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【地球温暖化懐疑本を読んで感じたこと・思ったこと】

『地球温暖化で人類は絶滅しない』という本を読みました。日本ではそれほど反響ないようだけど、アメリカの原書はアマゾンレビュー5000個超えという話題本。

読んでみようという気になったのは、facebookでつながっている方が、もともと環境意識が高くて「ゼロウェイスト!」とか「ギフトエコノミー!」とかおっしゃっていた方なのですが、「これを読んで考え方が180度変わりました」「エコ商品を買うのもやめて、人生がラクになりました。ぜひ服部さんも読んでださい」と、わざわざ本を送ってきてくださったため(稀有なきっかけに感謝♪)。

読んでみて、本当に興味深かったです。いろいろなことを考えた。はじめから終わりまで、ほぼ同意できる部分はなかったし、「なるほどこれは目からウロコだ」と思える部分もほぼ皆無。むしろ、隙だらけ、突っ込みどころだらけ、ほとんど"トンデモ本"に近い感じのする本だな…←と思ってしまったのですが・・・。

でも、実際、これを読んで「考え方が180度変わった!」と共鳴する人が多数いるわけで…。専門家サイドからも一部好意的なコメントも寄せられているようだし、何なら日本語訳をした方も環境省出身の大学教授だし…。

もしや「頭が固まってしまっているのは自分の方!?」と思ってみたり…。つくづく世界の「真実」はひとつではなくて、見る人の世界観次第なんだな~と、ある種絶望的な分断も感じた次第です。。

以下、感想(順不同で)。

★著者は「経済開発」や「技術の進歩」に絶対の信頼を寄せているらしい

曰く、(たとえ今、環境破壊が起きているとしても)「人類の力が(この先さらに)向上すれば、環境は保護できる」「摂氏4~5度温暖化しても、肥料、灌漑、機械化といった技術改善により、工業化以前より多くの食糧を生産することができる」(=だから心配ない)

おそるべき楽観主義!=万能感!=自己肯定感!・・・脱帽(←あやかりたい)。
まあ、気候変動で予測される問題の規模の過小評価と、人類の力の過大評価のダブルパンチなのでしょうが…。

★「技術の進歩」は全肯定なのに、「脱炭素の技術の進歩」はなぜか全否定…

曰く、「より多くの食糧やエネルギーを、より少ない土地で生み出さなければならない」(=効率の悪い自然エネルギーはダメ)「気候変動対策をすると、経済が阻害され、貧困が加速する」

なぜ、摂氏4~5度もの温暖化をカバーできるほどの技術革新が見込まれるというのに、クリーンエネルギーは技術革新しないと決めつけるのだろう? 摩訶不思議…。

★「経済成長により、自然災害の被害はどんどん減る!」という妄信

「自然災害による死者数は、1920年以来、人口増加にも関わらず、どんどん減っている」
「ハリケーンがフロリダを襲っても誰も死なないが、同じ嵐がハイチを襲えば、何千人もの人々が死ぬ」

世界大戦の時代の死亡率と比べられてもなぁ…。僕自身は、ここ数年九州や広島を襲っているようなレベルの豪雨もすごく怖いし、それが今後ひどくなっていくかもしれないと思うと、本当に不安ですが。

★途上国の現状を気候変動の悪影響と比較

曰く、「気候変動の悪影響よりも、今の途上国の悲惨な状況の方がよほどひどい」「たとえばコンゴは、道路と肥料とトラクターがあれば、もっと食糧を生産できる」
「貧しい国では、エネルギーや下水処理などのインフラ整備、水害対策の方が、プラスチックごみ問題よりも優先度が高い」それらが整備されなければ「人の健康への脅威はずっと大きなものとなる」

僕は途上国問題の専門家ではありませんが、よく途上国の問題は「お金の不足」よりもむしろ「お金が適切に使われない」問題だったり、紛争や差別や汚職や教育だったり…ということが言われます。だから、途上国の悲惨な現状は、言ってみれば「インフラ整備ができても解決できない問題」とも言えるし、それと気候変動が招く悪影響とはまったく同列に並べられない気がするのですが…。

★食料生産について

「より少ない土地でより多くの食糧を収穫する「近代化」と「集約化」をもたらすべき」
「ブラジルの牛肉生産は[…]成長が速くて栄養価の高い牧草に切り替え、肥料を使うだけで、1日の体重増加と乳量を3倍にできる。そうすれば、メタンの排出量を半分に減らすことができ、必要な土地も減らせる。」

これだけ「近代化」や「集約化」の弊害が言われている中で、そう来るか…(絶句)

そして、後半は原発の全面肯定へと進みます。

もちろん、「環境対策が逆に状況を悪化させているかもしれない」という批判的な検証は常になされるべきだと思うけれど、この本は、そうした建設的な検証というよりは、「環境政策=完全な間違い」「現状=問題なし」と決めつけている感じなのがやっぱりすごい違和感。

先日、プラスチック問題の第一人者の方から、偏った懐疑論を見分けるポイントとして、「変化を否定し、現状をよしとする主張には要注意!」と教えていただいたのですが、まさにそれ。「現状維持」という何らかの強い動機が働いているのだろう・・・

・・・と思いながら、黒豆汁粉をすすりました。自分でつくった黒豆。うまい(自画自賛)。 このおいしさは紛れもない真実です(ま、それとて人の好みですけどね)。

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