11/10 分かっちゃいたけど独特だった、南京大虐殺記念館
米中の貿易摩擦を受けて近寄りつつある日中ですが、歴史に関しては双方ともどうにもできない頑なな点があります。
南京大虐殺記念館に行ってきました。タイトルにつけたように、わかってはいたけど独特でした。
この記念館がどう独特だったか。
まず、中国国内の他の博物館や展示施設と比べると、圧倒的に綺麗なんです。施設が新しいこともあるけれど、演出がとても丁寧。
緩急つけて数字を強調していたり、日本軍と中国軍の当時の戦力比較をインフォグラフィックで表現していたり。他の博物館はよくある博物館みたいに展示物と説明文の2パートがあって完結しますが、ここは表現方法が多彩で賑やか。本当に分かりやすく、詳細まで写真、文、映像を使って説明し尽くしているのです。
説明の手法としても、感情に訴えかけるような書き方だと感じます。英語訳で日本軍をevilだと何度も言及していたり、残虐非道さを強調し、南京の市民がそれに服従するしかなかったという旨を各方面から証明しようとしています。
ここには載せませんが、日本軍によって生き埋めにされたとされる人々の遺骨が、ガラス床から見えて写真が撮れたり。
日本の歴史教育ではほとんど触れなかった(私が世界史選択だったからか?)当時の中国部隊の司令官、松井石根がなんども登場してきます。
これもなかなかないこと。中国の皇帝なら何度も何度も登場しますが、この一人物を何度も取り上げるのです。
また、これはいまわたしがハノイにいて、ベトナムの歴史博物館を見てきたからいえることかもしれませんが、論調がこの二カ国では正反対といえるほど違います。
中国は、この南京大虐殺にフォーカスしたこの記念館においてですが、日本軍の蛮行を様々な観点から取り上げます。略奪、放火、殺人、そして性的搾取。蛮行と一括りにせずにそれぞれを論点別にしっかり描き出し、何が行われたか示すことで、日本軍の残虐非道を押し出すのです。
大虐殺はされなかったものの、同じく日本軍に侵攻されフランスに長い間服従させられていたベトナムは、侵略者の記述はそこそこに、侵略の下で団結をしようとして長い期間懸命に戦った民衆と、そのリーダーを称さんする論調。特にホーチミンの功績を大きく強調し、敵国の非道さやどのような略奪、冷遇だったかはあまり記されません。
両者とも平和の希求で展示を結論づけているものの、後味は異なります。
比べる対象が、南京大虐殺の記念館とベトナム全土の歴史博物館では平等ではないことは重々承知だし、歴史も全く違うものですが、論調の方向性の対比として、正反対だったと感じています。
もちろん、政府の設置する施設やその展示にはすべて意図があり、自分自身も全くのニュートラルでは全くないことは自覚しています。この南京大虐殺記念館を見て、こう思った!と結論づけることはできていないけれど、確かなのは、中国人は確かにどこでも淡を吐くし声も大きいけれど、荒っぽいながら外国人に優しくしてくれるし、記念館を見たところで、その周辺で半日デモが起こっているわけでもないということ。
論点が大きくなってしまうけれど、いってみなきゃ、接してみなければ分からないことがたくさんあるのだから、誰かの意図で作られた教育や、考え方を持っているけれど、でも自分の肌と体で感じたことを素直に信じてみようと思っています。
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