'22英連邦大会男子1500m王者オリバー・ホアの教え
今年の男子1500mのベストレースを挙げるとしたら、以下の英連邦大会(2022年8月5日)の1500m決勝のレースだろう。
戦前は、ユージン世界選手権優勝のジェイク・ワイトマンや、東京五輪銅メダリストのジョッシュ・カーなどの※スコットランド勢が、同大会4位のアベル・キプサング、同大会銀メダリストのティモシー・チェリヨトのケニア勢との優勝争いを繰り広げるとみられていた。
※英連邦大会の時はサッカーのUEFA欧州選手権と同じ様にイギリスでの出場ではなく、イングランド、スコットランド、ウェールズと代表選手が分かれる。
レースはまさにその通り、最後の200mで先頭に立ったワイトマンがユージンの時の再現と言わんばかりのレースをみせたが、最後の50mで勢いが鈍り、外からチェリヨトが交わした。しかし、最後の最後で先頭に立って歓喜のフィニッシュを迎えたのが、東京五輪ファイナリストの ※オリバー・ホア(オーストラリア)だった。
※ 英語の愛称読みでオリー・ホー(Ollie Hoare)
Not one race defines you. Fight for your legacy. The commonwealth games 1500m title is coming home to Australia 💚💛 出典:Instagram:Ollihoare 1つのレース(の結果だけ)がキャリアを定義するわけではない。レガシーのために戦うんだ。英連邦大会1500mのタイトルはオーストラリアに帰ってくる 💚💛 (←オーストラリア のカラー)
このインスタグラム の彼の投稿の最初の部分であるが、ユージン世界選手権でのレースを含めて記載している。
彼は英連邦大会で優勝する3週間前に、ユージン世界選手権で準決勝敗退となってしまった。私はこのレースを現地で観ていたが、ホアが今年に1マイルで3:47.48のオセアニア記録をマークしてダイヤモンドリーグ で上位に入っていることなどを考えれば、決勝に進めなかったことは少々意外だった。
準決勝敗退とはいえ、周りを見れば豪華なメンバーが揃っていたと思う。このレースについて彼は以下の様に振り返っている。
この大会に向けて最高の練習とパフォーマンスをしてきたのに、それの成果を発揮することができず、決勝に進むことができなかった。時には失敗することもある。その理由を思い浮かべることはほとんどできない。ただ、母国と応援してくれる人たちに誇れるようなプレーができた。このスポーツは、人々の記憶に残る時間が短い。この大会のことを忘れず、今後より良いものにしていきたい。応援メッセージを送ってくれた皆さん、ありがとう。
この投稿を見て、良いと思ったのが、レースのパフォーマンスには満足してはいないが、「サポーターに誇れるようなレースができた」と綴っていることだ。
次に向けて切り替えること(モチベーションを保ち続けること)はそう簡単ではないが、これまでの過程に自信を持っているからこそこのように綴れるのだろう。結果が悪かったからといって、決して誰かに謝ったりすることはない。こういった姿勢は今の若い選手のお手本となるのではないだろうか。
ユージン世界選手権での準決勝敗退から英連邦大会でケニア勢、スコットランド勢を破っての金メダル。これは決して"まぐれ”ではなく、彼が高いモチベーションを持ち続け、これまでのトレーニングの過程に自信を持ち、自分を誇りに思い、自信を持ってスタートラインに立ったゆえの結果だったといえるだろう。
余談になるが、ホアと同期で同じオーストラリア のシドニー育ちのモーガン・マクドナルドはOAC(オンアスレチッククラブ)のチームメイトであるが、マクドナルドがウィスコンシン大学マディソン校に米国留学したのを追いかけていったのがホアである。
その後、2人は共に全米学生王者となり(マクドナルドはクロカンと屋外5000m、室内3000/5000mで全米学生王者、ホアは1500mで全米学生王者に)その後、紆余曲折を経て今ではまたチームメイトとなっている。また、チャーリー・ハンター(UAC、室内800mオーストラリア記録保持者)も彼ら2人と同じオーストラリア の同期である。
この25-26歳世代のオーストラリア の3人が今後、世界大会で活躍していく可能性は十分に考えられるが(3人ともオーストラリア代表として東京五輪に出場)今回のホアの英連邦大会の優勝が、ユージン世界選手権での失敗レースからの起死回生の快走だったことをここに強調しておきたい。
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