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【論文レビュー】地方企業の事業承継成功の「効果的な要素」は何か?.中村嘉雄(2023)

本論文では、商工会が、事業承継の支援を行うにあたり、効果的な要素についての研究を行っています。

中村嘉雄「商工会における事業承継の支援について‐承継時期と経営革新の効果に関する検証‐」(芸術文化観光学研究,2023)

J-STAGE  https://www.jstage.jst.go.jp/article/artsandtourism/2/0/2_123/_article/-char/ja/

本論文のポイント整理


事業承継の成功のためには、

● 現経営者と後継者がともに、若い段階で事業承継を行ったこと
● 事業承継の時期は、後継者が経験と学習を積む時間が確保できた段階で
● 要素は、「適切な時期」「経営革新計画策定」「商工会の伴走型支援」


仮説

商工会等の公的支援機関の伴走型支援による経営革新計画の策定が、企業の持続的な発展に有効に機能するのかという仮説について検証したい。」

P123

「先行研究から中小企業の事業承継においては、経営革新の重要性や商工会の役割が期待されていることがうかがえるが、その時期が遅れてきていることも指摘されている。また、地方の中小企業でM&Aによる事業承継は、規模や地域など条件面で折り合いがつかないこともあり、商工会の果たす役割について示唆されている。そこで事業承継を円滑に推進するための有効な手段について考察する

P125

研究の枠組み

 文献調査と質的調査(インタビュー)を組み合わせた手法で研究を行っています。研究の対象として挙げられていたのは、下記の12社です。
(1)企業ヒアリング  3社
(2)経営革新計画支援事例集 3社
(3)日本政策金融公庫総合研究所の事例 1社
(4)事業承継補助金採択企業 5社

結論

中村(2023)は、企業に対するヒアリング調査、事例集及び先行研究を調査の結果、「いずれも若い段階で事業承継を行ったことが成功要因となっていた」と述べており、また、「先代の急逝で引き継いだケースを踏まえると、事業承継の時期は、後継者が経験と学習を積む時間を確保できた段階で事業承継するのが好ましい」という結論にまとめています。さらに、事業承継の成功にける効果的な要素として、「適切な時期」、「経営革新計画策定」、「商工会の伴走支援」の3つの要素を上げて整理を行っています。

地方の小規模事業者にとって、事業承継の時点で企業の価値を向上させる経営革新計画の策定に一定の効果が見受けられた。そして、後継者準備期間等を勘案した上で可能な限り若い段階で事業承継を行うことが、成功の一要因になることもわかった。そして、商工会の伴走型支援が、経営革新・事業承継に更なる相乗効果をもたらしていることも判明した。本稿においては、『適切な時期』・『経営革新計画策定』・『商工会の伴走型支援』という3つの要素を取り上げた。この3つの要素を融合することにより、事業承継の推進に相乗効果(付加価値)が生じ、事業承継を成功に導いていると考えられる。」

P129

感想

本論文は、商工会等の公的支援機関の伴走型支援における取組の視点から研究を行っています。その結果、その事業承継の成功の要因として、「適切な時期」と「経営革新計画」の作成「商工会の伴走型支援」であったと結論付けています。事業者側からすれば、事業承継の問題は、なかなか人に相談することができない問題であることから、日頃から地域の巡回訪問などを行っている身近な商工会の事業承継における役割について理解することができました。


最後までお読みいただきありがとうございました!

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