やられたらやり返す・・・


 VALORANTというゲームがある。eスポーツの普及に伴って、近年隆盛を極めるFPS系ゲームのなかでもApexと並んで遊ばれているゲームだ。自分はVALORANTをプレイしたことはない。でも、大好きなストリーマーが配信でプレイしているのを視聴しているのでどんなゲームなのかは何となくわかっているつもり。

 このゲームでは敵をキルするとデン!と音がなる。クイズ番組で問題が出題されるときのデデン!に近い。さらにキルしたあとにもう一度キルすると、さっきより少しだけ高めの音でデン!と音がなる。VALORANTは5対5のゲームなので、5回デン!が聞ける計算になる。(5人目まで行くと豪華なデン!になった気がするけどその辺はうろ覚え)

 このデン!に何か聞き覚えがあったなぁと脳みそを引っ掻き回したところ、思い当たったのがポケモンスタジアムだった。20数年前にゲームボーイで発売されたポケットモンスター。モノクロのドット絵で戦うポケモン達、その姿をテレビで!カラーで!3Dで!見ることのできるゲーム、それがポケモンスタジアムだった。付属のアタッチメントをニンテンドー64のコントローラーに装着してゲームボーイ版のカセットを差し込めば、育てたポケモンを使うこともでき、自分の相棒の雄姿を大迫力で拝むことができた。このポケモンスタジアムのOPにデン!が出てくるのだけど、そのデン!がVALORANTのデン!によって甦ったわけデン!


 思い出されるポケモンスタジアムの記憶。それは夏休みに友達を誘ってポケモンスタジアムで対戦したときのこと。友人が率いるは彼と苦楽を共にした精鋭部隊。ポケモンにおいて、お供として連れていけるのは6匹。その全てがレベル80オーバーの怪物達。対するこちらはレベル平均30弱の烏合の衆。しかも4匹。なぜこんな戦力差があるかと言えば、僕はレベル上げのような作業が死ぬほど嫌いという、なんでRPGなんかやってんの?と言われるような理由からであり、当然の帰結として友人のポケモン達は一匹として欠けることなく僕のポケモンを全滅させた。
 
そもそもなぜ大した戦力も持たないのに友人をポケモンバトルに誘ったのか。思い出そうにも当時の思考も感情も風化してしまい、残ったのは負けてむくれた挙げ句に、ゲームをしていた居間に友人を残して自室に引きこもってしまった記憶だけ。

 数十分後、母にキレられながら居間に引き戻された僕は友人に謝罪。仲直りして仕切り直しとなった。しかし互いのポケモン達の圧倒的な戦力差はそのままであるため、このままでは試合にならない。そこで提案されたのがレンタルポケモンの使用だった。

 レンタルポケモンはゲーム側で用意したポケモンをレンタルして使えるシステムであって、ゲームボーイ版を持たなくてもポケモンスタジアムで遊べる任天堂の親切設計のことである。友人はこれを使えば楽しくバトルができると提案してくれたのだ。友よ・・・

 さらに優しき友が勧めてくれたレンタルポケモン達は全員レベル100。限界まで鍛え上げられた怪物の中の怪物達。しかもサンダー、ファイヤー、フリーザーといったポケモンの世界では伝説のポケモンという位置付けにある最強のポケモン達が揃っており、いかに友人のポケモンが強いと言えども、戦う前から僕の勝ちは明らかだった。要するに最初の1戦目と立場が逆転しただけである。これではお互いが楽しめる試合にはならない。

 僕も友人もそんなことはわかっていた。わかっていて指摘するようなことはしなかった。これでいいのだ。友人はタコ殴りにされた僕を元気付けようと接待を申し出たのだ。10歳にも満たない子供が見事な忖度、頭が下がるばかりだ。僕も友人の気遣いに感謝するとともに、その厚意を無下にしないようありがたく受けとることにした。

 結果としては僕の圧勝。天下無双の最強レンタル集団で友人のポケモンを完膚なきまでに叩きのめしました。本気で喜ぶ僕を見る友人の眼差しが少し冷たく感じたのは部屋の冷房が効きすぎていたからだと思う。

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