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Vol.1:CHET BAKER SINGS【チェットベイカーシングス】こんなヘナチョコ声でもジャズシンガーやっていけるんだ!と勘違いした19の春

チェットベイカーの物憂げな横顔に憧れた北九州の19歳

大学を中退した。
学校でやる「デザインの授業」に飽きたから。というと聞こえがいいけど、本当はお金が続かなかったから。
ちょうどそのタイミングで地元北九州のデザイン事務所に入り浸るようになっていた。もちろん、デザイン事務所のバイト代では暮らせないので、アルバイトを掛け持ちしてた。
その頃1984年、レンタルレコード、中古レコード、輸入レコード屋さんが、最新の音楽情報の入手先だった。
ギターは持っていたけどバンドなどの活動はやってなく、「純粋なリスナー」だった僕は、小倉の街中から少し離れたレンタルレコード屋さんでバイトすることになった。
そこは1階がレンタルレコード、2階が中古レコードをあつかっていて、買取査定も教わり、個人の裁量で任されていた。

あるときジャズのレコードを大量に買い取りに持ってきた男性がいた。ジャズっぽさのまったくないサラリーマンで、古いレコードが山のようにあった。ちょうど僕の査定するタイミングで、一枚一枚、ランク分けされたリストを見ながら値段をつけていた。
そこで気になったのがこの「チェットベイカーシングス」というレコード。なにしろ元気がなさそうだ。
赤と黄色と青緑に三分割された上にモノクロのチェットが歌を録音してる写真。白いTシャツで。
「ああ、シンガーなんだな」
ジャズシンガーに「歌がうまくて、自信満々で、なんやら金のにおがする」というイメージを持っていたけど、それとはちょっと違うぽい。
ブルーノートをはじめジャズのレコードのジャケットはデザイナー志望の10代にはたまんないものがあった。中身はちっともわかんなかったけど。

優しいトランペットに続き、店内に響く静かな鼻歌?THAT OLD FEELING

お店のお客が着れる瞬間を待って、レコードをターンテーブルに載せてみた。ジャズっぽい(と19歳が感じる程度の)リズムと寂しげなトランペット。基本はメジャーコードなはずなのに、なぜか暗い。
見た目通り元気のない音。
そして始まったうた。

なんだこれ?
日本語の解説書が中に入っていたので読んでみた。
「ホモセクシャルで気持ち悪い声」と言われてることや、レコード会社パシフィックのなかでも異例の大ヒットになったのは「普段ジャズレコードをかわないその手の人たちが買ったから」なんて書かれていた。

その儚く妖しい感じが、まさに僕にはぴったりだった。
大好きなナットキングコールとはまた違う、麻薬の香りがするジャズ。

超有名曲「マイファニーバレンタイン」なんて、確実にアヘン窟で録音したような(勝手な妄想笑)

ロックやポップ合わせても一番聞いてるレコードかもしれない【チェットベイカーシングス】

あれからもう40年経つけど、いまでも一月に一度は聞いている。CDでだけどね。
チェットは「声量とか歌の凄さみたいな測りやすい物差しでシンガーを測らなくていいよ」といってくれたような気がする。
歌はすごい迫力の人が歌うもんだ、あれは天性のものなんだって思っていたけどね。
僕にとってのチェットベイカーとルーリード、レイデイビスはまさに「あんたの声であんたの歌をうたえよ」と言ってくれた人。

ジョーパスのめちゃくちゃ上手いギターがダビングされたのも聞いたことあるけど、満員電車のなかのすかしっぺのようにキツかった。
ジョーパスもいやだったろうなぁ。
彼とエラのレコードなんて最高だもん。


『チェット・ベイカー・シングス』(Chet Baker Sings)は、ジャズ・トランペット奏者/歌手のチェット・ベイカーが、1956年に発表したアルバム。ウエストコースト・ジャズを代表する作品の一つ。
トランペット奏者として名を上げていったチェットは、1953年からヴォーカルにも意欲を見せ、中性的・都会的な歌声が人気を集めるようになった。そして、1954年のレコーディング・セッションからの8曲(7.-14.)に、新録の6曲を加えて本作を発表。全曲で歌を披露しており、チェットの歌手としての魅力を広く知らしめた。

多くのスタンダード・ナンバーをチェット流に料理した内容で、とりわけ、ミュージカル『ベイブズ・イン・マイ・アームズ』からの楽曲「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」のカバーは人気が高い。フランク・シナトラ、マイルス・デイヴィス、キース・ジャレット等、多くのジャズメンがこの曲を取り上げてきたが、今でも、チェットのヴァージョンが決定版とする声は多い。他にも、ジョージ・ガーシュウィン作曲の「バット・ノット・フォー・ミー」、フランク・シナトラが1947年に歌った「タイム・アフター・タイム」等を取り上げた。

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