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【ジャカード織生地が出来るまで】vol.3 工程②:織物の設計図づくり、工程③:紋紙の作成 ~機屋の原風景をつくる音~

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本シリーズでは、群馬県桐生市にあるジャカード織物を制作している機屋・須裁株式会社が、ジャカード織生地が出来るまでの工程をご紹介しています。

過去の記事も是非こちらからご覧ください:

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本日は、ジャカード織生地の製作工程で、「工程②:織物の設計図(組織データ)づくり」「工程③:紋紙の作成」についてご紹介していきます。「工程②:織物の設計図(組織データ)づくり」と「工程③:紋紙の作成」は、実際には「工程④:原料(糸)の仕入れ」「工程⑤:染色」と併行して行われますが、ここでは順を追ってご紹介していきます。

【ジャカード織生地製作の全工程(先染めの場合)】
工程① 全体構想
工程② 織物の設計図(組織データ)づくり
工程③ 紋紙(もんがみ)の作成

 ※デジタル織機を使う場合は無し
工程④ 原料(糸)の仕入れ
工程⑤ 染色(せんしょく)
 ※「後染め」の場合は「製織」後に実施
工程⑥ 整経(せいけい):経糸(たていと)の準備
工程⑦ 製織(せいしょく):織り
工程⑧ 整理(せいり):生地の風合いの仕上げ
工程⑨ 加工
 ※生地によっては無し
工程⑩ 梱包・出荷

前回解説した「工程①:全体構想」で、使用する糸の太さや各素材の混合率、柄をどうやって織り上げるかや仕上げの方法などを計画したあと、まずは織物の組織データを製作する職人に、今回の生地製作に使用する架物(ジャカード織物づくりで欠かせない機械)を伝え、生地の柄の幅や、経糸(たていと)・緯糸(よこいと)の種類や本数などの情報を把握してもらいます。

織物の組織データを製作する職人は、パソコンの専用ソフトを使って、織物の構図を作成していきます。構図が完成すると、それを見ながら織物の基本となる三原組織の組み合わせで、織物の経糸と緯糸により構成される織物の「組織」をどう構成するかを考え、データに落としていきます。

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【写真:織物の組織データを製作する職人が、パソコンの専用ソフトを使って、織物の組織構成を作成していきます。モニターでは、作業上分かりやすくするため、実際の色味とは違う色で表示させます。】


昔はこれを紙に手書きで描く専門の職人がいましたが、現代ではほとんどの織物工場でこの工程はデジタル化され、作業が効率化されています。

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【写真 上下:昔はこのように方眼紙に色を塗り分けて組織構成を作成していました。今となっては想像しがたいほどの膨大な作業です…!】


とはいえ、デザイナーから伝えられたデザインイメージをもとに、組織データに落としていく作業は決して容易ではありません。専門の職人が、組織の組み合わせを調整し重ねていくことで、初めて美しい織り柄が完成します。柄が綺麗に出たとしても、タテヨコの糸の噛み合わせが緩くては生地として弱くなってしまい商品化出来ないため、データ化の工程でも気をつけなければならないことが沢山あります。

組織データが完成したら、サンプルの糸を使用して試し織りをし、出来上がりを確認します。試し織りはデザイナーにも確認し、イメージするものに近寄せていきます。「これで行こう!」と思える組織データが確定したら、デジタル織機を使う場合はデータをそのまま織機に読み込ませ、紋紙(もんがみ)を使用した従来型のジャカード織機を使用する場合は、紋紙の作成に移ります。

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【写真 上下:<デジタル織機を使う場合>織機に組織データを読み込ませます。データはwifiやUSBなどで織機へ移します。少しであれば、織機の液晶画面でも修正が可能です。】

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【写真:<デジタル織機を使う場合>こんな感じに織り上がってきます。】


紋紙とは、ジャカード織機で図柄を織るために用いられる型紙のことで、段ボール紙のような厚紙に穴が無数に開いています。穴の有無によって経糸(たていと)の上下の動きを制御し、織物の模様を生み出していきます。紋紙は別名、パンチカードとも呼ばれ、実際に初期のパソコンで使用されたパンチカードの考え方の元になったとも言われています。
紋紙を作成するのは、「紋切屋(もんきりや)」と呼ばれる専門の職人さんです。弊社のある群馬県・桐生市にもまだ何軒かの紋切り屋さんが残っていますが、近年のデジタル化の流れを受けて年々減っている専門職でもあります。紋紙に使用する紙質によって、織り上げる生地に傷を作ってしまうこともあるのですが、その材料が国内では手に入りづらくなってきているのも一因のようです。

【動画(※音が出ます):<従来型の紋紙でジャカード織機を使う場合> このような機械で、紋切屋さんに紋紙を作成してもらいます。こちらは紙に穴をあける機械。】

【動画(※音が出ます):<従来型の紋紙でジャカード織機を使う場合> こちらは、穴のあいた紋紙の端を縫って繋いでいく「編み機(あみき)とよばれる機械。人が1枚ずつ紋紙を設置することで、穴あきの不備が無いかも同時にチェックしていきます。】

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【写真:さらに昔は、紋紙の穴あけ作業を、「ピアノマシーン」と呼ばれるこの機械で行っていました。紋切屋さんは、この機械の名前の通り、色塗りされた方眼紙を楽譜のように読み、10本の手の指を使ってピアノを弾くようにキーを操り、穴あけをしていたとのこと。こちらも今考えると神業ですね…。今は使っていない機械です。】


紋紙を使ったジャカード織機が生地を織り上げていく風景は、残念ながら今後減っていってしまうのかもしれません。ですが、紋紙を少しずつ読み取って送っていく「ガシャン、ガシャン」というジャカード機の音は、昔ながらの織物工場の原風景になっていて、何となく落ち着く温かい音でもあります。

【動画(※音が出ます):ジャカード機のある織物工場の原風景


次回は、「工程④:原料(糸)の仕入れ」、「工程⑤:染色」についてご紹介していきます。

※本noteで掲載している記事は、SUSAI(須裁株式会社)公式ウェブサイトでも発信しています。是非こちらもご覧ください。

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