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持続可能性の経済理論についての講義ビデオが完成しました。

「環境政策論」に引き続いて千葉大学法政経学部の「環境経済論」の講義ビデオが完成しました。「環境経済論」といっても新古典派経済学にもとづくenvironmental economicsではありません。ecological economicsを発展させて構築した独自の理論体系となります。講義ビデオには写していますが、ほぼ一冊の本を書き上げています。どこか出版してくれないかなぁ。

VIDEO 1  講義全体のイントロ(講義プランなどを説明しています。)

VIDEO 2 GDPは不完全な経済指標である(経済成長率を経済運営の指標とすることは、「私」×「フロー」×「名目」という経済の一部分のみに着目することとなるものであることを説明しています)

VIDEO3 経済学は自然の恵みを忘れてしまった(経済学説史を振り返って、自然の恵みという生産要素を捨象していった過程を追います。)

VIDEO4 経済学は富の物質的基盤を忘れてしまった/ミクロ経済学とマクロ経済学の出自(経済学説史を振り返り、限界革命を経て、希少で効用があればその富が物質的か物質的かは問わないという考え方が定着していったことを説明しています。また、ミクロ経済学とマクロ経済学はどのような経済学かを概説しています。IS-LMも説明したかな。)

VIDEO5 ごみがでない生産の理論(ミクロ経済学の基本構造を、1財1生産要素の簡単なモデルで説明します。まず、生産の理論になります。)

VIDEO6 ごみが出ない消費の理論(ミクロ経済学の構造を引き続き説明します。消費の理論になります。バックワードベンディングも説明してます。)

VIDEO7 市場での価格調整・物的基盤から遊離した経済学が受け入れられる理由(市場での価格調整によって、経済的な福祉が最も大きくなる点で取引が行われるという「お話」を説明しています。余剰分析を使って、独占・寡占や誇大広告を防止しなければならない理由も説明しています。)

VIDEO8 「外部性」として把握される環境問題(新古典派経済学がどのように環境問題を把握して、処理しているのかを説明しています。外部性の内部化というお話です。)

VIDEO9 物質基盤から遊離する経済学が受け入れられない理由(なぜ、外部性として環境問題を把握することが問題かを説明しています。)

VIDEO10 物的基盤を取り戻そうとする試みとエコロジカル経済学(経済学説史の異端的な学問分野であるエコロジカル経済学について、その源流となる学説とともに紹介しています。宇沢弘文先生の社会的共通資本の考え方も説明しています。)

VIDEO11 持続可能性とは何か(持続可能性について、持続可能な発展という概念、SDGsを簡単に説明したあと、持続するものは何かという視点からアプローチします。強い持続可能性基準・弱い持続可能性基準、ハーマン・デイリーの三原則についても触れています。)

VIDEO12 持続可能性の経済学の基本概念(VIDEO11の議論を受けて、資本基盤と通過資源からなる経済理論を構築することとします。資本基盤は、有用性を提供した後も有用性を提供するメカニズムが失われないもの、通過資源は、有用性を提供すれば生産財や消費財に体化して失われてしまうものです。資本基盤は社会の持続可能性に直結します。通過資源は環境負荷量に直結します。)

VIDEO13 ごみがでる生産の理論(資本基盤と通過資源からなる生産の理論を説明します。生産物の物量を決定するステージと、生産物のサービス量を決定するステージの二段階の生産関数となります。)

VIDEO14 ごみがでる消費の理論(資本基盤と通過資源からなる消費の理論を説明します。労働が、省資源労働と賃金労働に分けられます。消費の理論から、経済全体の脱物質化が技術発展の望ましい方向であることが示されます。また、生産の理論と消費の理論を通じて、適切に価格が与えられた場合には、利潤最大化・効用最大化を旨とする経済主体においても、環境対策が行われることが示されます。)

VIDEO15 市場外の価格決定とその市場への伝達(通過資源マネジメントの理論の初回です。市場で価格決定しても構わない価格体系と、市場外の価格決定が必要な価格体系が区分されます。後者については、科学的知見を踏まえ安全率を見込んで市場外で決定されなければならないことが述べられます。市場外で決定された価格をどのように市場主体に伝えるかについても説明します。この部分は、environmental economicsの知見と共通します。)

VIDEO16 エコロジカル効率(通過資源マネジメントの二回目の部分です。ハーマン・デイリーの包括的エコロジカル効率を改良して、通過資源を投入して行う生産活動を評価するためのエコロジカル効率を提唱します。)

VIDEO17 資本基盤マネジメントの理論(存在すべき資本基盤量について、アマルティア・センの潜在能力アプローチに基づいて説明します。また、「ケア労働」について定義し、人口減少局面において「生産労働」に並んで「ケア労働」が重要となることを述べます。さらに、資本基盤の維持管理についての5つの原則、資本基盤の新規投入と廃止に関する方針を説明します。最後に、「完全ケア」「1人あたりの健全な資本基盤量」といった新しい経済運営指標を提唱します。)

学生時代に経済学を学んで、新古典派経済学もマルクス経済学も、環境問題を取り扱えていないと思ってからずっと考えてきた経済理論体系がひとまず完成したような気がします。新型コロナウイルスでメディア講義になった副産物ですね。

なお、資本基盤マネジメントの理論に基づいて展開しているものが、未来カルテになります。未来カルテの作り方は、VIDEO17で述べている資本基盤量の将来予測の方法に沿っています。

環境政策の動きについての講義ビデオも完成しています。こちらは、倉阪秀史『環境政策論第3版』(信山社)の第4部の改訂版に当たる内容を含みます。


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