ちゃんとした傘を使ったことがない
子供のころ、ちゃんとした傘を使ってたことがない。
そんなことはない。
最初は新品の傘だった。
だけど、その日のうちに壊れる。
新品の傘ってうれしいよね。
早く使いたい。
だけどなかなか雨にならないからなかなか使えない。
いざ、雨が降ると傘をつかえることがうれしくてたまらない。
くるくる回しながら歩いたりさ、振り回して裏返したりしてさ。
そんなことやってるうちにどこかの骨が壊れるよね。
だいたい初日で壊す。
だからいつも壊れた傘を使っていた記憶しかない。
高校の時、久しぶりに新しい傘をもらって、壊さないように使おうと決心した。
でさ、玄関の傘たてに立てて、帰りにその傘をもって帰るよね。
おかしいんだよ。
たしかに、自分の傘を選んで帰ってきたはずなのに、気がついたら全然見たことのない傘を握っていた。
え?
誰かすり替えた?
いつ?
いや、そんな隙はない。
選ぶときに間違えてるんだよね。
行くときは新品の傘だったのに、帰りは誰かの使い古しの傘に変わってる。
地味にショック。
仕方ないから高校の間は、その誰かの傘を使い続けたよね。
傘たてに入れといたら、本来の持ち主が見つけて持って帰ることもあるかと思ったけど、なかったよねー。
俺は女にも傘にも縁のない男だ。
気持ちだけで結構なんですよ