準化は、マネーフォワード社が立脚する技術や、事業の存在意義とも密接にかかわるテーマであり、2024年もその議論進展に向けたあらゆる貢献をしていきたいと考えています。

サステナビリティに関する活動

瀧は、マネーフォワードのサステナビリティ担当役員をつとめてもうすぐ3年になります。この活動は大きくは、①現在のマネーフォワードにとってのサステナビリティの定義、②ESG評価機関への対応、③これからのサステナビリティに関するテーマの開拓/深掘り、に分類されます。

①について今年は、当社にとっての重要な非財務指標はなにか、という定義を行い「サステナビリティ指標」として公表しました。内容はぜひ統合報告書(p41)を見ていただきたいですが、一つ自慢を含めて例を挙げると、『マネーフォワード ME』の利用者における連携資産額は17.3兆円、うち資産運用額は7.7兆円(2022年11月末時点)、という数字があります。この数字は利用者の手入力ではなく、データ連携により裏付けられている数字であり、その大きさも重要ですが、運用資産比率が44%となることにぜひ着目いただきたいです。よく日本銀行の資金循環統計で計算される比率が直近で16.7%(欧州で33.3%、米国は56.2%)であることに鑑みると、マネーフォワードの家計簿サービス利用者は既に「資産所得倍増」の世界を生きているのです。

②のESG評価機関対応では、昨年の成果に甘えることなく今年も、MSCI ESGレーティングでA⇒AAの改善を見ることができました。去年の時点でも相当なストレッチができた中、このレーティングは自社のいるサブセクターでは国内で一番高い状況となっている理解です。この指標は世の中の趨勢や様々な要因により変動するものの、まずは当社の営みをローコンテキストに開示し、組織のレベルを高めるヒントを頂くフィードバック機会として生かしています。

③については、様々に手探りな活動をしています。マネーフォワードのサービス以外での社会貢献として典型的なものとして、金融リテラシーの向上への取り組みがありますが、学生に直接アプローチしたり、親や教員自身がもっと自信をもってレベルアップできる仕組みに注目し、その関連の活動を今年は個人としてもかなり実施しました。このような活動は土曜日に行われることが多いのですが、PTAや教員の皆様の研修会など、皆様の貴重な時間を用いて、子どもたちの未来に向けた知識の形成に携われるのは大変ありがたいことです。もしご関心の向きがあればぜひお気軽に、当方までアプローチいただければと思います。

また、ムーンショット感のある取り組みとして、政策提言でも取り上げていますが、家計簿や会計データを通じた温室効果ガスの算定があります。温室効果ガスの計算は、社会が税制や規制をかけていくにあたっても、低コストで網羅的、正確な推計を行っていくことが未来に向けたカギとなりますが、決済データは何等かの支出という網羅性があることが武器であると考えています。このテーマで本年は特許も取得しており、いずれサービスを通じた新しい未来像をお示しできればと考えています。

瀧の個人活動

上記の本業とは別途、瀧は個人としても様々な政策形成の場に所属しています。今年は3年目を迎えた規制改革推進会議の専門委員や、総務省におけるデジタル時代の放送制度の検討といった各種委員に加えて、デジタル行財政改革会議の有識者構成員にも就任しました。同会議に向けた思いは、そのまま会議への提出ペーパーとなっており、また、具現化した政策や報告書がアウトプットのすべてですので、そちらをご参照いただければと思います。個人的に、家計の健全化を国民が頑張ったとしても、政府の財政が不健全になることでそれが相殺されることへの危機感があり、デジタル化によって可能となる包摂性や、統計を再度社会を導くガイドとすることなど、パッションを持って提言しているテーマがいくつかあります。他のテーマが注目されがちではありますが、数十年後に向けて胸を張れる政策の礎に向けて、何とか貢献したいと考えています。

発信系

今年も、主なアウトプットは日経クロステックへの寄稿となりました。また、日経産業新聞にも定期的な連載があります。ただ、おそらくより多くの方々に、幸運にもリーチできるようになったのは#mffm かなと考えています。今年はあちこちで、聞いてますよ、と相当な各界の専門家に仰って頂いて、顔を赤らめる事態が発生しています。引き続きこちらもよろしくお願いします。

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今年は思い起こせば、西海岸初の金融危機もあり、FTXについてマイケルルイスが書いた本も出たりと、ニュースだらけの年でした。ただ、暗いニュースばかりでなく、2022年に冷え切ったのち、筋肉質になって雪解けを待ちつつあるFintech市況もあり、その一部始終がとても面白く感じる次第です。

また上記以外では、当室のメンバーも色々と関わりを持っていますが、プロトタイプ政策研究所の活動にコミットしています。今年でいうと、CBDC、統計情報、グレーゾーンそれぞれの提言に注力しました。所長の落合先生とは電代協のみならず、多くの公共系の活動でご一緒しており、このような専門家が増えていく社会には希望があるなと常に感じます。同研究所の今後の活動にもどうぞご注目ください。

エンタメ2作(映像編)のご紹介

はい、頼まれていないのに映像2点の紹介です。

今年の一押しドラマは #かぞかぞ でした。
瀧は公共放送のあり方にも政策面で関わっており、NHKの製作に対してバイアスのない立場ではないのですが、それでも今年はこちらに出会えて本当に良かったなと思っています。日々(現在も進行形)、様々な災厄が降りかかる原作者のご多幸を祈るばかりなのですが、等身大のドラマという概念を塗り替えるその存在に脱帽して拝見していました。

もう一つはバービーです。
バーベンハイマーのうち、今年日本に来ることができた本作は、マテル社自らのメタ認知のレベルを感じさせる展開でした。皮肉の社会学ともいえる内容をちゃんと描き切って、一度見たらなんらかの行動変容が起きる本作は、特に働く人皆が一回は見ておいた方がいいものと思います。余談ですが、男性が女性に(上から目線で)投資を教えるというテーマが出てくるのですが、出てくるのが国債・社債・CDと、高金利時代のリアルを感じさせるものでした。

本のご紹介

3冊に絞ることができず、1行コメントをいくつか書きました。他にも沢山素晴らしい本が出ていますが、通読できていない、、、

マイケルルイスのSBF本は、マスクの上下巻と同じくらい楽しめました。

松田先生のコンテナ会社ONEのドキュメント。ほとんどの人が興味を持っていない分野だと思うのですが、社内ベンチャー、成功するJVとは何かのヒントが多くあります。

少子化するアジア。少子化への対策とは、俯瞰するとこういうこと、という定見を持つための重要な一冊。

中山さんの一大労作。知ってたつもりで知らない事ばかりだったエンタメ業界の全体像を早送りで学習できる一冊。

黒い海、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した迫真の実話です。一生懸命仕事しよう、と思えてくる一冊です。

以上です。来年も様々に勉強し、発信し、提言していければと思います。

引き続きどうぞよろしくお願いします。  

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