佐藤 中本

この物語がフィクションだったらいいのにな

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転校生は村八分だった話

【前回までのあらすじ】 契約を切られた女性社員の生育歴やその困難を自分と重ねてしまった新井は、社会の理不尽を痛感すると同時に自分の被害者意識の強さ、未来に対する負の確信に苛まれ、社会に帰属し続けることに限界を感じ始める。 ※登場人物や店舗の名前は仮名です 新井は近頃、頻繁に過去を思い出すようになっていた。 過去十数年の記憶がわらわらと浮かんでは澱となって身体を重たくしていく感覚があった。自分の人生はどこからおかしくなったのか、自動的に再生される過去の記憶の中に敵を探しに行

    • 契約を切られた女性ときょうだいの話

      壮年の女性社員が契約を切られた。 もう3年前のことなのに、新井には思い出すたびに昨日の出来事のようにも、間近に迫り来る未来のようにも思えた。 あの人はきっと私だったと思う。 3年ほど前。 当時、懇意にしていた先輩と隔週の木曜日はパン屋へ行くというのが習慣になっていた。 たまたまその日、冒頭の女性、A子さんも「一緒に行きたい」というので特段断る理由もないため、3人でパンを買いに行くことになった。 道中、どういう経緯か忘れてしまったが、兄弟姉妹の話になる。新井と先輩は同じ長子

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