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ジョルジュ・スーラ 《グランド・ジャット島の日曜日の午後》 〜 アートの聖地巡礼(米国)

19世紀の新印象派の画家、ジョルジュ・スーラ(1859-1891)のあまりにも有名な《グランド・ジャット島の日曜日の午後》(1884-86)。現在、シカゴ美術研究所(シカゴ美術館)に所蔵されており、19世紀で最も重要な作品のひとつとして考えられている(*1)。

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スーラといえば分割描法だ。膨大な小さな色の点を用いて描くその技法は、点描画法ともいう。今回、紹介する《グランド・ジャット島の日曜日の午後》を制作するために、スーラは数多くの習作を残しており、この作品に対する彼の力の入れようがわかる。

それはそうと、《グランド・ジャット島の日曜日の午後》は、実に不思議な作品だ。一見、額縁のように見える縁取りも様々な色の点の集合体で描かれている。よくみると、様々な階級の人々、動物たちが、動きがある、ないにかかわらず、全て同じトーンで描かれているようだ。しかも無表情な顔ばかり。日曜日ののどかな風景を描いている、と言いたいところだが、不気味な雰囲気がただよう。

この作品をみていると、パリの郊外にあるグランド・ジャット島を日曜日の午後の風景を描いているはずなのに、なぜか、この作品が所蔵されているシカゴ美術研究所を思い出す。


昔、シカゴに住んでいた。

シカゴのミシガン・アヴェニューにあるシカゴ美術研究所は、ダウンタウンのループ(地下鉄)から歩ける距離。当時、車が運転出来ない私でも、ひとりで行くことが出来た。

ミシガン・アヴェニューは、ニューヨークでいう五番街みたいな大通りだけれども、ニューヨークよりは、こぢんまりしてた。

当時のシカゴ美術館は、アップタウンとダウンタウンの境にあった。だから、「ミシガン・アヴェニューは、若干安全だけれども、美術館の右側へひとりで行ってはいけないよ」と言われていた。今は、変わったかもしれない。

シカゴは、ミシガン湖の森林の中にある豪邸のエリアと、労働者が住むエリアが交互に存在した。米国では、よくあることだと思う。

建築通であれば、シカゴ派はご存知だろう。シカゴの建築は、ニューヨークとは異なる。どう異なるか説明出来ない違い、がある。それこそ、シカゴのダウンタウンから労働者が住むエリアを越えると、フランク・ロイド・ライトの建築物が点在するオーク・パークがあった。

シカゴは、本当にジャズが似合う米国の都市だったけれども、当時の私にとって、シカゴ美術館へ行くのは、決死の覚悟だった。ただ、美術館の中に入れば、そこは静寂と共に大好きな作品が所蔵されている空間。今、考えれば、「アートの聖地」だった。

11月はじめの日曜日の午後。遠いシカゴを思い出しながら、なぜかフランスの画家の作品を思う。


NOTE:
*1.クリエイティブ・コモンズ・ゼロ、以下より引用。
https://www.artic.edu/artworks/27992/a-sunday-on-la-grande-jatte-1884